モノ (MONO) @ 鰻谷サンスイ 2010.04.19

惑うこと無き轟音を
テキスト・レポート「惑うこと無き轟音を」 @ 鰻谷サンスイ 2010.04.19

 今年に入ってからは初となる香港公演を皮切りにし、2ヶ月近くにも及ぶヨーロッパツアーを敢行していたMono(モノ)。おそらくその先々の土地でも、静寂と轟音の交錯でドラマティックに綴られた壮大な音世界を紡ぎあげ、人々の心に新たな感動の火を灯したことは想像に難くない。ここ日本でも、昨年末に開催したオーケストラとの共演による10周年記念公演以来、約4ヶ月ぶりとなる久々の公演が実現。もちろん、この機会を逃すまい! と僕はその世界に足を踏み入れに行った。
 
 まずは4月10、11日に開催されたKAIKOO POPWAVE FESTIVAL(邂逅・ポップウェーヴ・フェスティヴァル)の初日に登場。このフェス自体がメジャー・アンダーグラウンドを問わず、己の信念と音楽性を貫き通す個性的なアーティストの集合体で成り立っていて、それはそれは素晴らしいものであったが(個人的にも2日間きっちり堪能させてもらった)、その中でもモノは特に異質な”個”といえる存在感を放っていた。彼等は気温が少し下がった16時からの出番だったが、序曲の”アッシズ・イン・ザ・スノウ”から終曲の”エヴァーラスティング・ライト”に至る5曲50分間の壮絶なパフォーマンスで聴衆の度肝を抜く。愛・希望・絶望・悲哀・虚無・憂鬱・歓喜などを渦巻かせた強大な轟音をどこまでも広がる空にぶっ放し、人間どころか自然にまで畏怖を抱かせるような凄みを感じさせていた。屋内・屋外を問わないその経験地の豊富さはいまさら語る必要も無いのだが、自然すらも諭すかのような姿勢は圧巻の一言。初めて見たと思しきお客さんからは『ずっと圧倒されっぱなしだった』という発言から、『教会にいるみたいだった』という意味深な言葉まで耳にすることができ、数多の人間にその存在を刻みつけたのだった。
 
 そして、19日の大阪公演。こちらは昨年3月に行われた大阪公演と同じく鰻谷サンスイが舞台となった。200人が限度ぐらいの小さなハコ。それでも、結構な数のお客さんが平日にもかかわらず足を運んでいた。まず19時からは、オープニングアクトの”村で疫病流行る”というかなり奇抜なバンド名が印象的なインスト・トリオが登場。外見は失礼ながらモサイと思ってしまったけど、テクニックは非常にしっかりしたもので、縦揺れも横揺れも完備した職人肌のサウンドで会場を温める。刺々しさもポップ性もダンスミュージックなんかのニュアンスまで飛び出してくるその音に30分気持ちよ〜くノセられて、個人的には随分と楽しむことができた。
 
 30分の転換を挟み、20時を少し過ぎたぐらいにステージにゆっくりと姿を現したモノ(実際には自分達で機材をセットしていたけれども)。独特の緊張感が破裂しそうなぐらいに高まった中、これまで同様にライヴは”アッシズ・イン・ザ・スノウ”からスタートする。冷たく儚いグロッケンの音色が静かに心の内を侵食し、圧倒的な音圧を誇る轟音ギターが猛々しいうねりを上げながら会場の雰囲気を飲み込んでいく。あまりにも感情的過ぎる音の渦。そこからはもう、その深遠なる世界の住人となるほかなかった。
 
 思い起こせば、オーケストラとの共演では、繊細な感情の揺らぎや静かに脈打つ鼓動すらも弦一本一本が波長を合わせることで拾い上げ、サウンドの臨場感や迫真性を豊かに表現していた。それこそ、世界はこんなにも大きくなるのかと感心したもの。だが、メンバー4人だけで奏でるサウンドは、彼等の醍醐味のひとつである破壊力や暴力性が極まる。美しく丹念に練り上げられていく楽曲の中で、どこまでも膨れ上がっていく音圧の轟きは半端ではないし、それがまた圧倒的なリアリティを持って心の奥底に訴えかけていく。特に、久々に体感した”イヤーニング”が圧巻だった。雪原の向こう側から召還した吹雪のようなノイズに全感覚を支配されてからは、悲しみの彼岸に吹き飛ばされたかのような孤独感に襲われ、特に胸が痛くなった。その悲壮の極みから、一段と強い希望を浮かび上がらせる”ハルシオン”、 “エヴァーラスティング・ライト”と続いた最後の流れも見事。何度体感しても壮麗で美しいこの2曲は、崇高なる生への肯定を確かにし、祝福の光を会場に集まった人々に注ぐ感動のクライマックスである。心の闇を慰謝するかのような勇ましい完結のワンフレーズにはただただ感動。明日への希望を強く胸の奥に仕舞い込むのであった。
 
 約100分近くに及んだライヴ、その絶対的な世界の中に心酔していたようでもあり、もちろん圧倒されてもいた。僕はメンバー4人だけでのフルセットのライヴは、初めて見たんだけど、絶望の底を始点に生への階段を上り、その輝きを強めていく壮大な世界観がさらに大きなスケール感を伴って構築されていくのが印象的だった。肉体をも精神をも天へと連れて行くかのようなカタルシスに満ちたライヴ。公演終了後も5分以上鳴り止むことのなかった拍手の嵐、それがこの日の公演の感動の大きさを確かに物語っていた。
 
 いよいよ4月27日には、昨年5月に行われたNYでの24人のオーケストラとの奇跡の共演を封じ込めたライヴ作品『Holy Ground(ホーリー・グラウンド)』の販売が世界規模でスタートする。だが、母国・日本ではありがたいことに彼等自身のレーベルであるHumah Highway Recordsの先行輸入販売や音楽配信サイトのototoyで高音質版のダウンロードで既に手に入れることが可能。まだチェックしていない方は、オーケストラと共振しながら荘厳で美しい轟音絵巻を描きあげたこのライヴ作品をぜひ聴いてみて欲しい。もちろん、この作品は本サイトでもレビューを予定している。
 
–set list–
Ashes in the Snow / Burial At Sea / The Kidnapper Bell / Pure as Snow (Trails of the Winter Storm) / Sabbath / Yearning / Follow The Map / Halcyon (Beautiful Days) / Everlasting Light

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Text:
Takuya Ito
takuya@smashingmag.com
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