コーパス・グラインダーズ (Co/SS/gZ)、ソシテ (SOSITE)、射守矢雄と平松学 @ 名古屋ハックフィン 2016.12.17

交差する「あれから」の道
テキストレポート「交差する「あれから」の道」 @ 名古屋ハックフィン 2016.12.17

Co/SS/gZ

 3段積みのマーシャル20スタックを全台鳴らす「拷問音響機構」と題された爆音ライヴを成功させた3週間後、コーパス・グラインダーズ(Co/SS/gZ、以下コーパス)は約2年ぶりとなる名古屋でのライヴを行った。コーパス主催で行われたこの公演の告知チラシには「射守矢雄榎本是朗大地大介加倉ミサト小松正宏境めぐみ名越由貴夫平松学」のタイポグラフィーが紙面いっぱいにレイアウトされていた。この文字列の中から正しく人名を抜き出し出演バンド別にグループ分けせよ、と言わんばかりのデザインである。正解は射守矢雄と平松学、ソシテ(SOSITE)、コーパス。同時に誰もが思い浮かべるのが、ここに記されていない、射守矢と小松とともにブラッドサースティー・ブッチャーズを成し、かつ、コーパスのメンバーだった「吉村秀樹」の4文字なのだろう。

射守矢雄と平松学

 先発はブッチャーズの射守矢とファウルの平松、ふたりのベーシストによるインスト・ユニット、射守矢雄と平松学だった。ステージ中央に置かれたバスドラムをはさんで、フロアから見て左に射守矢、右に平松がベースを構えて向かい合う。シンプルかつシンメトリーな配置が目を引くが、演奏が始まれば、お互いのゆるぎない個性が絡みあい、重層的かつアシンメトリーなアンサンブルが紡がれていく。この日は中央奥にヴァイオリニストの斉藤裕子(アコースティック・ダブ・メッセンジャーズ)が立ち、「センボウノゴウ」以外の曲で共演した。寡黙なベーシストふたりが創り出す物語性のある奥深いサウンドに、ヴァイオリンのやわらかな音色が豊かな彩りを添えていた。

 平松がゆったりとリフを奏でるなか、射守矢がフィードバック音を自在にコントロールし、曲調が広がりを見せていく「キング」から始まった。基本的に平松の奏でるリフが曲の表情を決め、ギター・アンプにベースをつないだ射守矢が、ギター・ソロ的にベースを歌わせていく。

 ブッチャーズとファウル、両バンドのファンにはたまらない顔合わせであるだけでなく、バスドラムによってリズムが加わる場面や、ふたりの奏でるフレーズがユニゾンになる場面など、要所で見せ場が盛り込まれている。ラストの「スモール・ワールド」は射守矢のベースの枯れた哭きっぷりが渋い。後半は曲調が変わり、ふたりが交互にバスドラムを踏む。平松がバスドラムでリズムをとっているときは射守矢はメロディーを鳴らし、射守矢がバスドラムを踏んでいるときは平松がドライブ感とともにグイグイと迫るリフを奏でて、よりバンド的なアプローチを見せていたのが面白い。ふたりで呼吸を合わせて迎えたラストまで、観る者を魅了し続けていた。

SOSITE

 二番手は加倉ミサト(Gt/Vo)と小松正宏(Dr)によるソシテ。ステージ向かって右に加倉が立ち、左に小松のドラムセットが置かれる。清楚な黒のワンピース姿でひらりひらりとした手つきでコードを鳴らす加倉のたたずまいは、可憐そのもの。彼女の透明感に溢れたボーカルが入る曲は、フロアに爽やかな心地よさをもたらす。一方、インスト曲ではギターから立ち上る変拍子と不協和音がポスト・ハードコア直系のテンションを漂わせ、一筋縄ではいかない通好みの魅力をたたえている。

 パリッとしたタイトなリズムを繰り出す小松のドラムは華があり、加倉のギター、曲の緩急に合わせて多彩な表情を見せ、職人的な巧さも感じさせる。「カッコウ」ではその名のとおり、カッコウの鳴き声を想像させるストイックなリフがダイナミックに展開し、小松のドラムソロがカタルシスを呼ぶ、最大のハイライトとなった。

 加倉がイントロをやり直すと小松が「どうしたミサト?」と声をかけたり、曲間に「チューニング大丈夫?」と小松に言われ、加倉がニッコリ笑ってチューニングを始めるやりとりも微笑ましい。小松はソシテ以外にもクリプト・シティ、フォー(FOE)で活動し、加倉もソロ・アーティストとして活動している。清音と濁音、繊細さと大胆さ、ふたりの個性がスリリングに融合していく様は、ソシテならではの持ち味と言える。気負わないたたずまいながら、鮮烈な印象を残してコーパスへバトンを渡した。

Co/SS/gZ

 セッティングを終え、榎本是朗(Gt/Vo)がステージに登場するなりギター・ノイズを発すると、空気が一気に引き締まる。「聖地」名古屋ならではの歓迎ムードで迎えられたコーパス。「パルス・ゴースト」のイントロから是朗はギターをかざし、名古屋ハックフィンへ再降臨の狼煙を上げる。「ニールヘル」〜「コブラ」へとフロアは大きく揺れ、キメどころでは是朗のシャウトともにフロアから勢いよく拳が上がる。冒頭3曲を終えると一段と大きな歓声が沸き上がった。観客の歓声も拍手も、軒並み爆音とノイズに飲み込まれた「拷問音響機構」とは対照的だ。

「愛と平和はクソッタレだ。カネが全てだ! 働け!」

 ヤケクソなんだか真っ当なんだかわからない、しかし説得力満点の是朗の決め台詞からの「マネー」、そして「オーガ」へ進む。「拷問音響機構」を経て、ツイン・ドラムのシンクロ感がアップしていたり、名越由貴夫(Gt)が発するノイズからイントロに突入する構成がいっそう鬼気迫るものとなっていて、バンドとしての前進を実感する。

「クリスタル・デーモン」は大地大介(Dr)と是朗がメロディアスに歌う前半から、是朗の激しいギターソロと名越の重低音リフが迫りくる後半へと展開する。曲調の転換時の大地と堺めぐみ(Dr)のツイン・ドラムも効いていて、再始動後のコーパスの特性を存分に生かした大曲に仕上がっている。コーパスはライヴでの音量も、「鬼」の異名にふさわしい気迫も、何もかもが圧倒的なのだが、曲にはどれも一聴した観客の心を鷲掴みにする、キャッチーさが宿っている。この曲も名古屋初披露であるにもかかわらず、他の曲に引けを取らない大喝采が起こっていた。

Co/SS/gZ

 大地が息を切らしながら「スネアをドラムのところに返してください。あと体力を。失われていく体力を返してください」とPAに注文し、笑いが起こった曲間を経て、「J」。間奏では名越がギターで発する効果音に合わせて大地がロボット・ダンスをして、大地と是朗がフロアに降りていく。観客の手拍子が沸き起こるなか、大地はバーカウンターからトレーに乗せたドリンクをロボットのような仕草で運び、是朗と最前列付近の観客に振る舞う。ドリンクを一気に飲み干した是朗は、フロアで笑顔の観客に囲まれながらギターソロを弾いてステージに戻っていった。

是朗「大地くんの『お茶飲みからくりロボット』でした!」
大地「お前もからくり人形にしてやろうか! むっはっはっは!」
是朗「名古屋だけだよ。東京じゃできないんだよ。みんなシーンとするから」
大地「あー、のびのびできてよかった! ありがとう名古屋! 最高っす!」

「J」が終わってからの是朗と大地のやりとりに、観客も大喜び。「シルバー」のあとには、是朗から「次のアルバムが出て名古屋に来たとき、『拷問音響機構』、ハックでやることになりました。さっき店長にお願いされたんでやります」との宣言もあり、一段と大きな歓声が上がっていた。「札幌でもやって」の声には、「札幌はね、マーシャル3段積み20台ないんだと思うんだよね。それをレンタルできるなら。それが全て」と答えていた。マーシャルさえ用意できるなら、「拷問音響機構」はどこでも実現可能ということか。例えばマーシャルの壁を従えてロックフェスで演奏するコーパスなんて、さぞかし映えるだろうし絶対盛り上がると思うのだが、どこかに粋なフェス主催者はいないものだろうか。

Co/SS/gZ

 7インチもリリースされ、再結成以降の代表曲と言える「パラノガン!」から、凄みのある重低音リフ、是朗のアクションを交えたパフォーマンス、名越のギターソロと見どころ満載の新曲「フィードバック・マギー」。そして疾走しつつラストへ向けて白熱していく「ゴールド・ユース」まで、たたみかけるように突き進む。最後はゲスト・ドラマーに小松を迎え、1年前の「極東最前線」出演時と同じように大地がギターを構えてセンターに立つ。

大地「小松! お前のドラムは最高だ!」
小松「大地、お前には負けるよ!」
大地「まあな! なんつって! やれんのか?」
小松「やってやるよ!」
大地「よっしゃあ! 行くぞ!」
小松「行くぞ!」

大地と小松によるミニコント(?)からの「イン・アンド・アウト・オブ・グレース」で盛り上がりは最高潮を迎えた。演奏が終わったあとは、フロアが大地コールに沸き、ステージから是朗と名越が観客に日本酒を配り、是朗はこの日の出演者と観客に礼を述べる。

Co/SS/gZ

「ごめんな。みんなが期待したもんはやらなかったけど、もう、そろそろいいと思うんだ。わかる? みんなあれから別々の道を行ってるってことで、3バンドで来ました」

「みんなが期待したもん」とは、‘14年5月のコーパスの復活ライヴで披露された、射守矢と小松との共演のことを指す。観客にわざわざ謝るのも、吉村秀樹と活動を共にした者が「あれから別々の道を行ってる」ことをライヴで示すのも、それを’97年に吉村がコーパスを脱退した地である名古屋でやるのも、是朗の律儀さのあらわれであり、思いの深さが伝わってくる。

「ハックフィン、35周年おめでとうございます! まだあるよ、メリー・クリスマス! 次いくよ、あけましておめでとうございます! これが一番大事、名越由貴夫、誕生日まだ早いけどおめでとう! 乾杯!」

 是朗の音頭とともにステージ上の出演者とハックフィンの店長、フロアの観客は何度もコップを掲げて乾杯。そして、観客から熱烈なアンコールを求める声が沸き起こり、予定になかった「バット」でライヴを締めくくった。コーパスのありったけのサービス精神に応えて、フロアからは無数の拳が掲げられ、サークル・モッシュが渦巻いたのだった。

Co/SS/gZ


— set list (射守矢雄と平松学) —
KING / ulala / Mrs. JASCO / センボウノゴウ / Octopus / groomy… / small world


— set list (SOSITE) —
暮レ子 / コウモリが眠る頃 / 不透明びより / カッコウ / 塀を越えたら / 岸頭にて / 郷


— set list (Co/SS/gZ) —
(ノイズ) / PULSE GHOST / Ne/H/eL / COBRA / MONEY / OGRE / Crystal Damon / J / SILVER / PARANOGUN! / Feedback Magie / GOLD YOUTH / In ‘n’ Out of Grace

— encore —
BAT

–>フォトレポート:射守矢雄と平松学

–>フォトレポート:ソシテ(SOSITE)

–>フォトレポート:コーパス・グラインダーズ(Co/SS/gZ)

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