コーパス・グラインダーズ (Co/SS/gZ, Copass Grinderz) @ 新代田フィーバー 2016.11.26

「爆音鬼」の名において
テキストレポート 「『爆音鬼』の名において」@ 新代田フィーバー 2016.11.26

Co/SS/gZ

「耳栓を装備していない方の入場を禁止とします」
「当公演における身体的、精神的障害が発生した場合、コーパス・グラインダーズ(Co/SS/gZ)及び新代田フィーバーでは一切の責任をとりかねます」

 不穏なアナウンスと、「拷問音響機構《Torture Sound System Wall》」という公演名とともに開催が発表された、コーパス・グラインダーズ(以下、コーパス)の1年ぶりとなるライヴ。耳栓必携の理由が明らかになったのは、公演の2週間前だった。榎本是朗(ZERO、G/Vo)による「マーシャル3段、20スタックをフロアに並べフルテンで鳴らします。当日は何が起こるか誰もわかりません」のコメントが音楽メディアで報じられ、ファンは「爆音鬼」コーパスの真骨頂に立ち会える期待とともに、戦々恐々とした気持ちで当日を迎えることになった。是朗曰く「2014年。爆音鬼が15年降りに目覚めた時、世の中は轟音、爆音、凶音、雑音に満ち溢れていた。しかし、笑える程の馬鹿は居なかった。笑える程の馬鹿を見せてやる!!」が動機のようだが……、さて、いかに。

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 11月26日正午過ぎ、会場前に停車した機材レンタル会社のトラックから、マーシャル・アンプが下され、フロアへと次々と運び込まれていく。搬入直後、フロアを半分ほど埋め尽くしていたアンプは、この日のために集結したスタッフにより、手際よくヘッドとスピーカー2台がいわゆる3段積みの状態に組まれ、ステージに向かって右側に10スタック、左側にも10スタック、フロアの両サイドをフルに埋め尽くすように並べられた。

 アンプは機材レンタル会社2社から集めたもの。レンタル申し込み時に、是朗は両社から「全て音を出すのか」と確認されたという。ハードロックのステージで目にする「マーシャルの壁」は、実は音が鳴っているのは一部で、あとは鳴らさないかハリボテということも珍しくない。是朗は渋谷にあるギター・ショップ「フーチーズ」(Hoochie’s)の村田氏に20スタックのマーシャルを全て鳴らすための機材を特注し、ライヴを完遂するためのキモとなるPAはツバメスタジオの君島氏に依頼。2年がかりで、このライヴを実現させるための準備を進めていた。

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 フロアで観客を迎えたのは、マーシャルの壁だけではない。スペイン在住のイラストレーター、ミゲル・アンヘル・マルティン氏による、シンプルでかわいらしさのあるタッチながら、タブーの香りが漂う作品がフロアを飾っていた。ステージのバックドロップに描かれた氏の作品のアイコン的なキャラクターであるガスマスクをはじめ、PAブースに1点、両サイドのアンプ上にも1点ずつ、フロアの入り口にも大きく印刷されたイラストを掲示していた。

 ’99年、是朗がマルティン氏にCDジャケットのアートワークを依頼するも、バンドは活動休止。このたび、17年の時を経てライヴの来場者に配布される「パラノガン!」と「パルス・ゴースト」の7インチ・シングルのジャケットを、マルティン氏が活動休止前に制作したイラストが飾ることとなった。ライヴに合わせて、マルティン氏は来日。是朗のプロデュースで展覧会も催され、ヨーロッパで活躍するマルティン氏の作品が、日本に初めて紹介される、記念すべき機会となった。

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 開演時間を過ぎ、ステージを覆ったスクリーンではマルティン氏原作、ボルハ・クレスポ監督の「スナッフ2000」(Snuff2000)の約8分間のショート・フィルムが上映された。音声はスペイン語で画面の下半分が観客の影で隠れてしまっていたが、是朗が訳した日本語字幕が上部に表示されることにより、スナッフ・フィルム(殺人の様子を撮影した映像)を撮ろうとしている登場人物が会話をしている内容であることがうかがえる。

 映像が終わり、ドラムのカウントから轟くリフとともにスクリーンが取り払われる。メンバーとともにステージ中央に立っていたマルティン氏がリズムに乗せて英語での挨拶と、スペイン語で何かをラップのように語り、ステージから去る。彼の代表作となる著作のタイトルが冠された曲、「トータル・オーヴァーファック」の演奏とともに、ライヴは幕を開けた。

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 2曲目は大地大介と境めぐみによるド迫力のツイン・ドラムを中心に据え、名越由貴夫(G)によるリフが地を震わせ、是朗のギターソロが狂い咲く「パルス・ゴースト」。そして、地獄から聞こえてくるような絶叫が響く「ニールヘル」から、是朗と大地の「行くぞ、コーパス・ホーリー・ファッキン・グラインダーズ!」「コブラ!」のシャウト。「コブラ」は轟音のなかでもタイトなリズムが際立っている。終われば是朗と大地は手応えありの表情でハイタッチ。4曲が怒涛の連なりを見せた序盤に、観客から口々に歓声が飛ぶ。

 セットリストを見ると、新曲「パラノガン!」「パルス・ゴースト」のリリース・ライヴ、かつ『クラッシュ!』『ロックン・ロール』の2枚のアルバムからまんべんなく選曲された、決定版的ライヴと言えるだろう。「ニールヘル」~「コブラ」の流れは鉄板で、「J」の間奏での恒例・大地の渾身のダンスも観客の笑いとともにキマっていた。東京では再始動後初となる「オーガ」も演奏。新曲の「クリスタル・デーモン」は大地がボーカルを取る、グランジっぽさが漂う壮大な曲。同じく新曲のヘヴィーなリフが耳に残る「フィードバック・マギー」は、スリルあるプログレ的な展開を見せていた。どちらも、ぜひ新しいアルバムで聴いてみたい。

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 大地のMCも、おなじみの光景。「みなさんこんばんは。コーパス・グラインダーズです。今日は本当ファッキンありがとう。ファッキン集まってくれて、本当にファッキンありがとう。こんなにファッキンな夜が、毎日続いたらいいなーって、いつも夢に描いています」とファッキン連発な挨拶をかます。「48歳になったんですけど、47歳の時に体重が76kgくらいだったんですけど、この1年間で10kg増やしました。この日のために」なんて語って空気を和ませたり、おもむろにボウイ(BOOWY)の「ノー・ニューヨーク」のさわりを歌い出して、観客をポカンとさせていた。「オーガ」の後にはマルティン氏とクレスポ監督がステージに呼ばれて紹介された。メイド喫茶に行ったというクレスポ監督と是朗は両手でハートマークを作って握手、マルティン氏と是朗は熱いハグを交わしていた。

 肝心の3段積みマーシャル20スタックの威力は、伊達ではなかった。左側の10台からは名越が奏でる凄まじい重低音が迫り、右側の10台からは是朗が発する狂気的なギター・ノイズが耳をつんざく。曲が始まるたびに、無意識に身構えてしまう過剰な爆音がフロアを支配する。フロアの歓声や拍手は、ギターが鳴ればかき消されてしまう。フロアを退出する以外逃げ場もない観客は、その場にとどまって音圧の板挟みに屈服するしかない。特に、ずらりと並んだマーシャルの”BASS”と書かれたつまみが軒並み「10」を示していたのには、是朗と名越の殺意すら感じ、震えた。

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 CIAがグアンタナモ米軍基地に収容したテロ容疑者に対して、24時間大音量で音楽を聴かせ続ける拷問を行っていた事実が示すように、音楽は拷問の材料になりうる。冒頭のバンドからのアナウンスも、決して大げさではない。観客は耳栓を外せば心身に影響が出る可能性と隣り合わせで、爆音に身をまかせている。是朗はMCで何度も「耳栓外してみ?」と明るく提案し、「大丈夫だよ。人間、慣れる」と悪魔の笑みを浮かべている。観客は肝試しのように耳栓を時折外してみるのだが、耐えきれず、再び付け直すのだった。

 耳栓必携のライヴということで、輸入販売元のコルグ(KORG)の計らいで、この日は会場で音楽愛好家のための耳栓「クレッシェンド」を購入することができた。筆者も撮影中に装着してみたが、今まで使用していたウレタン素材の耳栓に比べて、音がこもった感じが軽減され、各パートの音が無理なく自然に聞こえて驚いた。

 耳栓を装着し、ライヴ終盤にフロアに立ってみて感じたのは、大音量の重低音とリズムが塊となって醸す荘厳さだった。空間内に重力が増しているのではないかと錯覚するほどの重厚な響きと、音波の振動の体感。それは今まで観てきたライヴでは経験したことがない、未知の感覚だった。凄まじい音圧のため、両サイドのマーシャルの壁と観客の間には自然と人ひとりが通れるくらいの空間ができていたのだが、あえてアンプにギリギリまで近寄って、ここでしか味わえない感覚を楽しんでいるように見える観客もいた。

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 本編ラストは、15分にも及んだ「ゴールド・ユース」。是朗はステージを降りてマーシャルの壁に果敢に歩み寄り、ギターをかざして凶悪なノイズを発し、音塊の絨毯爆撃のとどめを刺す。アンコールはマッドハニーのカヴァー、「イン・アンド・アウト・オブ・グレース」を演奏。鳴り止まない拍手の中、最後はメンバー全員で揃ってステージに登場。「今日は、こんな馬鹿げた企画に(来てくれて)ありがとう。でも……、世界をぶっ飛ばしたぞ!」是朗の達成感に満ち溢れた勝利宣言(ライヴ後に是朗が記した声明文には、敗北と書かれているが)に、観客は惜しみない拍手と歓声で応えた。

 マーシャル20スタックを用いて鳴らされた音の、暴力性をはらんだ超越的な迫力は、コーパスそのものを象徴していた。この過剰さ、規格外っぷりこそが、彼らの真髄である。コーパスは、自ら命名した「爆音鬼」の名において、真の轟音とは、真の爆音とは、そして、「笑える程の馬鹿」とはいかほどのものかを、途方もない力技で示してみせたのだった。

 活動休止から再開までの15年間の空白を取り戻すかのように、是朗が驚異的なバイタリティーで発案から準備、本番に挑んだこと。多くのスタッフがその実現を支えたこと。コーパスを「鬼」たらしめるギタリスト、名越由貴夫を擁するのみではなく、再始動後、ツイン・ギター、ツイン・ドラムの編成となったことで、大音量のギターとドラムが互角に鳴っていたこと。満を持した1年ぶりのライヴに、熱いコーパスアーミーたちが全国から集結したこと。全てがこの特別な日のための、必然だった。そう確信している。

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— set list —
TOTAL OVERFUCK / PULSE GHOST / Ne/H/eL / COBRA / MONGOOSE / BAT / MONEY / BOOSTER / J / OGRE / SILVER / Crystal Damon / rock’n'roll / PARANOGUN! / 血まみれ / ANSWER / Feedback Magie / GOLD YOUTH

— encore —
In ‘n’ Out of Grace

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