イースタンユース @ 札幌 キューブ・ガーデン 2015.06.06

季節はめぐる。さよならをする
テキスト・レポート「季節はめぐる。さよならをする」 @ 札幌 キューブ・ガーデン 2015.06.06

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 札幌は晴れていた。見上げれば、青い空。大小の雲が流れていく。2月に発売された最新作、『ボトムオブザワールド』を携えた、全国ツアーの最終日。

 「このツアーでやめるんです。いよいよ今日が最後になってしまいましたね」

eastern youth アンコールの時に、観客にそう語った、ベーシストの二宮。とうとう、イースタンユースのメンバーとして演奏する最後の日を迎えた。物販ブースには、二宮へ宛てた花と一緒に、40gもの純金のプレートが飾られていた。ファン有志57名から、感謝の気持ちを込めて贈られたものである。結成25周年のときのツアーの最終日にも、ファンから見事な花が届いていた。今回は実物資産が贈られるとは。アイデアに恐れ入る。やはりイースタンユースは、素晴らしいファンに愛されている。

 この日、イースタンユースが奏でる音は、真の一回性に満ちたものである。チケットは当然ソールド・アウト。二宮のイースタンユースでの最後の演奏を見届けようと、日本全国からファンが集った。フロアは超満員。開演時間から5分経過後、メンバーは登場した。

 ゆっくりと吉野が1曲目に繋ぐフレーズを弾きはじめ、二宮のベースがそっと応える。田森のカウントから、「街の底」。吉野が放つ言葉、叫び、ギターリフを、磐石のリズム隊が支える。イントロからダイナミックに展開する「鳴らせよ 鳴らせ」から、間髪入れずに「沸点36℃」。鮮烈な冒頭3曲。

eastern youth 射るような目つきとともに刺さってくる、吉野の鋭いギターの音。ステージ中央でドッシリとした存在感を醸し、サウンドに力強さを与えていく田森のドラム。二宮の、ときに繊細に、ときに大胆に彩り豊かな音を聴かせるベース。「これが、イースタンユース」。胸に刻んでいく。

 空気が緊迫する「イッテコイ カエッテコイ」。吉野は間奏でギターアンプの上に置いてある手の形の模型を、ギターの弦に滑らせ、狂おしいスライド音を発する。ベースがうねり、重厚に響く「茫洋」。『ボトムオブザワールド』からの曲は、どれもライヴで非常に聴きごたえがある。

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 吉野が田森にMCを促し、田森はマイクを取る。おもむろに発した言葉は、

「オッス、俺、田森」

であった。挨拶だけで、フロアに笑いが広がる。「3月の千葉から始まったツアーも、あっという間でした。残り少ないですが、頑張りますので楽しんでいってください」と語る。

 第一音が鳴った途端に歓声が沸き起こった「月影」から、代表曲が続く。観客のシンガロングとともに疾走する「男子畢生危機一髪」。「青すぎる空」の、最後。吉野は一言ずつ「いずれ 暮らしの 果て に 散る」と区切るように歌う。その覚悟を受け止めるように、フロアは静まり、歌声とギターだけが響く。「雨曝しなら濡れるがいいさ」は、吉野はときに両腕を大きく広げ、マイクが音を拾うほど激しく胸を叩き、全身を使って歌う。

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 イースタンユースとして、初めて札幌で演奏された「テレビ塔」。吉野が「そっちは、どうなんだ?」と語りかける相手は誰なのか。その名が語られることはないだろう。しかし、この場にいる人のほとんどが、あるひとりの人物を思い浮かべたはずである。

 去ってしまった人がいる。去っていく人がいる。徐々に歌声がゆらぎ、かすれていく。吉野は出なくなりそうな声を、絶叫して絞り出す。観客は、神妙な面持ちでステージを凝視する。

 移ろう季節の中、ただ立ち尽くすしかないような出来事があり、哀しみがある。吉野はそれを歌として表現するだけではなく、汗と涙が頬を伝い、声の限り叫ぶ生身の存在そのもので体現した。

 とめどなくあふれつづける感情を振り払うように「踵鳴る」。「直に掴み取れ」の前には、二宮が語る。

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 「(男性の股間がはちきれそうなホットパンツから)何が出てくると思う? なあ? 出てきたものはよぅ、そうするしかねぇだろう? お前のその手で…」と観客に語りかけ、失笑を呼ぶ。実は二宮は、ツアー先の各地でゲロやらウンコやら股間やらを掴み取る話をしてきた。

 何を掴み取るかは、大した問題ではない。二宮が「直に掴み取れ!」と曲名を言った瞬間、田森が絶妙な間でカウントを取り、数秒前まで二宮の発言に苦笑していた吉野のギターが切り込んで、イントロに突入。見事な息の合いっぷり。一朝一夕には成し得ない、3人の強固なアンサンブルを目の当たりにする。

 観客は二宮のMCからの笑顔のままで、「自由に生きていくんだ」という意志をバンドと共に歌う。吉野は間奏でヒゲダンスを踊り、CDでは向井秀徳が担当したラップを自ら歌う。インタビューで、吉野が「俺には再現できない」と語ったパートである。フロアには驚きが走り、大きな歓声が沸く。

 「グッドバイ」、「万雷の拍手」。轟音の中、吉野は涙を拭うことなく、むき出しの激情を携えて進んでいく。吉野は「俺たち3人、イースタンユース、旅はまだまだ続くんだ」と強く、強く、言い放つ。本編最後、「荒野に針路を取れ」。イースタンユースの立っている場所、進む先は、いつだって荒野ではなかったか。私たちは、その姿をこれからも見続けていく。

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 再びステージに登場した二宮には、観客から花束がプレゼントされた。「女性にお花をいただくなんて。ドキドキしますね」と照れつつ、うれしそう。男性客から「ありがとう」と声がかかり、二宮も「ありがとよ!」と応えると、拍手と歓声が一層大きくなる。

eastern youth 「バンドも今後、どうにかかたちが整ったら動き出しますし、俺もどっかでノコノコ生きていくんで。今後とも我々3人、よろしくお願いします」と二宮は述べる。
 
 アンコール、「夏の日の午後」「砂塵の彼方へ」。ときどき詰まり、かすれ気味になる吉野の歌声に、観客の大きな歌声が伴う。言葉が出ない。
 
 「ありがとう、さよなら!」と吉野が言い、3人はステージを去る。SEの浅川マキの「引っ越し」が鳴るなか、止む気配のない盛大な拍手。ダブルアンコールは「夜明けの歌」。いま、3人が鳴らす音を精一杯感受し、眼前の光景を焼き付ける。アウトロを鳴らしながら、田森を中心に、向かい合う吉野と二宮。終わってほしくない。しかし、終わってしまう。

 「本当に、本当に、ありがとうございました。二宮友和!」

 吉野はライヴの締めの決まり文句である「また会う日まで」ではなく、最後の最後に二宮のフルネームを呼んだ。「二宮に拍手を!」と言うかのように二宮を指し示し、ステージを後にする。

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 ステージにひとり残った二宮は、「どうもありがとうございました」と言って、両手で投げキッスを飛ばす。ベースアンプの上、バスドラムのそば、ギターアンプの上に生けてあったバラの花を、3本まとめてフロアへ投げる。観客の笑顔と大歓声の中、手をもう一振りして、去っていった。

 ツアー初日から大阪公演まで、終演後のSEは、西岡恭蔵の「サーカスの終り」だった。東京公演からは、植木等の「だまって俺について来い」に変更された。大音量でフロアに鳴り響く、カラリと晴れやかな植木等の歌声。二宮が去ったイースタンユースが、どうなるか。きっと、「そのうちなんとかなる」。そうであってほしい。観客はしばし放心したように、暗転したステージを見つめるのだった。

 ツアー初日には桜が咲いていた。今は梅雨にさしかかろうとしている。いずれ、この日の出来事も、めぐる季節の一場面になっていく。イースタンユースは、ひとつの節目を迎え、あたらしい季節へ。二宮の歩む先にも、幸多からんことを祈る。

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–>フォト・レポート

<– 05.30 渋谷 |

 

— セットリスト —  

街の底 / 鳴らせよ 鳴らせ / 沸点36℃ / イッテコイ カエッテコイ / 茫洋 / ナニクソ節 / 月影 / 男子畢生危機一髪 / 青すぎる空 / 雨曝しなら濡れるがいいさ / テレビ塔 / 踵鳴る / 直に掴み取れ / グッドバイ / 万雷の拍手 / 荒野に針路を取れ

— アンコール —

夏の日の午後 / 砂塵の彼方へ

— アンコール2 —

夜明けの歌



 

極東最前線 / 巡業2015~ボトムオブザワールド人間達~

 
3月28日(土) 千葉 LOOK
3月29日(日) さいたま新都心 HEAVEN’S ROCK
4月 3日(金) 金沢 vanvanV4
4月 4日(土) 長野 ライブハウスJ
4月 5日(日) 新潟 CLUB RIVERST
4月10日(金) 福岡 DRUM Be-1
4月11日(土) 広島 ナミキジャンクション
4月17日(金) 横浜 F.A.D
4月18日(土) 静岡 SUNASH
4月19日(日) 京都・磔磔
5月 9日(土) 松山 Double-u Studio
5月10日(日) 岡山 ペパーランド
5月16日(土) 盛岡 the five
5月17日(日) 仙台 CLUB JUNK BOX
5月23日(土) 名古屋 クラブクアトロ
5月24日(日) 梅田 クラブクアトロ
5月30日(土) 渋谷 TSUTAYA O-EAST
6月 6日(土) 札幌 cube garden

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