あがた森魚@渋谷クラブクアトロ 2015.07.13

夏の太陽のように燃える歌い手
テキスト・レポート「新譜リリース直前。「あがた森魚 浦島 64←→65 Summer of Love」ツアー」 @ 渋谷クラブクアトロ 2015.07.13

あがた森魚

 2015年7月20日、あがた森魚の最新作『浦島65BC』がリリースとなった。発売に先駆け、アルバム全曲お披露目ツアーが、大阪、名古屋、東京の3大都市で行われた。最終日の渋谷クラブクアトロには、椅子が並べられ、着席の観覧スタイルがとられていた。歌が十分に届く距離感が図られているのだろうか。窮屈さがなく、周りと同じ場を共有しながらも程よく自分を保てる空間に居心地のよさがある。

あがた森魚 1曲目は、2013年の作品『すぴかたいず』からの名曲“太陽のコニー・アイランド“で始まった。この曲は、昨年オープンしたHMV record shop渋谷での限定シングルレコードのB面にも収録されている。ご機嫌な表情でステージに現れ、その表情がまるでスポットライトのように会場を照らし客席を包み込む。前作『浦島64』のリリースから1年も経たない短期間のうちに今作は発表された。何だかエネルギッシュなパワーがあふれ出しているようだ。

 ステージ脇には、横尾忠則デザインのレコードジャケットが添えられていた。前作『浦島64』から“それでも僕を愛してよね“を披露する。東京オリンピックや東海道新幹線開通など経済的にも文化的にも隆盛に向かっていた50年前の日本を回顧し、あがたは10代の自分を語っている。「言葉ほど恐ろしい色々はないね。でまかせで歌いたくて、自分もディランにそそのかされた一人なんだ」と。

あがた森魚  “岩を祝おう”を皮切りに、新作の全曲再現という本編がスタートする。“月光オートバイ”以外はアルバムの収録順通りに進んだ。
 
 1965年の7月20日にシングルリリースされたボブ・ディラン“ライク・ア・ローリング・ストーン”。絶大なヒットを生み、当時の若者にどれほどの影響を放ったのか。長い間、語りつくされてもはや手垢のついた歴史になっているのかもしれない。それでも「ディランから受けた何かをこのアルバムで出したかった」と当時の衝動を掘り起こし、その熱を新作『浦島65BC』で伝えようとする1人の男の背中に勇姿がここにある。30以上も歳の離れた私が「勇姿」とはおこがましいかもしれない。50年前に起こった出来事、アート、ファッション、音楽の軌跡を紙や写真で視覚的に捉える機会はそこらじゅうにある。しかしこのアルバムは、ただの回顧録ではない。半世紀というときの流れを越えて、何か聞き手の心に振動させようとする意思が感じられるのだ。

 今回のツアーには、ペダルスティールの駒沢裕城(ex.はちみつぱい)、ギター、本多信介(ex.はちみつぱい)、アルバムのプロデュースも務めたギター、窪田晴男、ベースはカーネーションの太田譲、コントラバス、東谷健司という錚々たるメンバーを引き連れている。「あなたに会いたいな」というコーラス&レスポンスで始まる“十字路十秒港町”を清らかに演奏すると、アンコールに向かう。盟友のひとりであり、制作のメンバーでもある武川雅寛が療養中のため欠席だったことは、残念なことだった。新作から“月光オートバイ” 、90年代に武川と組んだユニット雷蔵の曲“月食”で盟友に向けた思いを吹き込む。そしてピアノを弾き語り“たそがれる海の城”を披露し、鳴り止まない拍手の中でラストを迎えた。

あがた森魚
 ツアータイトルにもあるが「Summer of Love」ということで、最新作『浦島65BC』が晴れてリリースされるこの夏、このアルバムがさまざまな年代のリスナーの心を揺り動かすことだろう。

–>フォト・レポート

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Koichi "hanasan" Hanafusa
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Text:
Hiromi Chibahara
tammy@smashingmag.net

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