イースタンユース @ 下北沢シェルター 2016.06.11

突きつけられた、剥き出しの「今」
テキストレポート「突きつけられた、剥き出しの『今』」 – イースタンユース in 宮川企画「マイセルフ, ユアセルフ」 @ 下北沢シェルター 2016.06.11

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「ブルー・ハーブ、竹原ピストル。そして街の底からやってまいりました、我々はイースタンユースでございます。夜は長い。楽しんで帰ってください」

 最後の曲、「街の底」の演奏前。イースタンユースの吉野寿(G/Vo)は、この日唯一のMCでそう語った。6月9日から12日まで、4日連続5公演を行った竹原ピストル。6月11日の対バン相手は、イースタンユースとザ・ブルー・ハーブだった。ラインナップだけでも凄いのに、それを下北沢シェルターで実現させるとは。さすがは熱意にあふれたブッキングに定評がある宮川企画のイベント、「マイセルフ, ユアセルフ」である。チケットはプレイガイド発売後瞬く間にソールド・アウトし、フロアは隅々から階段までギッシリの超満員だった。

eastern youth シェルターといえば20年くらい前に、現在も渋谷クラブクアトロで続くイースタンユース主催の対バン・イベント「極東最前線」が行われていた会場である。そこでファウルやブラッドサースティー・ブッチャーズ、ナートなど、同志とも呼べるバンドとともにステージを踏んでいたイースタンユース。当時の記憶と特別な思い入れとともに、会場へ足を運んだ観客もいたに違いない。

 大音量で鳴り響くドラゴンズの「アナーキー・イン・ザ・UK」のカヴァー。炸裂するいいかげんさに思わず頬がゆるむSEとともに、ステージに現れたメンバー。ギターを構えた吉野は、田森篤哉(Dr)を中心に村岡ゆか(B)と向き合い、ゆっくりと弦を爪弾く。すかさずフロアから「おおっ!」と声があがった1曲目は、昨年のツアー以来演奏されていなかった「月影」だった。吉野と呼吸を合わせて切り込んでくる、村岡の硬質なベース。観客の高揚とともに駆け昇る田森のドラム。高く降り下ろされるギターと、「月影」特有の吉野の強度を帯びた歌声。フロアは観客の合唱とともにモッシュで揺れ、コーラスでは無数の拳が突き上がる。

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 この日の邂逅を象徴するかのような「地下室の喧騒」をはさみ、「裸足で行かざるを得ない」「いずこへ」と続く。序盤はシェルターで「極東最前線」を開催していた頃から演奏されてきた代表曲をたたみかけていった。イントロが始まるたびに驚喜に満ちた歓声が沸き、割れんばかりに反響する音塊とフロアの熱が、空間に大きなうねりを生む。「裸足で行かざるを得ない」以降、鋭く手堅いバンドの演奏とは裏腹に、吉野の表情は汗と涙でグッシャグシャだった。まさに「溢れ出る涙は拭わない」を地でいく光景。吉野のゆらぎつつ張り上げられる声とともに、観客の歌声がフロアいっぱいに響く。どうしたって、グッとくる。一転、「いずこへ」につながる曲間。静けさの中鳴る、吉野と村岡の奏でるささやかなリフも沁みる。

eastern youth 中盤は、最近の曲が続く。タイトなリズムと、間奏のカオスが大きなコントラストを生む「イッテコイ カエッテコイ」。哀愁が入り混じるメロディーが駆けていく「呼んでいるのは誰なんだ」。吉野のキレの良い掛け声から、豪快なアンサンブルで圧倒した「グッドバイ」。過去から現在へと意識を向ける流れによって、時を経て曲調や表現のレンジが深化と広がりを見せていることに気づく。なおも吉野は声を絞り出し、時になにもかも振り払うように絶叫する。観客は緩むことのない緊張感を、爆音とともに浴び続けている。

eastern youth 迫真のボーカルと、ギターが空間を切り裂くラストに鳥肌が立った「たとえばぼくが死んだら」。前を見据える意志に満ち溢れた「荒野へ針路を取れ」。この2曲では吉野と田森のゆるぎない響きに、村岡のベースが伸びやかに彩りを添えていた。新たなグルーヴを獲得し、前進していくバンドの姿を目の当たりにする。冒頭に記したMCを経て、歓声とともに「街の底」。間奏では吉野の掛け声とリズムがキマるごとに、フロアからも掛け合いのように声が飛ぶ。序盤をしのぐフロアの揺れとともに、クライマックスを迎えた。演奏を終えた吉野の「ありがとう、さよなら!」の言葉とともに、地下の小さな空間に大喝采が渦巻く。満場の拍手に見送られ、3人はステージを後にした。

 筆者も学生時代、シェルターのフロアでモッシュに押しつぶされそうになりながら、必死の思いで「極東最前線」を観た覚えがある。しかし演奏中、追憶や感傷に浸る隙は一切与えられなかった。絶えず突きつけられたのは、ヒリヒリとした剥き出しの「今」。もはや逃げ場などない。溢れ出す感情とともに、歩みを進めるイースタンユース。その掛け値なしの姿から、目をそらすことができなかった。

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–>イースタンユース(フォトレポート)

–>ザ・ブルー・ハーブ(テキストレポート)「圧倒的な説得力を持つ言葉の弾幕」

–>特集:宮川企画「マイセルフ, ユアセルフ」


— set list —
月影 / 地下室の喧騒 / 裸足で行かざるを得ない / いずこへ / イッテコイ カエッテコイ / 呼んでいるのは誰なんだ / グッドバイ / たとえばぼくが死んだら / 荒野に針路を取れ / 街の底

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