イースタンユース @ 渋谷クラブクアトロ 2016.12.10

一人ひとりに向ける歌
テキストレポート「一人ひとりに向ける歌」 @ 渋谷クラブクアトロ 2016.12.10

eastern youth

 11月25日の名古屋のワンマン・ライヴと26日の大阪のライヴを経て、イースタンユースは年末恒例の対バンライヴ・シリーズ、極東最前線を開催した。

 シッピング・ニュースの「アクソンズ・アンド・デンドライツ」が流れる中、メンバーが登場。吉野寿(G/Vo)は1曲目の「砂塵の彼方へ」のコードをゆっくりと奏ではじめ、ワンフレーズ終えると、ひと呼吸。村岡ゆか(Ba)、田森篤哉(Dr)へそれぞれ「OK?」と確認。観客の方を向き「よろしいですか?」と声をかけてから、ギターの硬く甲高い音色を発した。イントロで轟音が放たれると同時に、フロアがまばゆい光にに照らされ、大歓声とともに観客の拳が上がる。そのままリズムの裏でコールが起こり、吉野が歌いだすと、観客の合唱が乗る。

eastern youth「夏の日の午後」「青すぎる空」「素晴らしい世界」と続いた頭4曲。どれもイースタンユース屈指の代表曲であり、イントロが始まるごとに、フロアからはすかさず驚喜の歓声があがる。吉野は鋭利な音色のギターと気迫に満ちた歌を放ち、田森の安定感と迫力に満ちたドラムと、村岡の多彩な表情で魅せるベースとともに進んでいく。「たとえばぼくが死んだら」を終えた吉野は、自分のことを10分おきに悲嘆に暮れているペシミストなのだと言い、それでも「1年の締めくくりに皆様に会うことができて、幸せだなと思っています」と観客に挨拶。共演した左右にもお礼を述べた。

「踵鳴る」では疾走するリズムに乗って、吉野はギターを豪快に振りかざしながらステージを跳ね、歌いながら目一杯伸ばした腕を勢いよく振り下ろし、地団駄のような足踏みをしながら、全身を使って熱演。「イッテコイ カエッテコイ」はストイックな曲調と、間奏のカオスを行き来する。次の「矯正視力〇・六」は、最後のサビで村岡のコーラスが入ると、メロディーがいっそう彩り豊かになった。かき鳴らされるギターと、ドラムとベースが合わさってダイナミックな爆音がフロアを満たすなか、吉野がカウントを叫ぶ。始まったのは「ドン・キホーテ」。鮮烈な響きとともに、吉野は何度も胸を拳で激しく叩きながら歌っていた。

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 吉野は、たとえばフェスで見られる集団での一体感やカタルシスは大事だと思うが、俺はそういうの嫌で、と語り始める。

「バッと見ると(観客は)みんなひとかたまりみたいに見えますけど、そんなわけないんですよ。『オギャー』の瞬間から、全員バラバラですよ。それが集団の熱狂みたいになってしまうと、気持ち悪い」「筋子をイクラにするみたいにね。バラバラにしたいわけ」

「バラすための音楽でありたいと思ってるんですよ。共感なんかできないんですよ。誰も。共感できないってことを共有することが大事だと思ってる。だって、人の痛みだって、わかんないから。想像するくらいしかできないから。隣り合わせて、共有するしかできない。一個になんなくていいのよ」

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 筋子とイクラのたとえに笑いが起きつつ、拍手が沸く。イースタンユースが貫いてきた姿勢の核心を突く言葉だった。「お集まりのイクラのみなさん、立派な鮭になりましょうよ」と言って、「荒野に針路を取れ」が始まる。

 名古屋でも吉野は、観客という一単位ではなく、その中の一人ひとりに向けて演奏しているつもりであり、「俺吉野、アンタ誰?って気持ちでやってますよ」と語っていた。刹那的な盛り上がりを求めず、安易な共感に流されず、馴れ合いを拒否する。「荒野」とは、そんな吉野がひとりで立つ、彼岸の象徴である。そして「夜明けの歌」、本編ラストの「街の底」へと続くと、フロアはさらに大きな観客の歌声とともに、最高潮の高揚を見せた。イースタンユースは観客にシンガロングも、コール・アンド・レスポンスも、振り付けも求めない。フロアに集った一人ひとりは、そんなイースタンユースの流儀をわかっている。高揚の最中でも、各々が思い描く荒野や、夜明けの瞬間や、街の底に、吉野と同じくひとりで立ち、演奏を受け止め、歌い、拳をグッと握るのだ。

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 村岡加入後、初めて行われた極東最前線から、1年が経過した。村岡は「1年間必死で頑張りました。イースタンユースになりたくて。で、今日、ちょっとなれたかなって」と手ごたえを語り、フロアは盛大な拍手に包まれる。吉野から身振りとギターで促され、村岡は唐突に「私はボブ・ディランです。ノーベル賞をいただきました。本当は欲しくないわけじゃなかったんですけど…..」などと言い出す。吹き出しつつ時事ネタを言わされる村岡に、観客は爆笑。「ちょっとずつ、ちょっとずつ、ね」とOKサインを出す吉野と、「吉野さんが(MCを)考えてくださいました」と付け加える村岡。観客から、「いいよ、ノーベル賞あげるよ!」とあたたかい声も飛んでいた。村岡は演奏ではとっくに肝の据わったイースタンユースっぷりを発揮しているのに、MCはこれからもこんな調子なのだろうか? 見守っていくしかない。

 アンコールでは、田森も発言はなかったが手を挙げて観客に挨拶し、声援と拍手が送られていた。「敗者復活の歌」は高らかに鳴り、「街はふるさと」の開放感のあるメロディーは晴れ晴れしい。ダブル・アンコールでは、吉野の「2017年も、裸足で行かざるを得ない!」の宣言が、大歓声で迎えられた。フロアの揺れとともに1年の締めくくりとなるライヴの最後の曲を終え、満場の拍手と歓声が渦巻く。吉野はステージ中央で両手を掲げて応え、年末恒例の極東最前線は幕を閉じた。

 同日、次の極東最前線の日程が発表された。次回は4月26日(水)、ゲストにクラムボンを迎え、渋谷クラブクアトロで開催される。チケットは12月18日まで、オフィシャル・サイトで先行予約を受け付けている。

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–>イースタンユース(フォトレポート)

–>左右(フォトレポート)


— set list — (eastern youth)
砂塵の彼方へ / 夏の日の午後 / 青すぎる空 / 素晴らしい世界 / たとえばぼくが死んだら / 踵鳴る / イッテコイ カエッテコイ / 矯正視力〇・六 / Don Quijote / 荒野に針路を取れ / 夜明けの歌 / 街の底

— encore —
敗者復活の歌 / 街はふるさと

— encore 2 —
裸足で行かざるを得ない

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