アウトサイドヨシノ (outside yoshino, 吉野寿) @ 長野 ネオンホール 2015.11.07

静寂から際立つ、濃密な1時間
テキストレポート「静寂から際立つ、濃密な1時間」 @ 長野 ネオンホール 2015.11.07

outside yoshino

 開場してまもなく、ほぼ埋まった座席。無音の室内には、どこか緊張感が漂っている。観客は席をほとんど立つこともなく、淡々と開演を待っていた。入場開始直前、この日の出演者同士がBGMはなしにしようと申し合わせたため、フロアはこのような独特の空気になったのだった。

 イースタンユースのギター / ボイス担当の吉野寿のソロ、アウトサイドヨシノ(outside yoshino)と、ザゼン・ボーイズのベーシストである吉田一郎のソロ、吉田一郎不可触世界の共演。イースタンユースとザゼン・ボーイズの関わりは深い。数々の共演のなかでも、ソロで昨年1月~2月に行われた向井秀徳アコースティック&エレクトリックとアウトサイドヨシノの共演が記憶に新しい。そのライヴに同行していた吉田一郎が、今年5月にソロ・アルバム『あぱんだ』をリリースし、この度吉野と共演することになった。長野在住の小説家・中川よしのさん主催の、両アーティストのリスナーが注目する好企画である。

eastern youth「今日は一郎くんに乗っけてもらって、車でブーンと来ましたよ。一郎くんはバック・ステージでベースの練習をしています。メッチャクチャあやしい恰好してるんで、びっくりしないようにね。謎の牧師さんみたいな。結構近所に住んでるんですけど、すれ違ったこともなくて。まぁ、仮にすれ違ったとしても、絶対に目を合わせないです。あんな独特な、個性的な。すごいですよ。どこにどう影響されたのかも全くわからない。もはやモードですよね。うん、あれはモードの域に達している。そういう人、大好きですね。一緒のステージに立てて光栄だなーと思ってます」

 素朴な内装に囲まれた段差の低いステージで、先攻の吉野が吉田一郎について語る。1曲目は「片道切符の歌」。開演までがとても静かだったためか、足でステージを鳴らすリズムと、ギターの鋭い一音一音、毅然と放つ歌声が際立って響く。2曲目は早くも「夜明けの歌」。叙情全開。ゆっくりと歌いはじめ、中盤から歌声が激しさを増す。

outside yoshino

「今年で47歳になったんですけど、ホント、全然ダメダメですね」と言い、テンポ速めで「デクノボーさん」。吉野は歌詞カードを入れ替える動作とともに、「いえーい、えいえい、じゃー! びゃー!」と勢いまかせの擬音語を発し、「いるよね、こういう人」と笑顔を見せる。ビールを片手に「勢いでアラをごまかそうとしてるんだね。俺の人生ずっとそう」と言いつつ、「地下室の喧騒」「ナニクソ節」と、ソロならではのフリースタイル、緩急を大きくつけた演奏で圧倒する。

eastern youth 泉谷しげるがムード歌謡の女王と称される松尾和子に提供した「夜のかげろう」のカヴァーで、空間の空気がガラッと変わる。切々と歌われる、もう届くことのない「あなた」への想い。そっと語りかけるような声とギターの音色。人間の哀しい性が浮かびあがり、裸電球2灯に照らされた暗い空間に沁みていく。

「嫌な言い回しする奴がいてさ。『これでこいつは詰んだな』『人生詰みだな』みたいな。案外そういうのはポピュラーな言い方なのかなって思ったりするんだよ。本当に詰むときは、死ぬときなんだよ。死んだら詰みだわ。もう文句も言えねぇからね」

「あきらめるか、あきらめないかは個人次第。あきらめたほうが楽になるときは、あきらめたほうがいいような気もする。俺もいっぱいあきらめてきたよ。いろんなこと。だけど、あきらめなきゃならないって人に言われる筋合いはねぇよなあ。ふざけんじゃねぇって思うよ」

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 ギターをつま弾きながら語り、「ズッコケ問答」。試行錯誤、悪戦苦闘、詰むや詰まざるやの歩みのなかでも、投了だけは選ばなかった吉野が放つ、「ブッ壊して、また造ってやる!」の気概。ふたたび「月の明かりをフラフラゆくよ」では、一歩一歩を確かめるように、しみじみと歌う。

 グッとあおったビールの缶をネックに滑らせて始まった、ラストの「有象無象クソクラエ」。真っ直ぐ正面を睨みつけながら歌い、狂おしくギターをかき鳴らす。終われば、晴れやかに「ありがとうございます。次は一郎くんです!」と言って、席を立つ。直前まで曲の世界に引き込まれていた観客は、ハッと我に返ったのではないか。1時間の持ち時間のなかにメリハリが効いた、濃密でドラマチックなライヴだった。

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— set list —
片道切符の歌 / 夜明けの歌 / ナニクソ節 / デクノボーさん / 地下室の喧騒 / ナニクソ節 / 夜のかげろう / ズッコケ問答 / 月の明かりをフラフラゆくよ / 有象無象クソクラエ

 

–>吉田一郎不可触世界 (Yoshida Ichiro Untouchable World) @ 長野 ネオンホール 2015.11.07

 

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