トクマルシューゴ@ 朝霧アリーナ 2015.10.11

魔法使いが奏でる音楽
テキストレポート – トクマルシューゴ「魔法使いが奏でる音楽」 @ 朝霧アリーナ 2015.10.11

トクマルシューゴ(shugo_tokumaru)

 朝霧JAM二日目。前夜から降り続いていた雨は多少勢いを弱めたものの止むことはなく、空は鈍色の雨雲で覆われていた。正午を迎えるというのに吐く息が白い。ステージ上ではサウンドチェックが行われており、残念な天気ではあったけれど、「コール」のフレーズが奏でられると楽しげな雰囲気に誘われて少しずつ人が集まってきた。定刻の12時10分を迎え、一度ステージ袖にはけたトクマルがひとり登場し、舞台の幕が上がった。ギターをつま弾きながら歌い始めたのは「タイトロープ」。しっとりとした雰囲気の中、観客はじっとステージを見つめトクマルの歌に聴き入っている。ワンコーラスを歌い終えたところでバンドメンバーが登場し演奏に加わった。トクマルの歌とギターにドラム、ベース、アコーディオンやコーラスが乗って、一気に音に広がりと厚みが出る。と同時にステージの周囲に立ち込めていた霧が風に煽られてステージ前にたなびき、あたりは幻想的な雰囲気に包まれた。自然が生み出すマジックに、なんだかものすごいライブになりそうだ、と胸が高鳴る。

 トクマルシューゴ(shugo_tokumaru)「トクマルシューゴ始めます!」高らかに告げて、最新アルバム『イン・フォーカス?』から「カタチ」「ポーカー」を続けて披露。ハンドクラップを煽りギターを速弾きして見せるトクマルにフロアは歓声で応え、会場の温度はグッと上がった。ギター、ピアニカ、アコーディオン、ボイスパーカッション、数々の楽器がそこかしこで鳴っていて、次にどんな音が飛び出してくるのかまったく予測がつかない。よくよく見ると”いろんな楽器担当”のユミコが楽器を持ち替える合間に右手にパペット人形をつけ、パンチを繰り出して遊んでいたりする。視線はすっかりステージ上のメンバーに釘づけだ。目でも耳でも楽しませてくれるこのワクワク感がトクマルシューゴのライブ最大の魅力かもしれない。カラフルな音であふれる演奏は、まるでサーカスや人形劇といった遊び心いっぱいの舞台を観ているようなのだ。続々集まってくる観客も目を輝かせ思い思いに体を動かしていて、「音楽=”音”を”楽しむ”」ってこういうことかも、なんてことを思わされる。

 「グリーン・レイン」の演奏中、トクマルがおもむろに小雨降る空を指差し「晴れた!ほぼ晴れた!快晴ですよね!」と観客に呼びかけ、その有無を言わせなさにフロアからは明るい笑いが起きた。演奏だけでなくMCでも予想外の方向から意表をつきにくるトクマル。うーん、ズルい。でも文句なしに楽しい。

 それから「新しいアルバムを作ってるのでその中の曲をやります」と告げて「リタ・ルータ」へ。後方まで伸びやかに広がっていく歌声は、本当に青空を呼びそうだ。次いで披露された新曲がまた凄かった。積み上げたおもちゃがガチャガチャッと崩れるようなコミカルな音で始まり、メロディ、構成、彩り豊かな楽器の音、全てに引き込まれる。

 「オード・ゲート」「ラ・ラ・レイディオ」と演奏は続き、「ラム・ヒー」のおなじみのイントロでは「待ってました!」とばかりに歓声が上がった。ステージ上ではユミコが鳥の鳴き声が出るおもちゃにホイッスル、はては風船までふくらませ始め、いったいいくつ楽器が出てくるのか(もはや楽器ですらないのか)まったくわからない変幻自在の曲芸的パフォーマンスを見せる。この頃にはもう雨はほぼ止んでいて、明るくなってきた空をシャボン玉が渡っていく。“トクマルシューゴ(shugo_tokumaru)”「ダウン・ダウン」の曲間では突然ユミコが自撮り棒(!)を取り出して、千明・イトケンと共にステージ上からフロアの観客をバックに記念撮影をするという愉快な一幕も。みんなまさかの展開に声をあげて笑いながらピースを向ける。

 そんな笑顔いっぱいのライブのラストを飾ったのは、珠玉の代表曲「パラシュート」。重なるアンサンブル、踊る観客、間奏明けの入りを失敗して照れ笑いするトクマル、フロアを包むハッピーな空気。周りを取り囲むすべてが幸福感に満ちていた。トクマルバンドの演奏はまるで魔法のようだ。天気が悪くても寒くてもそんなのは全然問題じゃなく、キラキラした宝物がたくさん詰まった宝箱を開けるような気持ちになれる。青空の下でのライブはもちろん最高だけれど、そうでない時も、同じように美しい。「雨でも晴れでも関係なく楽しい」、それは朝霧JAMそのものを象徴するようなライブで、ステージ袖にはけていくトクマルとバンドメンバー、そしてお客さんたちは、みな一様に晴れやかな顔をしていた。

— set list —
Tightrope / Katachi / Poker / Green Rain / Lita-Ruta / Taxi /Ord Gate / LaLa Radio / Rum Hee / Down Down / Parachute

–>フォト・レポート

Share on Facebook

Information

Photos:
Natsumi Arakawa

Web Site / Facebook
Natsumi Arakawa's Works

Text:
Nozomi Yamamoto
nozomi@smashingmag.net
twitter
Nozomi Yamamoto's Works

Write a comment