グラストンバリー・フェスティバル (Glastonbury Festival) in ピルトン・サマーセット (Pilton, Somerset) 2016.06.24 – 26

観客の感じるグラストの魅力、現地で起こった悲劇:Part1
特集- 「観客の感じるグラストの魅力、現地で起こった悲劇」:Part1 @ ピルトン、サマーセット 2016.06.24 – 26

グラストンバリー・フェスティバル 

 1年ぶり2回目の参加となった今回。情報量が多すぎるこのフェスに度肝を抜かれてしまった去年のこともあり、今回は少し整理して取材を進めていこうと決めていた。現場にいるといやでも目にはいる広大な会場。まるで街にいるかのような会場は渋谷を中心にすると恵比寿や代々木あたりまで到達するほどに広い。この数字や広さをどれほど文章で伝えようとしても「百聞は一見に如かず」、来ないことには私の文章では伝えきれないし、ウェブ上にはグラストについての情報はたくさんあるのでそちらを見ることをお勧めする。「現場にきたからこそ伝えられることとは?」それは、観客の生の声だろうと考えた。初見だからこそ異常と思えた去年。皆が当たり前のように街で暮らしているように見えたのは大事なことで、慣れてしまう前に観客がこのフェスをどう見て、どう感じているのかを訊き出すべきだと考えた。客観的に取材を進めなければ聞けないこともあり今年はインタビューをすることを決めた。つたない英語ではあるが、ある程度質問を紙に起こし、手振り身振りを交えて話を聞くと、私が知りたかった「このフェスに感じていることや魅力」を引き出すことができた。

グラストンバリー・フェスティバル 
 息を巻き、やる気をみなぎらせていざ話を聞きに行く。どんな回答が待っているのかワクワクしていたが、そう簡単に素敵な体験談を聞くことはできない。大抵は「楽しいからね!」「すべてが素敵さ!」いやまぁ確かにそうではあるが、そういうことではない。もっと具体的かつ熱くなるような話を聞きたかった。合計で20人ほどに話を聞いたが、上述したような回答は実に多かった。老若男女、人種を問わずに諦めずに聴き続ける。何人か話を聞いていると、若いカップルやグループはアーティストが目当てだというケースが多い。老夫婦や子連れの家族などは観光地としてきている印象だった。確かにヒット・チャートに名をはせるDJやバンドが軒を連ね、他のフェスではヘッド・ライナー扱いのアーティストがここでは初日にダダかぶりすることも珍しくないし、会場内にはレストラン、サーカス、大道芸から遊園地のようなところまである。しかもそのどれもが本格的な規模で行われている。もちろんそれらも魅力の一つではあるが、一つの要素でしかないと思っていおり、私がこのフェスに感じる魅力というのは、一年のうちに三日間だけ現れ、まるで夢を見ているような、この場所だけ時空が歪み出現したような夢の街に10万人以上の人間が共に過ごしているという所にヒントが隠されているのではないかと思っている。徐々にではあるがそれを40年以上も続けているのだ。あいた口が塞がらない。そのことについて感じることや思うことなどを聞き出せるように話し方を変えてみた。

 取材を進めていく上で出会った二人との会話
 取材を進めていた最終日の26日夕方、ピラミッド・ステージではマッドネスが観客を沸かせていた頃、僕はウェスト・ホルツ・ステージで渋さ知らズオーケストラの撮影のために一人でビールを飲みながら待機していた。ぼーっとしていると、ご機嫌な風貌の初老の男性がベンチで休憩をしているように見えたので、声をかけた。彼との会話が今回のグラストの体験の中で非常に印象的だった。


 男性の名はアーウェル。20年ほど前から参加している彼に、グラストの魅力を聞いた。「それは「will(僕は意思と捉えている)」だ。それぞれ個人が自分の「will(意思)」で魅力を探す、君が僕に聞いたのも魅力を探したいという意思だろ?そういうことだ。何をするにしても自分の意思が尊重されるのが魅力的なところだ」当たり前のような顔で彼はそう言った。確かに観客もスタッフも国民性とはいえ見た目の違いを意識せず、ポジティブな間柄にあるように見える。お互いを尊重して、ぶつかり合うことがないのかもしれない。「それが私にとっては自由ということのかも知れない」と付け加えた。自由というのが個々の自己責任のもと生まれるのだ。
 
 アーウェルと会話をしていると、隣に座っていたケイトという女性が参加してきたので、僕は「あなたにとってグラストはどういうフェス?」と質問をした。「不便なところね。グラストはとても不便、特に女性にとってはね。けど都市型のフェスに何の魅力を感じる?歩きやすい地面、堅苦しいアナウンスが自分たちのためにはならないわ。何も考えなくなってしまうし、グラスト以外は全部商業的な祭りに行っている感覚になるの」、「ここで目に入るのはアートと音楽、それ以上でもそれ以下でもない」と答えてくれた。

 そもそもグラストの収益は全てCND (反核運動団体)に寄付していたところから始まり、グリーンピース(国際環境団体)、オックスファム(貧困と不正を根絶するための団体)、ウォーターエイド(安全な水と衛生へのアクセス改善を目指す団体)といった非営利団体の支援を行っているフェスと聞いていたことを思い出した。主要ステージには団体の名前も目に入るが、会場内には企業の広告が目立つことなく、目にするのはアート、耳に入るのは音楽。まさにケイトが言っていた通りだ。改めて彼女から教えてもらった言葉で、周りを見る目が新鮮になる。日本の大規模野外フェスではまずない光景で鳥肌が立つ。驚く僕を2人は笑いながら、少し誇らしげに見ていた。なるほどそうか、彼らにとってそれはもはや当たり前の事実なのだ。ここには”フェス感”というものを感じずに”不思議な街に来ている”という感覚になるのはそう言ったところからも生まれているのだと理解した。

–>観客の感じるグラストの魅力、現地で起こった悲劇:Part2

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