アイス・ステーション(Ice Station) @ 渋谷WWW 2017.02.09

楽しみ、想う
テキスト・レポート「楽しみ、想う」 @ 渋谷WWW 2017.02.09

Ice Station

 2015年11月、ノルウェーの小さな町で第1回公演がおこなわれたアイス・ステーション。地球温暖化問題に関心があるアーティストが登場する。

 会場となった渋谷wwwには、アットホームな空気が流れていた。元映画館の段差があるフロアには椅子が置かれて、ほとんどの人が座ってみることができた。マーシャルのアンプ上にはゴジラやキングギドラのフィギュアが置かれる。

Ice Station 19時を過ぎるとナヌークが登場する。北極圏であるグリーンランドから来た彼らはまさにこのイベントにふさわしい。ステージには、クリスチャン・エルスナー(ヴォーカル、ギター)、フレデリック・エルスナー(ヴォーカル、ギター)、マス・ロン(キーボード)、アンドレアス・オテ(ベース)、マーティン・ジンク(ドラムス)が揃う。

 ライヴは「pinngorpoq(グリーンランド語なので読めない)」から始まる。配信された音源よりも迫力あったし、音源を聴いたときに感じた「コールドプレイみたい」というのも薄まっていた。基本はポップで丁寧なアレンジではあるけど、ところどころ荒削りなところが顔をだす。

 日本語で感謝を述べ、当日の朝に相撲部屋で稽古を見学したことを英語で語るなど、お互いを知ろうとする姿勢も好感。グリーンランドにあまり馴染みがないと思われるお客さんたちに対して果敢にも手拍子を求めたりしていた。真っ直ぐな姿勢にお客さんたちも拍手で返す。

Ice Station グリーンランド語の歌だから何をいっているのかわからないけど、ハーモニーの美しさと演奏の熱が伝わる。これで覚えやすいフレーズを連呼する曲があればなぁと思っていたら、そういえばあった。「Ai,Ai」ではサビが「アイアイー」と歌うので、声が頭に入ってくる。ここでクリスチャンが客席に合唱を求めた。フロアから戸惑いながらも声を上げてちゃんと形になった。ここまでもっていく彼らはすごい。約1時間の演奏でしっかり記憶に刻み込んだ。

 そして15分くらいのセットチェンジのあと、まずカート・ブロック(ギター)、スティーヴ・ウイン(ギター)、スコット・マッコイ(ギター)、ピーター・バック(ベースのちギター)、リンダ・ピットモン(ドラムス)が登場する。歓声が大きく上がる。

Ice Station まずは、スコットとピーターが参加しているザ・マイナス5の「ゼア・イズ・ノー・ミュージック」から始まる。途中からマイク・ミルズ(ベース、ギター)も現れる。ステージにずっといたのは、スティーヴ、スコット、リンダであとは曲によって楽器を交換し、ステージ脇に退くこともあった。大人の余裕というか、カートは見た目かなりおじさんなんだけども、元気に飛んだり動き回っていた。対照的にピーターは非常にクール。うつむいていて、体調でも悪いのかと思うほどだったけど、時折口を閉じたままニッコリしていたので楽しんでいるようだ。

 それぞれ自分たちの曲の他に、カート以外のメンバーが参加しているベースボール・プロジェクトも数曲演奏された。名前の通り野球をテーマにしたバンドで、歌われる内容も野球についてである。客席に日本ハムファイターズのユニフォームを着た人がいて、リンダが「ダルビッシュがいた」と指摘してからダルビッシュについてメンバーたちのお喋りが始まっていた。アメリカにはジョン・フォガティの「センターフィールド」やジョナサン・リッチマンの「アズ・ウィー・ウォーク・トゥ・フェンウエイ・パーク・イン・ボストン・タウン」など良質な野球ソングがあるけど、それを凝縮したようなものだ。曲調はティーンエイジ・ファンクラブやウィルコ(スコットとジェフ・トゥイ―ディは一緒に仕事したことある)を思わせるギターを中心にしたロックだ。

Ice Station 歌詞もメンバーたちそれぞれのヒーローである選手についてのもの。スコットが「サンフランシスコ・ジャイアンツの曲、読売ジャイアンツじゃないよ」と演奏された「パンダ・アンド・ザ・フリーク」ではおそらく歌詞を変えて「オーサダハル」という名前も登場した。大人たちが大好きな野球について伸び伸びと歌っている姿は、『はだしのゲン』の中沢啓治が大好きな広島カープのことだけを描いた傑作『広島カープ誕生物語』を読んだときの爽快感と重なるところがある。

 本編最後はR.E.M.の「ドント・ゴー・バック・トゥ・ロックヴィル」で締め、やっぱりこれが目当ての人が多かったようで大いに盛り上がった。そして、アンコールに応え、3曲。さらにもう1回アンコールに応えステージに戻って盛り上がったのだった。

Ice Station

写真は2月9日公演のものを使用しています。

–>フォトレポート

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Photos:
Masahiro Saito

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Text:
Nobuyuki "Nob" Ikeda
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