花房浩一写真展:リコ・ロドリゲスの素晴らしい世界 @ 中目黒クイーンシバ 2015.12.13 – 31

約束は守る
コラム 「約束は守る」花房浩一写真展:リコ・ロドリゲスの素晴らしい世界 @ 中目黒クイーンシバ 2015.12.13 – 31

Rico Rodriguez

 今年9月4日、ジャマイカ音楽界の巨星、トロンボーン奏者でヴォーカリストでもあったリコ・ロドリゲスが他界。深夜に届いた訃報はあっという間にファンの間に広まり、日本でも多くの人たちが、この悲報に涙を流していた。そのときのことは、たまたま執筆していたスカフレイムスのフォト・レポートに加えたコメントに書き残しているんだが、筆者も例外ではなかった。

 そのリコと最後に会ったのは、それから遡ること、2ヶ月と少し前の6月22日だった。例年、この時期にグラストンバリー・フェスティヴァル取材のために英国へ出かけるのだが、キティ・デイジー&ルイスと頻繁に来日している、彼の仲間、トランペット奏者のタンタンからリコの体調があまりよくないという話を耳にしていて、彼の自宅を訪ねていたのだ。巻頭の写真はそのときに撮影したもの。あまり長居をしては申し訳ないと、小一時間ほどの滞在だったのだが、この時、彼にはこんな話をしていた。

「日本に来てくれないかな?リコが大好きな仲間たちを集めて、あなたに捧げるライヴをしたいんだ。別に演奏しなくてもいいんだよ。そこにいてくれるだけで。もちろん、吹きたくなったり、歌いたくなったら、そうしてくれればいい。みんな、大好きなあなたを招待したいんだ」

 すると、リコの返事は「イヤー、マン。ミ・ラヴ・ジャーパン」と、その申し出を快く受け入れてくれた。

 帰国して即座に連絡を取ったのは、幾度も彼を招聘してツアーを企画していたジャポニクスの小宮山ショーゴ氏。彼に話をすると、「実は、それ、考えていたんだよ。年末には形にしようと思っている」と、具体的な日程の調整に入っていたことを知らされるのだ。それならば、そのタイミングに合わせて実現させたいと伝えていたのが「リコの写真を集めた写真展」だった。というのも、リコ・ロドリゲスの転機ともなった作品『ワンダフル・ワールド』に深く関わっていたのが筆者。ほぼ彼のバンドに若手のジャズ系ミュージシャンが合体することで生まれたジャズ・ジャマイカのデビュー作『スキャラバン』の国内発売をアレンジし、そこに続く、ジャズ・クラシックのレゲエ&スカ・カバー作、今では入手不能となっている『ザ・ジャマイカン・ビートVol.1』とその続編も企画し、制作にも関わっていたおかげで、当時、リコが新作の録音をしていることを小耳に挟むことになるのだ。

Rico Rodriguez ダメ元で話してみようか… と思ったのが、リコのヴォーカル録音だった。仲間から聞いていたのは、彼が日本のカラオケで歌ったルイ・アームストロングの名曲「ワンダフル・ワールド」の素晴らしさ。というので、彼とポートベロのパブでギネスを引っかけながら、そんな提案をすることになる。「俺が歌うのか?」と、最初は多少怪訝な表情を見せていたのだが、「実は、歌うのは、好きなんだよ」とも話してくれたものだ。この他にもジャズの名曲カバーのリクエストもしていたのだが、この時点でそれがどう転がっていくかは全く未知数だった。

 が、それからしばらくして届けられたマスター・テープから聞こえてきたのが、この後のリコにとってライヴの定番となっていった、ヴォーカル・トラック『ワンダフル・ワールド』だった。加えて、あの時にリクエストをしていた「ワーク・ソング」に「オーヴァー・ザ・レインボー」も「スターダスト」も含まれている。これを聞いて筆者が狂喜乱舞したのは容易に想像できるだろう。しかも、リコ本人からは「これほど幸せな録音はなかった」という言葉まで届いていた。そのときすでに、頭の中で思い描いていたのがアルバムのジャケットに使う写真のアイデア。彼にフォーマルなスーツを着てもらって、シリアスな表情と同時に幸せな表情も撮影して、その対比ができれば… と考えていたのだ。

 実を言えば、あの時のフォト・セッションには、いろいろな問題があり、撮影に使えたのはわずか1時間にも満たなかった。加えて、「写真で笑うのは嫌だ」と口にしていたのがリコ。ところが、自然な表情が欲しいからと、コンスタントに話しながら撮影したのがよかったのだろう。かなりピンぼけの写真も多かったのだが、満面に笑みを浮かべたリコの幸せな表情をフィルムに刻み込むことができたのだ。しかも、リコ本人までもが「だって、お前が俺を幸せな気分にさせてくれるんだから…」と、その結果を喜んでいた。

 結局、リコ・ロドリゲス本人を迎えてこの写真展を実現することができなかったのが、残念でならない。が、最後に彼に会ったときに交わした言葉をそのまま形にしたいと思ったのだ。約束は守るのです。ジャポニクスがすでに7月の時点で考えていたリコ・ロドリゲスへのトリビュートも12月24日開催。私の写真展はその前から始め、年末まで続けることになる。

 今回の写真展では、音楽フォト・ジャーナリスト、花房浩一が20数年にわたって追いかけ続けたリコ・ロドリゲスのとっておきの写真をお目にかけたいと考えている。あのフォト・セッションから後にライヴで撮影した写真の数々から選りすぐった作品を展示。加えて、実は数百枚も撮影していたスタジオ・セッションでの全ての写真をスライド上映しつつ、リコが残したレコードの数々を聴きながら、彼を追悼したいと企画したものだ。会場となるのは、来日した時には必ず、彼がやってきていたお気に入りのエチオピアン・レストラン、クイーン・シバ。写真展の会場としてふさわしいのかどうか、定かではない。が、ここにリコはいたのだ。そして、彼を待っていた人たちがいっぱい集まっていた場所でもある。ここをおいて他は考えられなかった。

 また、今回の写真展のために作ったポスター、Tシャツも販売。収益の一部はリコのご遺族にお渡しします。また、12月24日にジャポニクス主催のリコ・ロドリゲスへのトリビュートでも出品を予定。現在、会場でも写真を展示可能かどうかを調整しています。

*花房浩一写真展:リコ・ロドリゲスの素晴らしい世界
開催期間 : 2015年12月13日から31日(午前11時から午後4時まで)
場所 : 中目黒 エチオピアン・レストラン、クイーンシバ
〒153-0043 東京都目黒区東山1丁目3−1電話:03-3794-1801
入場無料(お店のメニューからお飲み物などは出すことができます)
*トーク・ショウのみ有料(1500円ドリンク付き)
花房浩一が体験したリコの全てをお伝えします。
2015年12月20&27日(日)午後1時〜3時まで

Rico Rodriguez

Share on Facebook

Information

Photos:
Koichi "hanasan" Hanafusa
hanasan@smashingmag.com
Web Site / Blog / Facebook / twitter
Koichi "hanasan" Hanafusa's Works

Text:
Koichi "hanasan" Hanafusa
hanasan@smashingmag.com
Web Site / Blog / Facebook / twitter
Koichi "hanasan" Hanafusa's Works

Write a comment