定例 : これを見逃すな! – Isis(アイシス)

「音の粒子までもが見える思慮深き世界へ」
コラム 定例 : これを見逃すな!「音の粒子までもが見える思慮深き世界へ」2010.02.23

 根底にあるハードコア精神を拠り所にしながらも、音響、ミニマル、エレクロトニカ等々の様々なジャンルをストイックに吸収し、極めて前衛的なヘヴィロック・バンドとして名を馳せる、アイシス。轟音と叙情のコントラストを塗りわけて、深遠たる世界を緻密に造形していく彼等が、いよいよ6度目となる来日を果たす。

 去年、2年半ぶりとなる傑作の5thアルバム『ウェイヴァリング・レイディアント』を発表。それに伴ったワールドツアーの初日を、ここ日本で行われた奇跡の超轟音イベント“リーヴ・ゼム・オール・ビハインド”で迎え、ヘッドライナーとして思慮深き世界観と並外れた孤高のパフォーマンスで数多のファンを魅了したのは記憶に新しい。奇天烈な爆音を放ち続けたサン O)))の後、アイシスで味わった衝撃と感動は、未だに僕の心で蒼い炎を放っている。

 静と動の深い交歓による激しくも大らかなグルーヴ、驚異的なダイナミズムが最大限に増幅され、息づく音と音の隙間や人々の呼吸、空気の流れさえもを完全に掌握し、意識の根底から揺さぶりをかけるアイシスのライヴは、”音の粒子までもが見える”といわれるほどの有機性を見せつける。時には”神がかった”とも形容されるほどの圧倒的なパフォーマンスは至福と戦慄の両方を確かに味わうことができるのだ。トゥールやモグワイを始めとして、リスペクトする声が絶えないのも彼等のライヴの凄さを物語っている。

 僕自身も、アイシスを初めて見たときの感覚を忘れることができない。思い出せば、約3年前の2007年1月の彼等自身4度目となる来日ツアーで初めて見たのだが、そのときは2枚のCDを聴いてもあまり音楽的に理解はできずに、”音の粒子までもが見える”ってのはどんなライヴなんだ?という興味だけで足を運んだのをよく覚えている。けれども、人がとても少なかったこともあり、名古屋クアトロの最前で見ることができた彼等のライヴは、これまでにない感覚を五感にもたらしてくれた。黒服をまとったイカツイ男達がシリアスな佇まいで、丹念に音を重ねて壮大な音世界を造形していく様は、本当に圧巻で、凄まじいエネルギーに満ちていた。そして、このライヴを体感したことがきっかけで、僕はインストやポストロックなどと呼ばれるジャンルに飛び込んでいくことになる。ゆえにアイシスは、僕の音楽観の幅と深さを広げてくれたバンドとして、特別な存在のひとつなのだ。

 しかし、正直なところ、アイシスの知名度は少し高まってきたとはいえ、まだまだ。名前を出したところで同名のトヨタの車の方になってしまう。それでもなぜ、かつてフジロックに出演したり、今回で6度目となる来日を果たせるのかは、彼等のライヴにそれだけの価値があるからに他ならない。絶対に現場で体感することで新しい何かが見えてくるし、感じられるのだから(個人的にはモグワイとかモノ等にもそのように感じている)。

 なお、今回の来日公演に先立つ形で、長らく廃盤扱いになっていたアイシスの初期4作品が、紙ジャケット/リマスター仕様で再発されている。アートワークと色合いを生かすべく、それぞれの作品によって紙質を変え、さらにはボーナストラック&映像を収録。徹底してこだわった内容に仕上がっている。悲哀と悲壮の深みから灼熱のマグマの如し激情を轟音に乗せて吐き出す2ndアルバム『オーシャニック』、神秘と温もりの色合いを増したメロディと轟然と地を揺らす重厚なサウンドが生み出す壮大な世界観にただただ呑まれる3rdアルバム『パノプティコン』は、彼等の中でも特に評価の高い作品なのでチェックしてみてもらいたい。

 また、共演にはアメリカジョージア州出身の4人組、バロネスが務める。獣性の中に存在する豊穣な叡智、鍛えられた強靭かつテクニカルな演奏力による深淵な音楽性をベースにしながら、荒くれな突進力を全面に出す激烈ヘヴィサウンドで人気を集めている新鋭。ヘヴィロックに、メタルやハードコア、ブルース、サイケといった多彩なフィーリングを加味させ、プログレ並の緻密な構築性のもとでダイナミックに進行させていく様は圧巻だ。昨年、発売された2ndフルアルバム『ブルー・レコード』は、著名なHR/HM誌のみならず、アメリカのピッチフォーク・メディアにおいても2009年のベストアルバム50にサン O)))と並んで、ヘヴィロック系では数少ないチャートインを果たした作品となっている。年間200本を越えるというとてつもない本数で鍛えられたバロネスのライヴは、間違いなく注目だ。

 ポストメタルの最先端を突き進むアイシス、亜種なヘヴィ・ロックンロールで存在感を見せ始めたバロネス。この2バンドがぶつかり合うツアーは必見。興味を持ったら、是非とも現場で体感してほしい。

Isis 『TOUR IN JAPAN 2010』
Special Guest : BARONESS (バロネス)

3月3日(水) 心斎橋クラブクアトロ
3月4日(木) 名古屋クラブクアトロ
3月6日(土) 渋谷オーイースト

詳細はこちらでご確認ください。

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Text:
Takuya Ito
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