ウォリス・バード (Wallis Bird) 「日本に舞い降りたアイリッシュ・ポップの新星」

Part 3:シンガー・ソングライター離れした、破壊的なまでのライブ力
インタビュー:「日本に舞い降りたアイリッシュ・ポップの新星」Part 3:シンガー・ソングライター離れした、破壊的なまでのライブ力 2015.05.28

Wallis Bird

タワーレコード新宿店でのインストアライブの様子

 

 ヨーロッパでは著名アーティストからの評価も高いウォリスだが、日本での知名度はほぼ皆無だった。加えて英語を苦手とする日本人の前でのパフォーマンスについて、不安はなかったのだろうか。「ドイツでも年配のお客さんの中には英語を理解しない人もいるし、アイスランドやタイではそうした人を前に演奏したこともあるわ(タイは休暇で訪れた先で歌ったそう)。姉がハンディキャップを負った子どもたちをケアする仕事をしているんだけど、耳が聞こえない子たちの前で歌ったこともあるの。曲のエネルギーが伝われば興味を示してくれるけど、飽きるとすぐに背を向けちゃう。彼らはどんな批評家より手強いわ」。発する言葉からはわずかな不安も感じられず、「今すぐにでも歌いたいの」という熱量だけが伝わってくる。

Wallis Bird 日本公演は東京のみで行われた。タワーレコード新宿店でのインストアライブも良い内容だったが、圧巻だったのは吉祥寺スター・パインズ・カフェで行われた本公演だ。気合い十分といった様子で、声を振り絞るように歌い、腕を叩きつけるようにギターをかき鳴らす。曲間では用意されたビールで喉を潤しながら、シンプルな英語でファンとのやりとりを楽しんでいた。過去の2公演と違うのは、盛り上がりと聞かせるポイントが明確で、全体の流れが意識されていた点だ(…と感じたのだが、終演後に見たセットリスト表の曲順は、実際の演目と大きく違っていた)。ユーチューブでの再生回数が25万回を超える人気曲、「「トゥ・マイ・ボーンズ (To My Bones) 」」では、これまでCDで何度も聴いていたにも関わらず、爆発的なエネルギーに目頭が熱くなった。アンコールでは「聞きたい曲はある?」とフロアに問いかけ、さっとリクエストに応えてみせる。最後は3年前のスイス公演と同様、「イン・ディクタム (In Dictum)」で幕を閉じた。歌い上げた瞬間、オーディエンスは立ち上がって拍手喝采を彼女へと送る。無名のシンガー・ソングライターがしっかりと実力を示し、日本のファンを獲得した瞬間だった。

Wallis Bird

吉祥寺スターパインズカフェにて(撮影:藤岡直樹

 

「初めての日本だけど、最後ではないわ」。ステージ上でウォリスはこう話した。帰国後の彼女の予定を聞くと、「直近では、まずはアルバムを完成させるつもり。今はアイデアが頭の中で溢れている状態だから、クリアにして来年の4月くらいに出せるといいんだけど。もう少し遅くなっちゃうかもしれないわね」と答えた。この夏には2007年から2014年までに行った約600本のライブから厳選した録音集、『YEAH! Wallis Bird Live 2007-2014』をリリースする。リリースの先に期待するのはやはり再来日公演なのだが、そこは招聘元であるミュージック・プラントのブログに「次回の公演は必ずやりますよ」と記載があるので、期待していいだろう。5月30日、日本に芽吹いたウォリス・バードという音楽が、この先どう育っていくのだろう。当サイトではその経過を追い続けていく。

 

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