イースタンユース (eastern youth) @ 渋谷クラブクアトロ 2017.04.26

世界はきっと、素晴らしい
テキストレポート「世界はきっと、素晴らしい」 @ 渋谷クラブクアトロ 2017.04.26

eastern youth

 平日にもかかわらず、早い時期にソールド・アウトしていた、イースタンユース主催の「極東最前線」。ゲストのクラムボンが演奏を終えたステージ転換中は、満杯のフロアを移動するのもやっとだった。20時を過ぎ、フロアが暗転。ザ・クラッシュの「ハルマゲドン・タイム」が流れ、メンバーが登場した。観客の期待が満ちるなか、重厚な響きとともに、1曲目の「テレビ塔」が始まる。田森篤哉(Dr)の迫力と堅牢さを兼ねそなえたドラムと、それに伴ってなめらかに、しなやかに歌う村岡ゆか(Ba)のベースに乗って、吉野寿(G/Vo)の魂のこもったギターの音と絶叫が空間を切り裂く。

 続けて、吉野の掛け声とともに「夜明けの歌」。アンコールで演奏されることも多いこの2曲が冒頭で演奏された、厳かな凄みを感じる序盤。アウトロが終わりきらないうちに、フロアからは感嘆に満ちた拍手が送られていた。「鳴らせよ 鳴らせ」では豪快なリフが空間に大きなうねりを生み、バンドが放つ莫大なエネルギーが空間を満たす。

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「今日はソールド・アウトだそうで、近年にないことでございます。これもひとえにクラムボンの皆様のおかげでございます。ありがとうございました」

 かしこまった様子でお礼を言う吉野に、フロアから笑いと拍手が起こる。「郁子ちゃんに初めて会った時は、すごい前なんですけど、酒場で会ったんですね。酔っ払って、泣きました。郁子ちゃんを観て泣いたわけではないんですけど、悲しい話をして泣いてね。お友達の射守矢君と二人でおいおい泣いて、それを目撃されたという恥ずかしいことがありまして。あれから、僕は泣いてませんからね」とクラムボンの原田郁子(Vo/Key)との初対面のときのことを語る。「我々を初めてご覧になられる方も、3曲ほどやりましたけれども、ここからますます地獄でございます」と、吉野はクラムボンがお目当ての観客にも語りかけて、フロアに笑いが起こる。

「月影」「青すぎる空」で、フロアの高揚は早くも最初のピークを迎えた。「月影」ではギターが、「青すぎる空」ではベースが奏でるイントロの1音目のみで大歓声が返ってくる。フロアが揺れ、前方ではたくさんの拳があがっているのが見える。どちらの曲も、コーラスは観客の歌声が盛大に響いていた。

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「東京の桜の花は、もうすっかり散ってしまいましたが。桜が咲くと、嬉しいって言う気持ちよりは、なんだか悲しくてね。見るもの全て、スローモーション」

 吉野が言い終わるや否や、底から湧き上がるような「うおおおおおおっ」という歓声。「スローモーション」と「路傍の影」は、爆発的に盛り上がった「月影」と「青すぎる空」の後だからか、丁寧に歌われる情景と、美しいメロディーが際立って感じられる。惜しみない拍手が送られたあとは、吉野がかき鳴らすギターの不穏な音色のなかから「黒い太陽」のフレーズが現れる。フロアにも緊張が走り、音の強弱に呼応した反応が返ってくる。吉野の歌、表情、動きは研ぎ澄まされ、一層凄みを増す。村岡と田森も、タイトかつ巧みにメリハリを効かせたプレイで聴かせる。掴んだ観客の心を、決して離さない中盤だった。

 そのままこの日2度目のピーク「踵鳴る」へ。フロアからの大合唱とともに音塊が疾走していく。「地図のない旅」の、ラウドかつどっしりとしたリズムに乗って歌われる、不屈の精神も胸を打つ。

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「緊迫した毎日が続いております。血の気にまかせて突っ走るのは、若さの特権なんでしょうかね。肩をいからせて、眉を吊り上げて、此処一番ナメられたら終わりだ。先手必勝。喧嘩の極意は先手必勝だよ。握りしめたビール瓶、『喰らえ!』と打ち下ろしたこともございます。その代償は決して安いものではありませんでした。ひでえ目にあった。引き返せない線ってどこなんだろうなと。常に自分にブレーキをかけて、ブレーキをかけながらアクセルを踏んだりとかして、もう何が何だかわかりませんが、それでも、何回だってやり直す」

 吉野の独白から、「矯正視力〇・六」。情感がこもった歌い出し、鮮やかに駆け抜けるサビ、間奏の狂おしい轟音、最後には村岡のコーラスが加わって輝きを増すメロディー。とてもドラマチックだ。

「本当に今日は平日なのにこんなにたくさんの人にお越しいただいて、本当になんて言うんですかね? 身にあまる光栄、そしてありがたいお言葉をたくさんいただきました。……殺意を感じました。誉め殺しという言葉を知っていますか? 殺されるんだと思います」

 クラムボンがライヴ中にイースタンユースへ向けた最大限のリスペクトに対して、誉め殺しだと答える吉野に、観客は爆笑。本編最後は「街の底」。「生きてる!」という吉野の渾身の叫びとともに、観客からもこの日一番の大合唱が空間に響き、最高潮の盛り上がりがやってきたのだった。アンコールでは、いつもどおり村岡にMCが振られた。

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「こんばんは、みなさまお集りくださいまして、ありがとうございます。初めての方がいっぱいいらっしゃると思うんですけど、1年半くらい前からイースタンユースでベースを弾いています。がんばります。もう春なんですけど、今年初めての極東最前線で、みなさま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 吉野に「終わった? モアー!!(=もっと喋って)」と声をかけられ、「今年の目標は、ピック弾きをようしないので、できるようになりたいです」と、真面目に今年の抱負を付け加える村岡。フロアからはもう4月だけど……と、安定のぎこちなさに笑いが起こりつつ、あたたかい拍手が向けられた。

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 アンコールでは「街はふるさと」、ダブル・アンコールは「素晴らしい世界」が演奏された。ダブル・アンコールの演奏前に、吉野が語る。

「『40超えてワクワクできるっていいよね』って、さっき(クラムボンの)ミト君が言ってましたけど、それは、本当にそう思いますよ」

「楽器が上手いとかさ、すごい曲が作れるとか、そういうのは本当にそのとおり、才能だと思うんですけど。一番大事な才能っていうは、アホだってことなんじゃないかなと思うんですよ。ヤッター! よーし! なんだこりゃ、でもヤッター! と思えるうちは、俺なんか全然生きていけると思っていますよ」

 歓声に沸くフロアに向かって、「いま、『ノリでイエーイって言っちゃったけど、そうでもないと思うけどな?』(と思う人は)……それは年老いていますよ」と言いつつ、

「大丈夫。それにしたって、こんなポンコツバンド主催のライヴにみなさん来てるんですから。世界はきっと、素晴らしいよ」

 このときフロアを包んだ拍手は、「素晴らしい世界」のイントロのリズムに合わせて、自然に手拍子へと変化していった。それはバンドが求めずとも、観客の心のままに鳴っていた。「世界はきっと、素晴らしい」と信じてしまうくらいに、本当に、美しい光景だった。

 次回の極東最前線は7月15日、渋谷クラブクアトロで開催される。ゲストには切腹ピストルズを迎える。3年ほど前、某イベントでの切腹ピストルズのライヴ中、お客さんに混じってモッシュをキメていた吉野。ついにこの時がきた! と言うべき顔合わせである。5/7(日)まで、公式サイトでチケットの先行予約を受け付けている。

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–>イースタンユース(フォトレポート)


— set list — (eastern youth)
テレビ塔 / 夜明けの歌 / 鳴らせよ 鳴らせ / 月影 / 青すぎる空 / スローモーション / 路傍の影 / 黒い太陽 / 踵鳴る / 地図のない旅 / 矯正視力〇・六 / 街の底

— encore —
街はふるさと

— encore 2 —
素晴らしい世界

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