キングブラザーズ @ 神戸スター・クラブ 2016.06.22

たとえこれが最後の夜だとしても
テキストレポート「たとえこれが最後の夜だとしても」 @ 神戸スター・クラブ 2016.06.22

キングブラザーズ

 三ノ宮から少し東、JR神戸線と阪急電鉄の並走する高架下に、今月末で閉店が決まった神戸スター・クラブはある。この日は開場時間あたりから雨脚が強くなり、ライブハウスに湿った空気も入場者と共に潜り込んだ。終演後、誰もが頭の先からつま先まで汗と天井から落ちてくる滴にびしょ濡れになったのは、決してこの6月の雨のせいではない。

 開演時間を20分ほどすぎ、フロアの期待がはち切れんばかりなのが手に取るように分る。そこへ、まるで新しいおもちゃを友達に見せる少年の眼差しをした3人が現れた。「このライブ・ハウスはなくなっちまうけど、最後に新しい曲やりまくるんで」とケイゾウ(Vo.G)が煽ると、ゾニー(D)の揺るぎないドラムにケイゾウのハープが重なる「ソング1」でライヴは始まった。「まだまだ足りない」という歌詞が、彼等の転がり続ける動機を指し示す。一転「ソング2」ではマーヤ(G,スクリーム)が時折笑顔を浮かべながらかき鳴らすリフに、踊りたくてたまらなかったフロアが待ってましたとばかりに揺れ動く。続く「ソング3」はゾニーのドラムが跳ねまわる圧巻のリズムが熱気を加速させていく。3人の個性がよどみなく交わされ絡まりあいながら溶け合い、いい意味で個々の境界線が希薄になっているのが印象的だ。

キングブラザーズ 「ローリング・ストーンズって知ってる?」ケイゾウがフロアに語りかけて始まった「ソング4」は、彼等の解釈で生み出された腰から踊れるロックン・ロール・ナンバーだ。マーヤのソリッドなギターとケイゾウのハープのメロディに引きこまれたところでゾニーのドラムが重なると、不思議なことにストーンズっぽさは消え、キングらしさに変貌する。この3人でなくてはならないことを証明するために、今日という日があるのだ。

 新曲に振られた番号はただの通し番号かと思っていたのだが、5曲目のアニメ『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』の、第12話のエンディング・テーマに使用された際のタイトルも「SONG 5(ソング5)」だった。「ソング6」~「ソング9」と容赦なく新曲が披露される。過去にすがりつくということが全く無い、そんな時間が過ぎていった。初めて聞く楽曲が違和感もなく受け止めらることを、実は、今までの彼等の歴史で稀有なことではないかと思った。それほどまでに、3人の向かうべき先が同じこと、同じ沸点を持っていることを、フロアで踊る全ての人の中に瞭然たる事実としてとらまえられている。古くからのファンにも新しいファンにも共通して結ばれているビジョン。頭で考えるよりも勝手に反応していく、身体がその存在を証明していた。

eastern youth 新たな潮流に乗り切ったところで、「いつもの感じでやりますんで、さあ行こうぜ!」とケイゾウが声の限り叫ぶと、「ルル」のイントロのドラムにフロアからウォーという怒号があがる。時折感極まった観客の金切り声が聞こえ、狂気乱舞の世界が繰り広げられる。フロアに身を投げだしたマーヤは「やっとリベンジができます」と、かつて3曲目で全てを投げ出し逃げたことを語る。ロックン・ロールという道の過酷さに心がやられてしまった自分へのリベンジとして、1本の長いライブをやり倒そうと心に決めていたという。「間に合ってよかったぜ、これで俺の黒歴史がなかったことでよろしくおねがいします!俺たちやり出した頃と変わってませんでした。あの頃言ってなかった言葉をスター・クラブに捧げます『ニ・シ・ノ・ミ・ヤ!』」地の底から湧き上がるニシノミヤ・コールに、投げキッスを飛ばし続けるマーヤも彼を担ぎながら移動する客も、精神崩壊寸前のエクスタシーの中にあった。客に支えながら立ち上がっては倒れ、自らの筋力で起き上がり続ける様を、神々しいような面持ちで私は記録していった。

キングブラザーズ

 早鳴りの鐘のように鼓動が胸を打ち、血液が体温を上げながら全身を駆け巡る。「☆☆☆☆」「ビッグ・ボス」「キーポンローリン」と続き、マーヤがヴォーカルをとる「ゲット・アウェイ」で、歌い出しから彼のマイクが鳴らなかった。自分のマイクを投げ捨て、ケイゾウのマイク・スタンドからマイクを引きちぎるも又鳴らず、それさえも叩き捨てた彼は「もう限界」という歌詞を生声で繰り返し続けた。ケイゾウはドラムのために立てられたマイクでコーラスを重ねる。命を炎にくべながら燃焼していくマーヤと、爆発的な演奏で支えるケイゾウとゾニー。彼らがキングブラザーズ、これこそがキングブラザーズ。短い「ソング10」を添え、3人はステージを降りた。時間を開けず再び現れアンコール「マッハクラブ」の極限状態から「魂を売り飛ばせ!」と続く。中盤でフロアに楽器のセッティングを降ろし、彼らは恐ろしいまでの集中力を保ったまま全ての演奏をやり切った。

 マグマが吹き出る火口に飛び込んだようなライヴ感覚は、この夜で全てが終わっても悔いのない強靱な3人の意志が作り上げていた。そしてそれは今日に限ったことではなく、今までもこれからもキングブラザーズがキングブラザーズである限り変わらないことだった。ライブが終わり客電がついてもなお、3人の鬼気迫る眼光が、思わず太陽を裸眼で見た光の残像のように、いつまでも目の前に張り付いていた。

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–>キングブラザーズ(フォトレポート)「二度と戻らない時間に爪痕を」


— set list —
Song1 / Song2 / Song3 / Song4 / Song5 / Song6 / Song7 / Song8 / Song9 / ルル / ☆☆☆☆ / Big Boss / Keep on Rollin’ / Get Away / Song10
— encore —
マッハクラブ / 魂を売り飛ばせ!

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Photos:
Tomoko "tommy" Okabe
tommy@smashingmag.net

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