竹原ピストル @ 下北沢シェルター 2016.06.10

言葉のストレート
テキストレポート「言葉のストレート」 – 竹原ピストル in 宮川企画「マイセルフ. ユアセルフ」 @ 下北沢シェルター 2016.06.10

竹原ピストル

 10日の先発は竹原ピストルだった。6月あたまの「宮川企画」は彼を中心に組まれていたが、翌11日はトリ。誰がメインだとか、上や下の別もなく、「良いものは良い」という、ただ一点だけが在る。

 竹原がこの日の一曲目に選んだのは、「ドサ回り数え歌」だった。この曲の詩は、6本あるギターの弦の1本ごとに切れる理由の意味づけをしていくというもの。むき出しの細い高音弦が切れることは、「しかたのないこと」と捉えるいっぽうで、コイル状に編まれた太い低音弦が切れることは、「(失礼をした)バチでしょう」と表現する。そして「弦、切れて、縁、切れて、でも元気でね」と、韻を踏んだ詩が続いてゆく。

竹原ピストル 弦が切れることが、なぜ、「ドサ回り」の曲になるのか。なぜ、申し訳なさを含んだ詩なのか。ライヴに全身全霊で挑み、滝のような汗を流し、喉を引きしぼるかのように唄う姿だけでも、竹原の心意気、性格は十分に伺いしれる。決して、不義理をするような人間ではない。

 しばし考え、記憶から釣りあげたのはフライヤー、要は、チラシだ。竹原のライヴに行った者であれば必ず手渡されるもので、印刷面はすべて、ライヴの予定で埋められている。ドサ回りの内容が羅列してあるだけなのだが、それに気づく以前に、文字が細かすぎて一目ではなにが書いてあるのかわからない。とてつもない数なのだ。

 事実、この6月の4日から23日までは19日連続で、そのうち12日は場所を変えて2回、「ダブルヘッダー」でライヴをしている。数年前のライヴで手にしたチラシにも、月の日数を超える数のライヴが記されていた憶えがある。終わることの無いミュージシャン家業こそ、「竹原ピストル」の日常だ。

 詩の裏側には、尋常ではない数をこなすライヴのために、近しい人間になにかが起こったとしても、駆けつけられない、ということがあるのではないだろうか。どんな事態になろうとも、いつもと変わらず、眼の前のお客さんに唄を届けることは想像に難くない。

「RAIN」から「俺のアディダス〜人としての志〜」へ、竹原の真骨頂といえる、拍子からはみ出した、「字余りの詩」が堰(せき)を切って流れでる。物事を噛みしめ、反芻するような言葉の数々はどれも、「独り言」ともとれるような体裁になっている。それが、息つぎを排してラップのごとく積みあげられ、恐れずに言い換えれば、矢継ぎ早に言葉を「捨てている」ようにも感じる。

竹原ピストル

 思い出されたのは、とあるトークショーで仲野茂(アナーキー)が発した、「言葉を『捨てる』と、感情を込めるよりも伝わることがある」という言葉。そして、「俺にはできない」と、本気で悔しがっていた様子だった。

 言葉を捨てることを、メリハリとしてうまく使っている。熱を注いで唄うパートでは、表と裏が入れ替わり、唄が浮き彫りとなる。途端に、シンプルでありながら、ゆるやかな起伏を持ったメロディがこちらの内にドッと流れ込んでくる。

 竹原がかつてのめり込んだボクシングで例えるなら、字余りで言葉を発するのがジャブ、メロディに乗せてかっさらうのが、決めのパンチといったところか。そんな駆け引きが存在する曲と、CMでもおなじみ、「よー、そこの若いの」といった、徹頭徹尾、聴かせる曲が折り重なって、ライヴ自体が起伏あるものとなり、リズムを奏でるのだ。

 竹原の演奏中、観る者は自分自身を投影してしまう。それがピリッとした雰囲気を生むが、ライヴにおける「試合巧者」の竹原は、場の空気をほぐす技も持っている。MCとなれば、T字路s、踊ろうマチルダを迎えたこの日の宮川企画に、「ダミ声選手権」などと勝手にタイトルをつけてみたり、お客さんの野太い声援に、「黄色い声援が無い!」、「野郎が声を高くしただけだろ!」とおどけて笑いをとる。その際の笑顔は、まるで柴犬のようなかわいさがある。

 頭にタオルを巻いた、いかにも労働者な出で立ちが男臭さや無骨さに拍車をかけながらも、実のところは、とても繊細な人なのではないだろうか。もっと言うなら、お客さんも含め、ハコの中は繊細な者だらけなのではないか、とも思うのだ。

竹原ピストル

–>竹原ピストル(フォトレポート)

–>T字路s(テキストレポート)「千両役者のブルーズ」

–>特集:宮川企画「マイセルフ, ユアセルフ」


— set list —
ドサ回り数え歌 / LIVE IN 和歌山 / RAIN / 俺のアディダス〜人としての志〜 / みんな~、やってるか! / よー、そこの若いの / ちぇっく! / キャリーカートブルース / 東京一年生 / わたしのしごと / テイク イット イージー / 家のすぐ真裏の公園に / STAY FREE!! / ファイト

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