モグワイ (Mogwai) @ EX シアター 六本木 2015.05.30

アトミックの賛否両論
テキスト・レポート「アトミックの賛否両論」 @ EX シアター 六本木 2015.05.30

Mogwai

 始まる前は非常に静かだった。通常ライヴの前には何かしらのBGMが流されているのだけれども、この日は無音。お客さんたちも静かに開演を待っている。19時40分ころ会場が暗転しメンバーが登場した。背後のスクリーンで「アトミック」というイギリスBBC製作のドキュメンタリー番組が映される。

 そして、約1時間ちょっとで、上映は終わる。拍手の音がフロアにいる人たちの戸惑いを表していた。アンコールを求める空気も微妙で、どちらにせよバンドは再びステージにでてくることはなかった。

 人々を困惑に巻き込んだ問題の映像は、原子(力)にまつわるさまざまなものごとを戦時中の原爆の開発から、福島の原発事故まで基本的には時系列に沿って映し出されていく。日本語の字幕も入るので理解の助けにはなる。

Mogwai  反核運動のデモ隊の様子も映し出されているので、反核・反原発のメッセージと受け取ることもできるのだけど、後半は医療への応用や核融合などにも触れられているので、反核一辺倒というわけでもない。イギリスの原子力発電所の周辺に住む人たちがインタビューで「雇用が生まれるからいい」というような答えがある場面もある。観る人によっては「平和利用するならいい」「厳重に管理できるならいい」というように受け止められる可能性を残している。ニュートラルな作りなのだ。そして、自分の嗜好に合わせて解釈できてしまう。

 そして、モグワイは今まで以上に寡黙だった。もともとそういうバンドであるけども、まったく喋らず、フロアに向かって何かのアクションもない。音楽的には前作『レイヴ・テープス』を引き継いで、轟音が後退してシンセサイザー音が多くなり、音の空間を生かしたものとなった。静かな「エーテル」で始まる。基本的には新しいアルバム『アトミック』からの曲から演奏された。定番曲・人気曲は一切演奏されない。ときに演奏を止めてドキュメンタリー映像の音声を流すこともある。モグワイらしい轟音は終盤に聴ける。そのときスクリーンには、激しくプロミネンスを放出する太陽が映し出されていた。

Mogwai 今回はモグワイの演奏がどうのこうのと語る余地がなく、完全に映像の伴奏であり、音は映像に属している。モグワイは何も語らずに、淡々と映像に合う音楽をつけているだけだという姿勢は崩さない。ニュートラルなドキュメンタリーに何も語らないモグワイの音楽をつけている。観ている側が過剰に反応してしまうことをあぶり出すというか、そこから何を受け取り、何を思うのかは、あなた次第であるという製作者の問いかけであり、挑発である。

 以前のライヴにおいて、モグワイによる空気や壁や床まで揺らす轟音というのは「何が音楽なのか、どこまでが音楽なのか?」の問いを発し続けていた。音楽か音楽でないかの境目に生じたところに快感があったのだ。今回は「どこまでがエンターテイメントなのか、ライヴ会場にまで足を運んで体験すべきものなのか?」という問いかけのように感じた。モグワイのモグワイらしい挑発なのだ。

Mogwai

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Izumi "izumikuma" Kumazawa
izumikuma@smashingmag.com

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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