アウトサイドヨシノ (outside yoshino, 吉野寿) @ 岡山 城下公会堂 2015.11.22

酔えば酔うほど冴えていく
テキストレポート「酔えば酔うほど冴えていく」 @ 岡山 城下公会堂 2015.11.22

outside yoshino

 開場前。準備を終えた吉野寿が1発目に回したのはブラッドサースティー・ブッチャーズの前身バンド、畜生の「デス・イン・ライフ」だった。今年2月のライヴから1年経過しないうちに、吉野はふたたび岡山・城下公会堂に戻ってきた。開演前のBGMは、自前のiPodをギター・アンプにつなげて流すことが多いが、この日は物販ブースのとなりにポータブル・アナログプレーヤーとミニアンプをつなげたシンプルなDJセットをスタンバイ。iPodの代わりに、7インチレコードをかけるという。吉野のDJとしての名義は「DJおじいちゃん」。…この名前、今回限りなのか、それとも今後も使うのか。気になる。

 会場の外に、観客の列ができてきた。吉野は主催者の村岡充さんと、9月にイースタンユースにベーシストとして加入した村岡ゆかと談笑しながら、「ハマースミス宮殿の白人」、「1977」、「クラッシュ・シティー・ロッカーズ」、「アルマゲドン・タイム」と、ザ・クラッシュの曲を立て続けにプレイ。次にかけた横山やすしの「泣いて盛り場大阪編」の途中で開場時間が来て、やっさんの語りが生み出す独特のグルーヴが続々と入ってくる観客を迎える。

 吉野は私物のレコードの束から気の向くままに次の1枚を選ぶ。歌謡曲からOiパンクまで。ジャンルを問わない曲は「お客さんを踊らせよう、盛り上げよう」という意図で選ばれているのではない。吉野が「今、かけようと思った曲」である。再生中の曲について質問すれば吉野は気さくに答えてくれるし、ポータブル・プレーヤーのラフな音質も味わいがある。作為なき手作り感と気負いのなさが、アウトサイドヨシノらしいのだった。(プレイリストは記事の最後に記しておく)

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 開演時間を迎え、「よし、行くか!」と一声発してから、吉野はステージに向かった。
 
「昨日広島でやってきてですね。私ソロの場合は酔拳なんで。当然二日酔いなんです。アルコールが抜け切る前にお風呂に入ったりして頑張ってデトックスしようと思ったんですけど、ダメですね。抜けきらないうちに追い炊き機能で追い炊きをしてしまったんですよ。そうすると缶ビール500ml1本でも、すぐ泥酔状態になるんですね」

eastern youth 観客に「前の方の皆さん、硬いですよ。ダメですよ。寝っ転がってみますか。一回」と語りかける吉野は、すっかりアイドリング完了しているように見える。ゆっくりと「月の明かりをフラフラゆくよ」から始まり、次の「月影」は7分以上の熱演。圧倒されるあまり、フロアから拍手が一切起こらなかった。吉野は目の前の歌詞カードをバサリと床に捨て、「夜明けの歌」へ。曲間にビールをあおっては、「今日はいつもよりポンコツになる時間が多分早いと思うんです。ね。だからといってなんというわけでもない。その様をお楽しみください」と語り、普段にも増してじっくりと聴かせていく。五臓六腑に落としこまれるような響き。椅子に座った観客は、ひとりひとりが静かにそれを受け止めている。

 ギターと対話するようにはじまった、歌心全開の「青すぎる空」で前半終了。休憩時間中、吉野は村岡ゆかに「なんでも適当に!」とレコードをかけるように頼む。村岡が選んだのは、モーターヘッドの「エース・オブ・スペイズ」。吉野はそのチョイスにステージから親指を立てて笑っていた。次にジ・イーヴンズ「ウォーブル・ファクター」が流れる。

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「俺ね、5年くらい前に心筋梗塞でぶっ倒れたことあるんだけど、その前ぐらいにね、本当にアホみたいに酒飲んでて。ウィスキーを浴びるように飲んでたんだけど、ウコンを飲むと、持つんだよね。あれはなんか、肝臓がシュッとリセットされるとかじゃなくて、なんか麻痺させて、だましてんじゃねぇかな」

 二日酔いだがウコンのサプリメントを飲んできたので、意外と持っていると言いながら、吉野は経験に基づく持論を展開。「あれね、本当は飲んじゃダメなんじゃないかなと思ってるんだよ。酔っぱらう時は酔っ払えばいいんだよ。まっすぐ、地獄へまっさかさま。それで二日酔いしたほうがいいんだと思う。あれ、変に二日酔いしねぇから大丈夫かなと思っちゃうんだよね。で、また飲んじゃうじゃん? でも体は大丈夫じゃねぇんだと思うんだよ。実際ぶっ倒れてあんまりウコン飲まないようにしてるんだけど、…最近ね、また飲むようになりました」と語る。「夕焼け小焼け」の節を単音で奏で、「天沼夕景」から後半が再開した。

eastern youth 後半始まったばかりだというのに、「もういいよね。酔い潰れてもよかですか」「もうやめてもよかですか」と言い出す吉野に、男性客が「ようなかです」と返していた。「隙あらばふざけたいんだけどね。真面目とか、ストイックとか言われることが多かったんですけど、みんな人を見る目ないよね。ほんと。こんなおちゃらけている人間を捕まえて、どのツラ下げてストイックなのか」と吉野は不思議そうに語る。

 直後に演奏された、「泣くんじゃねえよ男だろ」も、歌われているのは決してカッコいい人物像ではない。なにしろ「財布のなかには500円玉だけ」しか入っていないのだから。しかし吉野がまっすぐに歌う様、輪郭の際立ったギターの音、歌詞に込められた強固な意志には、「人一倍ストイックでないと、たやすくこういう音は出せないのでは?」と受け手に思わせる何かがある。本人がどうあれ、歌に力があるからこそのイメージなのかもしれない。

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「暁のサンタマリア」以降は、ザ・キャンディーズの「優しい悪魔」と浅川マキの「あたしのブギウギ」のカヴァーを除いて、イースタンユースの曲が続いた。原曲よりキーを下げて歌われた「優しい悪魔」は、緊張感あるアレンジで、しっかりと自分の歌に仕上げてきた。

 イースタンユースの曲も、バンドの音源とは一線を画す表現で聴かせる。曲の核心の部分を抜き出して見せていくような演奏。「故郷」の前に新しい缶ビールを開けてから、アンコールの「街の底」まで。酔拳とはよく言ったもので、酔えば酔うほどに深みと冴えを見せていく。全存在を賭けて歌い、ギターを叩きつけるように鳴らす吉野。その姿を固唾を飲んで見つめる観客。両者がひたすら向き合う空間のテンションが途切れることはなかった。

 演奏を終えた吉野。「カンパーイ! ありがとうございます」と言ってビールを掲げ、拍手歓声に応えた。物販ブースでふたたびDJおじいちゃんに戻り、接客をしながらダイナソーJr.「ザ・ワゴン」、左とん平「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」 と7インチレコードのDJプレイを続けるのだった。

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— set list (DJおじいちゃん・開場〜開演前)–
横山やすし「泣いて盛り場大阪編
ジェリー・ウォレス「マンダム・男の世界
和田アキ子「夏の夜のサンバ」
ブラッドサースティー・ブッチャーズ「ルーム
ブラッドサースティー・ブッチャーズ「アイ・ヘイト・ユー
デッド・ケネディーズ「キル・ザ・プアー
マリア四郎「もだえ
ザ・パンドラズ「ホット・ジェネレーション
ザ・スカフレイムストーキョー・ショット
サミュエル・ホイ「ミスター・ブー
ゴッズ・ガッツ「ウォーク・オン・ザ・ノー・ウェイ」
ジョイン・ハンズ「アイ・コール・インサイド・ユア・ヘッド」
コーパス・グラインダーズオーガ
ブラッドサースティー・ブッチャーズ「サイレンサー
シーム「スキヤキ
シーム「ヒーローズ」
ブリッツ「ニュー・エイジ
ジ・オプティミスツ「マル・オブ・キンタイア
ザ・クラッシュ「プレッシャー・ドロップ
コスミック・インベンション「ヤキモキ

— set list —
月の明かりをフラフラゆくよ / 月影 / 夜明けの歌 / ファイトバック現代 / いつもの細い道 / スローモーション / ナニクソ節 / それに殺される前にあの空を撃て / 青すぎる空 / 天沼夕景 / 泣くんじゃねえよ男だろ / 暁のサンタマリア / 優しい悪魔 / あたしのブギウギ / ズッコケ問答 / 故郷 / 雨曝しなら濡れるがいいさ / 裸足で行かざるを得ない
— encore —
街の底

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