コーパス・グラインダーズ (Co/SS/gZ, Copass Grinderz) @ 渋谷 クラブクアトロ 2015.12.05

轟音、生きてこそ
テキストレポート「轟音、生きてこそ」 @ 渋谷 クラブクアトロ 2015.12.12

Copass Grinderz

「この3人は、バンドやってなかったらね、人の一人でも殺してるんじゃないかっていうね、それか格闘技やって凄い事になってるか(笑)」

 いまから20年前のゼロ(Vo/G)の談(※1)である。「この3人」とは、ゼロ、当時コーパス・グラインダーズのメンバーでもあったブラッドサースティー・ブッチャーズの吉村秀樹、イースタンユースの吉野寿を指す。’90年代、パンク、オルタナティブ・ロックシーンで活動し、交遊のあった3人の間に存在していた、特別なシンパシーがうかがえる発言である。その後の3者の歩みは、ご存知のとおり。ゼロは15年にも及ぶ失踪状態を経て、’14年にコーパスを復活させる。きっかけとなったのは、’13年5月の吉村の急逝だった。

 一方、イースタンユースは23年間在籍したベーシストの二宮友和が今年6月に脱退し、9月に村岡ゆかを新メンバーとして迎えた。バンドにとって重要な局面となる1年ぶりの極東最前線のゲストとして吉野が選んだのは、コーパスだった。

Copass Grinderz

 チケットは即日完売。頭脳警察の「さようなら世界夫人よ」が流れる中、満員のフロアが暗転。コーパスのメンバーによる、バックステージでの気合い入れの掛け声がフロアまで届く。名越由貴夫(G)、大地大介(Dr)、境めぐみ(Dr)がステージに登場し演奏を始める。ほどなく一角獣のような角がついた三角錐をかぶったゼロが、ステージ中央に現れ、仁王立ちで大見得を切る。歓声のなか「ニールヘル」へ。極東最前線史上最大とも言える音圧で名越のギターが轟き、ゼロ、大地、境の雄叫びが響く。

 次は「コブラ」だ! とフロアの期待が高まった瞬間。想定外、しかし聞き覚えのあるコードがゆっくりと4回鳴らされた。

「おかえり、イースタンユース!」

Copass Grinderz ゼロのシャウトとともに始まったのは、なんとイースタンユースの初期の代表曲「月影」。登場時のかぶり物も、もちろん『ボトムオブザワールド』のジャケット写真へのオマージュである。(ゼロ曰く「そっちが四角ならこっちは三角だ!」とのこと)イースタンユースとその観客への愛とサービス精神が込められまくったカヴァーに胸が熱くなる。まさかの展開に大笑いしている人も、唖然とした人も、コーラスでは笑顔で一緒に声をあげ、拳を掲げて応える。

ゼロ「いくぞ、渋谷ファイャー! 俺たちがコーパス・ファッキン・グラインダーズだ!」
大地「いくぞ、コブラ!」

 コーパスの代名詞とも言える「コブラ」が、満員のフロアに投下される。カタルシス全開。ミルクカウ(Milkcow)のツルがステージ袖から突進してきてフロアへダイブ。終われば大歓声。フロアからメンバーへ、口々に声援も飛んでいる。 コーパス、渋谷クラブクアトロへ20年ぶりの痛快すぎる再降臨。

Copass Grinderz

 ゼロは早くも肩で息をしているのがマイク越しにわかる。大地がPAに、「ドラムのところに、キックとスネアを。あと失っていった過去を返してください。あと、薄れゆく体力を」とオーダーすれば、「大地、あんまり言うとツイッターのMCボットに書かれるぞ」とゼロがツッコみフロアは爆笑。

「シルバー」以降もツインドラムが放つド迫力のリズムをベースに、ヘヴィーなリフとギターノイズを前面に押し出し驀進する。冒頭、名越の地鳴りのようなギターにゾクゾクした「J」。間奏はなぜかファンク風にアレンジされており、境のシャウトが響いて、元のリフに戻っていく。終わってからゼロにあれはなんだったのかとたずねると、「スライのドキュメンタリーを観たから」だそうで。相変わらずのフリーダム具合である。

Copass Grinderz

 曲間に大地がヘロヘロになりながら、「名前だけでも覚えていってください」とメンバーを紹介。ゼロが「47(大地)、48(ゼロ)、49(境)、50(名越)です」と年齢を付け加える。「次、新しいバンドメンバー入れるなら51か46歳」「誰でもいいんだよ」「結構入れるよ!」と観客に呼びかける大地とゼロの掛け合いが楽しい。

Copass Grinderz「ロックン・ロール」のあとには、ラウンド・ガールのグラインダーズ(★GrinderS★)がステージに呼ばれる。復活以降ステージに華を添えてきたが、10月24日のライヴを最後に卒業とのこと。突然呼ばれたためか、あわてた様子で登場し、笑顔であいさつ。拍手が送られた。

 復活後に作られた新曲「パルス・ゴースト」では、怪獣の嘶きのようなギターがうなりを上げ、最新型コーパスの充実っぷりを見せつける。 そして「今日、ゲスト・ギタリストが来ています。みんながびっくりするよ」とゼロから呼ばれたのは、大地だった。もうひとり「札幌時代の俺のマブダチ。キング・オブ・グランジ!」と呼ばれたゲスト・ドラマーのマサキ(from THUGS / LisaloomeR※2)が大地のドラムセットにスタンバイ。大地はギターを構え、センターに立つ。

Copass Grinderz

大地「こんなに前に出るのは初めてなので」
ゼロ「2回目じゃねえかよ。大地、(コーパスを脱退する前の)最後のライブで一番前でドラム叩いたろ」
大地「そうだ。それがきっかけで辞めたんだ!」

 最後の曲はマッドハニーのカヴァー、「イン・アンド・アウト・オブ・グレース」。ゼロ、大地、名越の3人でボーカルを取る。 ステージを動き回りながら楽しそうにギターを鳴らす大地。年末の極東最前線といえば、大地が在籍していたファウルがゲストとして常連だった頃がある。コーパスもイースタンユースもいろいろあったけれど、再びここに大地の姿があることが、とにかく嬉しい。クライマックス、ゼロはステージ脇から飛び降り、さらに大地とゼロはドラムセットめがけてダイブ。マサキはステージからダイブし、クアトロの柱に全身で激突。とどめに境もステージ中央からフロアへダイブ!

Copass Grinderz 大歓声のなか、ステージにひとり立っている名越が奏でたのは、ブッチャーズの「7月」のイントロだった。混沌の後の祈りを思わせる、此岸から彼岸への美しい響き。復活後のコーパスは、吉村秀樹への想いと共にある。ここで感受した轟音も笑いも何もかも、生きているからこそなのだという真理が、空間を満たす。激しくかき鳴らされたギターの音色が止まると、ゼロは崩壊したドラムセットの中から立ち上がり、絶叫。盛大な拍手が沸き起こった。

 ’94年から続く極東最前線の長い歴史の中でも、ゲストとして最大級の爪痕を残したコーパスは、来年秋発売予定のサード・アルバムのレコーディングに入る。19年ぶりとなる新作が完成すれば、再びステージでその雄姿を観ることができるだろう。

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編注 ※1: 『ロッキング・オン・ジャパン』1995年8月号より引用
   ※2: ゲスト・ドラマーのマサキ率いるサグスは札幌出身のバンドですが、ゼロの札幌時代というのはありませんので口から出まかせです。油断なりません。サグス主催のイベント『サグスの穴』が来月行われます。2016年1月23日(土)、下北沢シェルターにて!

–>フォトレポート

–>イースタンユース(テキストレポート)「運命に挑む音」


— set list —
Ne/H/eL No.9 / 月影 / COBRA / SILVER / J / BAT / rock’n roll / Pulse Ghost / In ‘n’ Out of Grace

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