バンクーバー発、気鋭のシンガーによる浅草居酒屋ゲリラセッション

ハンバートハンバート佐藤良成も参加で大宴会に
コラム@ 浅草ホッピー通り 2014.12.18

Jason Mraz
 平日夜の浅草、ホッピー通りの通称で知られる飲み屋街に、音楽関係者・愛好者、ミュージシャンが集まる会合が催された。カナダはバンクーバーを拠点に活動するバンド、ザ・リバー・アンド・ザ・ロード(以下TRATR)のボーカル兼ギターを務めるアンドリュー・フィランが来日するということで集まった飲み会である。ごく普通の飲み屋を舞台にした小さな集まりは、時間の深まりと共に一般の酔客を巻き込んだ大宴会へと様相を呈していく。

 今回の来日は、出身国であるオーストラリアへの帰省途中に発生した飛行機の乗り継ぎ時間を使ったもので、時間にしてわずか半日程度。彼を紹介するために開いた飲み会だったが、何が起こってもいいように筆者は”念のため”ギターを用意していた。ハンバートハンバートの佐藤良成が同席していたのだが、こちらが依頼するわけでもなくフィドルを持参している。そんな半ば意図的な偶然が訪れたのは、会がはじまって1時間半ほど経過し、程よく酒がまわり始めた頃。店に特別に許可をもらうと、アンドリューは高らかにバンドのオリジナル曲、「チャイルド・ウィズ・ア・ガン(Child With A Gun」を歌いあげる。初めての日本、言葉の通じない酔客に対して物怖じする様子はない。一般客に迷惑がかかるようであれば切り上げようと考えていたものの、スーツ姿の一般客にも非常に好評で、席を立ち上がり「やばいねぇ」「聞かせるねぇ」と声をかけてくる。演奏の続行はこの反応で決まった。2曲目の「That’s How」、3曲目の「ブループリント(Blueprint)」の演奏には佐藤がフィドルで参加したのだが、曲のストーリーを完全に把握しているかのようにアンドリューの歌とギターに寄り添う。「自分でもギターを演奏するから、何をしたいかは大体想像できる」と佐藤は言うが、初対面、初見の曲とは到底思えない順応ぶりだった。

 3曲を歌い終えると、店主(らしき男性)が我々のテーブルのそばへとやってくる。そろそろ引き際かと思ったのだが、その口から発せられたのは「PPM(ピーター・ポール&マリー)はできない?」という意外な一声。「分からない」と答えるアンドリューに代わり、日頃からステージで歌っている佐藤が「天使のハンマー」をサッと披露。歌を聞き終えた後の店主の顔といったらない。店主に続き、今度は一般客からも「みんなが知っている曲が聞きたい」「クリスマスソングはどうだ」と提案が飛び出すも、どういう流れがあったのか、気づけばザ・バンドの「ザ・ウェイト(The Weight)」がはじまっている。我々のテーブルの中には隣で飲んでいたサラリーマン男性がまじり、弊サイト編集長の花房をはじめとしたダミ声のコーラスワークが店内に響いたのだった。

 アンドリュー・フィランの初来日・初演奏は、片言の英語と流暢な演奏を通して非常に濃密で、有意義なものになった。空港へ戻るまでの間、「トーキョーは最高だった!」と何度も繰り返すその姿を見て、次回はボーカル&バンジョー、ベース、ドラムのバンドメンバーと共に来日・演奏する機会を作りたいという想いが込み上げる。平均年齢は20代前半と若く、フォーク、ブルース、カントリーといった土臭い音楽に、時折ロックの風味も加えられたオリジナル曲は秀逸なものばかりで、日本の音楽ファンにも響くと信じている。彼らは2015年5月に2枚目のアルバムリリースを予定しており、アンドリューが日本を去った今はただただその発売が待ち遠しい。

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Text:
Takehiro Funabashi
funabashi@smashingmag.com

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