アウトサイドヨシノ(outside yoshino, 吉野寿)@ 名古屋 ブラジルコーヒー 2015.01.31

冬の旅。人の想いがつなぐ旅 <Part 1: 名古屋編>
テキスト・レポート「冬の旅。人の想いがつなぐ旅」 Part 1 @ 名古屋 ブラジルコーヒー 2015.01.31

outside yoshino

 寒風吹きすさぶ、1月末の名古屋。ライヴ会場となった喫茶店の脇には、開場前から列ができていた。そこへリハーサルを終えた吉野が酒樽とともに現れ、突如行われる鏡割り&その吉野をスマホをかまえたお客さんたちが囲む撮影会状態からの、ふるまい酒。

outside yoshino イースタンユースのギター / ボイス担当。吉野寿のソロ・プロジェクト、アウトサイドヨシノ(outside yoshino)。名古屋、京都、出雲、岡山、札幌の全国5箇所を巡る旅のはじまりは、めでたさに彩られた。
 
 酒が注がれた紙コップの側面には、消しゴムはんこで酒樽とおそろいの「寿」という文字と、底には小さな吉野の後ろ姿が押されていた。主催者のひとりである舩戸さんが、ひとつひとつ手作りしたものだった。「手作り or DIE」のアウトサイドヨシノの流儀に叶ったおもてなしである。

 チケットは、予約開始してまもなくソールド・アウトした。活気にあふれた、吉野のソロ・ライヴの会場としては広めの店内。名古屋でのライヴは、1年前に向井秀徳アコースティック&エレクトリックと共演した『共騒アパートメント』以来。さらにその前は’10年なので、滅多にない機会なのだった。

 「どうして売り切れたんだろう」冒頭、吉野は観客に不思議そうに言っていた。1曲目は思いもかけず、桜田淳子「わたしの青い鳥」のカヴァーから。挨拶代わりといった感じで、明るくスタートする。

outside yoshino いつものとおり、吉野はあらかじめ順番を決めずに曲を演奏する。「先にやりてえ曲、やっちまおう」とつぶやいて、前半から攻めた選曲になった。京都以外で序盤に演奏された、「インサイド・アウトサイド」。岡山以外で演奏された「有象無象クソクラエ」。また、すべての会場で演奏された、「ファイトバック現代」「ナニクソ節」。これらの曲が、吉野の気分を色濃く反映した曲といえる。

 前半の終わり。この時点でまだ発売前だったイースタンユースの最新作『ボトムオブザワールド』から「茫洋」と「万雷の拍手」が演奏される。じっくりと歌われるなかにある、ただならぬ凄み。初めて聴く人がほとんどだったと思われるが、誰もが真剣な面持ちで聴き入っていた。

 後半。西岡恭蔵の「君の窓から」のカヴァーは、いつ聴いても素晴らしい。原曲の素朴な風合い、歌詞のもつやさしい眼差しを損なうことなく、ストレートに歌われる。「死にたいねなんて 言わないで」のくだりでは、いつも何かに祈るような気持ちになる。

 「たとえば僕が死んだら」「故郷」「滾らせ、生き抜け」の3曲の流れ。大きな拍手が起こり、観客から声援も飛んでいた。吉野も「ノスタルジーだね」と言いつつ、バンドの曲のセルフ・カヴァーの域を超えた熱演を見せた。

outside yoshino

 本編最後の曲を演奏する前、吉野は長めに語った。自身が音楽だけで生きる道に入って長い時間が経ったが、「いよいよ様子が変わってまいりました、みたいな感じなんです」と。

「社会的に価値がないようならやめちまえっていうのは、それはあくまで社会の側から投げかけられる言葉でして、ひとりの人間が生きていくっていうことは、世の中から必要ないって言われても、『お前、役に立たん』って言われても、一銭の価値もないって言われても、やるんですよ。生きるんですよ。生きていくんですよ、みっともなくても」

「ケンカに勝たなきゃなんねぇっていうのは子どもの考え方ですよ。勝てませんから。でも、負けないんですよ。戦法っつうか、そのやり方っつうのは存在するってことですよ。悔しかったら、殺してみろっていうこと。そう簡単に死なねぇぞ、ってことなんですよね」

 訴えるような強い語気。直後に演奏されたのは「街の底」。言葉は、「生きてる!」と繰り返す叫びにつながっていくようだった。「勝てなくても、負けない」とは、あきらめないこと。吉野が一貫して歌ってきたテーマである。なぜか、改めての決意表明のように聞こえた。

 アンコール。「夜明けの歌」をやりかけたのだが、「やっぱやめた。気が変わった。最後に1曲だけやるんですけど、また全然みなさんの知らない歌を歌います」と、わざわざチューニングをやり直して「テレビ塔」を演奏した。結局、熱烈なダブル・アンコールに応えて、「夜明けの歌」も演奏していたけれど。

 後日、もうひとりの主催者の水谷さんは「ライヴの企画自体初めてで、わからないことだらけだった」と打ち明けてくれた。吉野に名古屋で演奏してほしくて、いてもたってもいられず行動に出たのだという。結果は大成功。主催のおふたりにも、よい時間をありがとう、と言いたくなった。

outside yoshino

— set list —
わたしの青い鳥 / インサイド・アウトサイド / 有象無象クソクラエ / ファイトバック現代 / ナニクソ節 / 泣くんじゃねえよ男だろ / 茫洋 / 万雷の拍手 / サヨナラダケガ人生ダ / 君の窓から / たとえば僕が死んだら / 故郷 / 滾らせ、生き抜け / 念力通信 / 二月はビニール傘の中 / 細やかな願い / 街の底
 
— encore —
テレビ塔

— encore 2 —
夜明けの歌

 

–>冬の旅。人の想いがつなぐ旅 Part 2 @ 京都 ネガポジ 2015.02.01
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