マグマ(Magma) @ 渋谷 オー・イースト 2015.06.05

呪い、祈り
テキスト・レポート「呪い、祈り」 @ 渋谷 オー・イースト 2015.06.05

Magma

 マグマが来日。折しも日本列島では、火山の噴火や地震が頻発し、マグマの活動が活発になっていることを実感するのだった。マグマはフランスのプログレッシヴ・ロックのバンドで、コバイア語という独自の言語を使った歌詞が特徴である。2015年に発表された新しいアルバム『シュラグ・タンズ~鞭打ちの舞踏曲』はライナーノーツによると、2009年の来日公演2010年のフジロックでも演奏されたものが2014年に完成したものらしい。ライヴを重ねて曲を仕上げていくのはプログレッシヴ・ロックのバンドによくあることだ。このバンドの中心人物はクリスチャン・ヴァンデというドラマー。すでに67歳、岩のような巨体、風貌で存在感がある。ヴォーカルをとると巨体にふさわしい声を響かせる。

Magma 約1週間前、イースタンユースの壮絶なライヴを観たオー・イーストにはぎっしりとパイプ椅子が並べられ、お客さんたちは、指定された席で静かに開演を待っていた。見渡すと年齢層は高め、というか基本は仕事帰りやロックな格好のおじさんばかり。意外と女性もいる、という感じ。場内にはずっとサンO)))が流れている。

 19時30分、開演予定時刻ぴったりに会場が暗くなり、メンバーが登場する。ステージ下手から、ベノア・アルジアリ(ヴィブラフォン)、ジェイムス・マック・ガウ(ギター)、ステージ中央の後方にはクリスチャン・ヴァンデが鎮座し、フィリップ・ブゾネ(ベース)、ジェレミー・テルノイ(キーボード)という並び。ヴォーカルは、ハーヴ・アクニンが男声のテノールあたりの音域、女声はステラ・ヴァンデとイサベル・フォイヨボゥワの2人と、計8名のバンドである。

 ハーヴは「ハマタイッ!」とあいさつし、「Kohntarkosz(コンタルコス)」が始まる。クリスチャン・ヴァンデの老人力ドラムにフィリップ・ブゾネの超絶高速ベースという磐石のリズム隊に、ヴィブラフォンやエレクトリック・ピアノやギターの音が重なり、男女3人のオペラのような歌唱が加わる重厚さがマグマの音楽なのだ。この曲のクライマックスは、ジェイムスのギター・ソロで、彼のレスポールが吠えまくり、火を噴くかのようなソロが終わると客席から拍手が沸き起こった。

 次は、新しいアルバムから「Slag Tanz(シュラグ・タンズ)」。1曲30分を超える音楽の旅。パワフルでありテクニカルであるクリスチャン・ヴァンデのドラムから築き上げられた音世界は熱い、まさにマグマそのものの音を放つ。男女混声3人のヴォーカルと各プレイヤーのスリリングな演奏は息もつかせない。ステラとイサベルはマラカスを振り続け、べノアのヴィブラフォンが浮遊感や不安感を自在に演出する。お客さんたちは椅子に座って食い入るように観ていた。2階席からは双眼鏡でプレイヤーたちの手元をチェックする人もいる。フジロックで知った人は体を揺らせながら音楽に身を委ねている姿もあったけど、じっくり観ている人が多い。

Magma そして、「Mekanik Destruktiw Kommandoh」。日本では「呪われし地球人たちへ」のタイトル、略称は「M.D.K.」で知られる彼らの代表曲のひとつである。これもすさまじかった。またもや30分以上にわたる音楽による物語絵巻。迫力、スピード感、重厚さ、精密さ、どれをとっても一級品で、彼らの創る世界に引き込まれる。途中、クリスチャン・ヴァンデがハンドマイクを手にして、その巨体を起こし、柔らかな声でソロ・パートを歌う。そして再び座り、ドラム・スティックを手にして、喧嘩でもしているかのようにシンバルを殴りはじめたところで鳥肌が立った。67歳でここまでパワフルなドラムを叩き続け、終盤になってもまだここまでの力があるのかという驚きがあった。

 アンコールは「Zombies(ゾンビーズ)」。ステラが曲を紹介したあと、ハーヴがゾンビの真似っぽいことをやって微笑を誘う。そして冒頭からベースとドラムが変拍子を繰り出して、最初から最後まできっちりとマグマの世界を構築し、お客さんたちはスタンディング・オベーションでそれを称えた。

 反復する演奏が重ねられ、呪術的なヴォーカルが絡まりあい高みに達するステージを体験すると、まるでどこかの火山をご神体としてそれに対して祈祷を捧げるもののように思える。ぜひ日本列島で活発になっているマグマにはこの演奏を奉納し、大地の怒りを鎮めてもらいたいと思ったのだった。

Magma

写真は、6月4日のものを使用しています。

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Photos:
Taio Konishi
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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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