アウトサイドヨシノ (outside yoshino, 吉野寿) @ 熊谷 モルタルレコード 2017.01.15

親密感と緊張感のコントラスト
フォトレポート @ 熊谷 モルタルレコード 2017.01.15

outside yoshino
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 会場のモルタルレコードは、埼玉の熊谷駅から徒歩5分ほどのところにある。1階がCDやグッズなどを販売する店舗で、2階はイベントスペース。店長の山崎さんはライヴの企画も手掛けており、音源ダウンロードのみでは得られない、音楽とのリアルな出会いを提供している。ツイッターや公式サイトでライヴのスケジュールはアナウンスされるので、気になるライヴがあったら、ぜひ訪れてみてほしい。居心地のよい、木造の空間で聴く生演奏は、ライヴハウスとは異なる素朴な味わいがある。

 チケットが早々にソールド・アウトしたこの日。地元と、近隣の都県から集った観客が板張りの床にギッシリと座り、イースタンユースのギター/ボイス担当、吉野寿のソロ・プロジェクト、アウトサイドヨシノ(outside yoshino)のライヴの開始を待っていた。吉野がここで演奏するのは、2015年8月以来である。

 2017年初めてのライヴ、まだ窓から陽の光が差し込む15時開演ということもあり、ステージに登場した吉野の第一声は「あけましておめでとうございます」。「変な感じだね。明るいっていうのが、また変な感じなんだね。村の寄り合いみたいな。時代が時代なら、ここで血判状押して、百姓一揆みたいな感じになってますけれども」と、場の雰囲気を語る。

 ギターで余韻たっぷりにオクターブを響かせ、いつも1曲目に演奏されることが多い「片道切符の歌」からライヴは始まった。板張りの床にふみ鳴らす足音が、観客の身体にダイレクトに響く。ソロとイースタンユースの曲を織りまぜながらライヴを進め、入魂のギターの音色と歌声で、観客を引き込んでいく。歌に心を奪われるあまり、曲間の飾らないMCとのギャップにイマイチついていけない様子の観客に向かって、「固い。全然固い。ダイブするか?」と語りかける場面もあった。前半のクライマックスは、絞り出す叫びが鬼気迫る「ナニクソ節」。そして、「わかってもらえるさ」「いい事ばかりはありゃしない」のRCサクセションのカヴァー2曲で締めた。

 後半は、冴える冬の空気を象徴するように「東京快晴摂氏零度」から再開。イースタンユースの代表曲の中に、小谷美紗子の「眠りのうた」と、西岡恭蔵の「君の窓から」のカヴァーが胸に染み渡る。「念力通信」以降、「こっからが地獄だからね」と語って吉野の歌とギターはさらに凄みを増し、アンコールの「ズッコケ問答」と「街の底」が終わると、盛大な拍手が沸き起こっていた。

 開場時から吉野のセットの後方の壁には、A4サイズほどの紙にプリントされた、シカゴ・ブルースの父と称されるギタリスト、マディー・ウォーターズの写真が貼られていた。吉野は「夜の追憶」の演奏前に「あの写真、実はここにも貼ってあるって知ってた?」と、その写真が吉野の正面の鴨居の上にも貼ってあることに触れる。写真についてそれ以上の言及はなかったが、種明かしをすれば、吉野が気に入ってスマホに保存していたマディー・ウォーターズの画像を、当日のリハーサルの時に山崎さんがプリントしてあげて、壁に貼ったものなのだった。

 ヴィンテージ感あふれる会場の雰囲気。お気に入りの写真を気軽に自室に貼り付けたような、マディー・ウォーターズのプリント。セットリストを決めずに次の曲をその場で選んでいく、ソロライヴのスタイル。徐々に暮れていく、大きな窓から差し込む自然光。日が暮れて、裸電球の光に浮かぶ、吉野の存在。それらが醸す、吉野と観客が一対一で向き合うような親密感と、しかし決して馴れ合わないピンと張り詰めた緊張感のコントラスト。年明けだからといって特別なことはない代わりに、観客は一瞬一瞬をかけがえのない時間として、胸に刻んだのだった。

— set list —
片道切符の歌 / わたしの青い鳥 / 青すぎる空 / 月の明かりをフラフラゆくよ / ファイトバック現代 / ナニクソ節 / わかってもらえるさ / いい事ばかりはありゃしない / 東京快晴摂氏零度 / 街はふるさと / 故郷 / 眠りのうた / 君の窓から / 念力通信 / 夜の追憶 / 夜明けの歌 /

— encore —
ズッコケ問答 / 街の底

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Photos:
Keiko Hirakawa
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