アウトサイドヨシノ(outside yoshino, 吉野寿)@ 札幌 オヨヨ 2015.02.22

冬の旅。人の想いがつなぐ旅 <Part 5: 札幌編>
テキスト・レポート「冬の旅。人の想いがつなぐ旅」 Part 5 @ 札幌 オヨヨ 2015.02.22

outside yoshino

 この写真は、出雲で撮ったもの。吉野がライヴで使用するステージ・セット一式。ギターとマイク。スーツケースの上に置かれた小さなアンプ。アンプの上には時計とiPod。照明は背後と手元の電球2灯。床に無造作に広げられた、歌詞が印刷された冊子。機動性重視、必要最小限。電源があればどこでも演奏できるように考えられたアイテムが、手の届く範囲内に配置され、観客を迎える。先に掲載したインタビューで吉野が語ったとおり、吉野が歌い手としての自由を追求し、実現するための場である。

outside yoshino 岡山のライヴから2週間経った。その間、吉野は2月11日に阿佐ヶ谷で堕落モーション・フォーク2のライヴにゲストとして出演。18日に『ボトムオブザワールド』の発売日を迎え、20日には、イースタンユースのライヴのために札幌に来ていた。このタイミングに合わせて、札幌の旧い仲間にソロ・ライヴを企画してもらったのだと言っていた。
 
 吉野は、2日前のライヴの肉体疲労が回復していない。フニャフニャした喋り方なのは、酔っているのではなくて、風呂に入ってきたせいだと観客に言いながら、演奏は冴えを見せた。

 1曲目として定番だった「わたしの青い鳥」。実は名古屋から「幸せ歌っていてね」のあとに、吉野は耳をすますジェスチャーをしていた。観客は戸惑いながら笑う。札幌でも同じ反応だったが、吉野は笑顔で「いてーねー、じゃねぇのかよ」とささやく。ああ、原曲のようなコーラスが返ってくるのを待っていたのか。今さら気づいた。

outside yoshino 2曲目の「インサイド・アウトサイド」から、足を踏み鳴らす音がよく響いていた。「裸足で行かざるを得ない」「青すぎる空」や、アンコールの「夜明けの歌」では、ギターの音数を抑えて、歌を生かす場面にグッときた。休憩明けの「万雷の拍手」は、厳かな迫力があった。「念力通信」のイントロでは「SNSやネットよりも、俺は念力で想いを伝える」というようなことをギターに乗せて喋るのだけれど、毎回話がどう着地していくのか楽しみだった。梓みちよの「二人でお酒を」なんて、めずらしいカヴァーも沁みた。

「テレビ塔」は、はじめて「テレビ塔のある街」で演奏された。まっすぐ歌う序盤から、激情を込めたサビまで。若いころの吉野がこの地で過ごした時間や経験が、美しいメロディーを伴った曲として昇華され、聴く者の心を揺さぶるのだった。きっと「故郷」と同じく、札幌の人たちにとって特別な曲になっていくのだろう。

outside yoshino

 ライヴが終わる。iPodを操作してBGMを流し、右に左に深々とお辞儀をして、電球のスイッチを消してから、物販売り場に直行した。吉野は最後のひとりまで、お客さんにちゃんと向き合って応じていた。’13年の6月にも同じ会場でライヴを取材させてもらったが、そのときと全く変わらないのだった。

 名古屋から札幌まで。ゆるぎない私性をたたえた歌に触れて、吉野はまぎれもなく「歌に生きる人」なのだと思った。その歌を、熱い想いをもった主催者や共演者、深い関わりのある人たちがつないだ旅。吉野を取り巻く変わりゆくものと、変わらないものが強いコントラストで示された、特別な時間だった。

 次に吉野が札幌を訪れるのは、6月6日。イースタンユースとして吉野、二宮、田森の3人が演奏する最後の日である。そのあとどうなっていくのか。いまは見当もつかない。しかし、ふたたび吉野のソロ・ライヴを観る機会があったら。その空間には、あのコックピットのようなステージ・セットが待っている。吉野は歌とギターを武器に、人生を自分の意思で切り拓き、生きていく。それだけは確かである。

outside yoshino

— set list —
わたしの青い鳥 / インサイド・アウトサイド / ナニクソ節 / 二月はビニール傘の中 / 小さな友人 / 泣くんじゃねえよ男だろ / 有象無象クソクラエ / 裸足で行かざるを得ない / 万雷の拍手 / 青すぎる空 / ファイトバック現代 / 念力通信 / 二人でお酒を / 茫洋 / テレビ塔 / 街の底

 
— encore —
夜明けの歌


[ 1 | 2 | 3 | 4 | 5 ]

 

Share on Facebook

Information

Photos:
Keiko Hirakawa
keco@smashingmag.net
Facebook / twitter
Keiko Hirakawa's Works

Text:
Keiko Hirakawa
keco@smashingmag.net
Facebook / twitter
Keiko Hirakawa's Works

Write a comment