竹原ピストル @ 下北沢シェルター 2016.06.11

魂のリングで見せた生き様
テキストレポート「魂のリングで見せた生き様」 – 竹原ピストル in 宮川企画「マイセルフ, ユアセルフ」 @ 下北沢シェルター 2016.06.11

竹原ピストル

 イースタンユースザ・ブルー・ハーブの演奏を経て、帰る観客はほぼ皆無だった。前日と同様、男女比約7:3で埋まり、移動もままならないタフな状況がつづく下北沢シェルターのフロア。竹原ピストルは素早くセッティングを済ませ、空間に澄んだギターの音を響かせる。「今日は本当に貴重な機会をありがとうございます。竹原ピストルといいます。よろしくお願いします」と第一声。元ボクシング選手の竹原が毎晩のように立つ、ステージという名の「魂のリング」。ゴングの代わりに盛大な拍手と、彼の名を呼ぶ声援が竹原を迎えた。

 挨拶代わりの「ドサ回り数え歌」。竹原のかすかにかすれつつ、ぬくもりと強さをたたえた歌声が放たれると、2アーティストのライヴでフロアに充満した熱気が、瞬時に引き締まる。「ドサ回り数え歌」ではボーカルの豊かな強弱と伸びに心を鷲掴みにされ、次の「カモメ」では織り込むようなギターの音に乗せた、サビの抜けの良さが際立った。ライヴで培われた歌唱力と、メロディーメーカーとしての実力を示しつつ、演奏を終えると「たいして難しいことやってるわけでもねえのに、顔だけうるさかったすね。余計な動きばっか」と、自らライヴ中の表情を再現して照れ笑い。観客の笑いを誘う。

 人間へのあたたかな眼差しを感じさせる、「LIVE IN 和歌山」。ざっくりしたリズムとともに叫びが刻まれる「RAIN」。思いの丈を詰められるだけ詰め込み、一気に放出される信念が胸を打つ「俺のアディダス~人としての志~」。前半の早い段階にして名曲が連なっていく。

竹原ピストル

「高校生のときと大学生のときはずっと部活でボクシングやって、弱いなりに必死こいてやったもんですから、まあその名残みたいな歌かな、と思うんですけれど」と語って、次の曲「カウント10」のタイトルを告げる。観客の拍手に「曲のタイトル言っただけで先にそうやって拍手をいただいて、それによってこっちがどんだけ緊張するっつうの」と返して見せると、笑いとともにフロアの拍手は一層大きくなる。「東京中の意地悪が集まってる場所ですね!」と冗談を言いつつ、笑顔を見せる。

 拍手の大きさは、この人生における不屈の意志を歌う曲が、いままでどれほどの観客の心に火を灯してきたかの証だろう。「カウント10」から、疾走する「ちぇっく!」へと続く。アルペジオで歌心に寄り添い、カッティングで加速度をつけ、気迫とともに打ち下ろしてキメる、緩急自在のギターの音色も素晴らしい。

「正直、ここ数年でいちばんペース配分間違ってるっすわ。尊敬してやまねえザ・ブルー・ハーブさん、イースタンユースさんとの共演の機会ですからね。我ながら、まあ、まあ、今日ぐらいはしょうがねえかって思ってますけど」

 マイクをとおして、荒い息遣いが聞こえていた。竹原は数年前にザ・ブルー・ハーブのザ・ボスに緊張しながら初めて挨拶したときのやりとりを語る。「『全国どのライヴハウスに行っても、お前のライヴのポスターが貼ってあるんだよな』と若干迷惑そうに言われたとき、真剣に活動休止を考えましたけど」とユーモアを交える。

「うっとおしかったかもしれませんが、あちこちほっつき歩き続けてたどりついた、いただいた今日の機会だと思うんでどうかご勘弁をってところでもありますけど。いずれにしても、限りの限りまで全力で演奏させてもらいますんで。今日は世にも珍しい、最後に出てくる前座のライヴ、よかったらお付き合いください」と改めて腰の低い挨拶をして、盛大な歓声とともに後半へと突入していく。

竹原ピストル

「キャリーカートブルース」では竹原のドサ回り生活、通りすぎていった光景を映し出す詞が紡がれる。観客へ「お前さんがた、金を払ってでも潰したい暇ができたってことだろ? さあさあ、その暇ここへ遠慮なく提出してくれ。誠心誠意ぺちゃんこにぶっ潰してやっからよ!」と啖呵を切れば歓声が飛ぶ。

 間髪入れずに「みんな~、やってるか!」をテンポ良く駆け抜け、「東京一年生」ではじっくりと聴かせる曲調とともに、フロアの現役「東京一年生」と、かつての「東京一年生」たちへエールを送る。「十字架」と「10時か」を掛け、言葉遊びのような面白みがある「じゅうじか」、目を細めたくなる友情が歌われる「リョウジ」もしみじみと佳い曲である。

 最新アルバム『ユース』から披露された2曲。アルバム音源では「全て身に覚えのある痛みだろう?」はバンド・サウンド、「よー、そこの若いの」はアップテンポの4つ打ちのリズムに彩られている。華やかなイメージを持つ曲をギター1本で弾き語ると、やわな歌手では色あせて聴こえてしまうだろう。竹原は「メロディーと言葉」という曲の心臓部を掴み取り、観客一人ひとりの胸を抉って埋め込んでいくかのごとき、力強い弾き語りを聴かせた。竹原のシンガーソングライターとしての圧倒的な力量が示された瞬間だった。

 この2曲の間には、「問題はどううまく当たり障りなく、さり気なく、打ち上げを欠席するかですね」「あの大先輩方と飲む酒ってどうなんでしょう」「正直僕、(イースタンユースの)吉野先輩とお酒ご一緒して楽しかった思い出ひとつもないっすね」と語りだす。竹原は2年前に吉野と向井秀徳(ZAZEN BOYS)と飲んだときの「すべらない話」ばりのエピソードを披露し、その光景が浮かぶような会話の再現っぷりにフロアは大爆笑。共演アーティストがお目当ての観客にも、笑って楽しんでもらおうという心配りもニクい。

竹原ピストル

 本編最後の曲、「ステイ・フリー!!」で一気に高みに昇りつめ、頭に巻いたタオルを外して深く一礼。鳴り止まない拍手に、「ドッキリとかじゃないですよね」と言いつつ再びステージに登場し、アンコールで「今度お会いする時には曲つけておきます」と、「ママ・セッド・ノック・ユー・アウト!! 〜ホッカイドウ・デイズ〜」のポエトリー・リーディングを披露。ラストは「ぐるぐる」の熱唱でライヴを締めくくった。割れんばかりの声援と拍手に、何度もお辞儀で応える竹原。始まりから終わりまで、徹底的に謙虚で真摯だった。「アンコールをいただいて、本当にありがとうございました! お気をつけてお帰りください。終わります。ありがとうございました!」と丁寧に礼を述べ、去り際にもう一礼するのだった。

 イースタンユースとザ・ブルー・ハーブという、ジャンルは違えど長いキャリアをサヴァイヴしてきた共演者がステージで見せたのは、単なるパフォーマンスを超えた、己の生き様そのものだった。膨大な量のライヴをこなし、ライヴが生きることと直結している竹原も、ギター1本、身ひとつで自身の生き様を観客に示してみせた。その姿はリングで命を懸けて戦いに挑む、孤高のボクサーのようだった。きっとボクシング選手だったころから、彼はこうやって生きてきたのではないか。観客は歌う竹原の姿を凝視し、ときに身につまされるような表情をしていた。その眼差しは、こんな風に生きている人間がいることを忘れまいとする、衝撃と熱さをはらんだものだった。

竹原ピストル

–>竹原ピストル(フォトレポート)

–>特集:宮川企画「マイセルフ, ユアセルフ」


— set list —
ドサ回り数え歌 / カモメ / LIVE IN 和歌山 / RAIN / 俺のアディダス〜人としての志〜 / カウント10 / ちぇっく! / キャリーカートブルース / みんな〜、やってるか! / 東京一年生 / じゅうじか / リョウジ / 全て身に覚えのある痛みだろう? / よー、そこの若いの / STAY FREE!! / AND AGAIN

— encore —
Mama said knock you out ‼︎ 〜Hokkaido days〜 / ぐるぐる

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