吉野寿 (eastern youth) インタビュー「個を抑圧するもの。それに対して、あくまでも個で抵抗する。それがパンクなんじゃないの?」

Part 3:「生まれてすみません」なんて言わねえからな
インタビュー:「個を抑圧するもの。それに対して、あくまでも個で抵抗する。それがパンクなんじゃないの?」Part 3: 「生まれてすみません」なんて言わねえからな 2017.10.01

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――「ソンゲントジユウ」はレコーディングの段階では、「13」というタイトルが付けられていました。「13」とはどういう意味でしょうか。

「冗談じゃねえんだよ、俺には憲法13条があるんだよ、という気持ちで。でも13じゃ説教くさいかなと思って」

――日本国憲法第13条ですね。どういう条文か読み上げてみます。

 



 
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 



 

「最高です。よく言った。お前らよく言ったと思って、13で行こうかなと思ったんですけど、それもなんか大仰だなっていうか。『ソンゲントジユウ』も相当固いけど、13条っていうと、またそれに縛られてくるから。でも憲法13条の喜びっていうか、やったぜ、それだよ、俺には13条がある、そういう気持ちはありました」

――1曲目から順番に曲作りをされたとおっしゃっていましたが、最初から13条をモチーフにする構想があったのですか。

「曲自体は、この曲の前にもう一曲あったのよ。1曲目を作りたくて作ったんだけど、これは1曲目じゃねえなって。もう一回、みたいな感じで、2曲目くらいにできた。なんせアタマを据えないと、アルバムは作れないんですよね、そこから繋げていくから。歌詞は後だけど、イメージとしては『13』ですよ。『生まれてすみません』なんて言わねえからな、みたいな」

ー「ソンゲントジユウ」以外の曲も、歌の録音の時に、アルバム全体的に、さらにストレートな歌詞になっているのが印象的でした。表現が、より核心に近づいていると思いながら聴きました。その点は意識されたのでしょうか。

「ラップのアーティストでクリーム・クンベルさんという方がいて、『RAPをするだけ』って歌があって、自分の生い立ちをずっと歌うすげー歌なんだけど、その中に、『何が言いてえかわからねえ 心にズバッと伝わらねえ 音楽が大量廃棄され 意識レイプされる日本人』という一節があって、そうですよね、と思ってたんですよ。詩的な表現とかさ、そういうものでぼかしをかけるより、一発で表現できないもんかなーと。要するに何を言いたいのか? 贅肉を全部削いで、きわきわにピントを絞りたかった」

――そうすることで、言い逃れができなくなります。退路を断って強い表現をすることは、怖くないですか。

「それをやらないと意味ねえんじゃないかなって思う。自分が表現する上でさ。毎回そうだけど、今回は特にこれで最後なんじゃないかなって思ってやったんですよ。死ぬかもしれないし、歳も歳だし、こんな売れないバンドマンだし。機会が次与えられるかもわからないし、いろんなことが不安定ですから。最後になんか言い残すことはないかっていうとさ、なんとなくぼんやりしたことは言いたくないじゃない。はっきり言いたいこと、俺はこうなんだ、こういう風に生きてるんだってことは、共感してもらえるかどうかってことは二の次で、俺はこうやって生きてきた。こういう人間がいるんだ、っていうことをカタチにしておきたかった。そんなところですね」

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――7月の「極東最前線」では、新譜について、「みんな、聴かないで」とおっしゃっていました。

「共感は得られそうにないなあっていうのが、予感としてはありますよ。そもそも、共感を前提としていないから。ただ、自分の一番大事なところを自分なりに抽出したつもりです。腹ぶっ割いてお見せしていますけど、そういうのって概して聞きたくないことじゃない? 本当の話なんか聞きたくないじゃない。他人の真面目な話とか、生き死にの話とかさ。だからそれを聞かされる方も気の毒だなって気持ちはあるんですよ。ただ、俺は言うけどな、だから耳塞いどいたほうがいいよって感じ。本当の話だから、あまり共感できないと思うよ。うるさいとかさ、耳が痛いとかさ、そういうことも含めて、BPMから何から全部含めての、本当の気持ちだから」

――曲調で言えば、「明けない夜はないのだ」は、イースタン史上初とも言える、ソウルっぽいイントロに驚きました。でもちゃんと、イースタンユースらしい曲になっている。

「そういうのやりたかったんですよね。あの感じ、俺の中では『やったぜ!』と思ってやってるんだけど」

――オルガンは、村岡さんにイメージを伝えたら、ああ弾いてくれたんですか。

「その場でだけど、『ルパン三世とかでペローンって入ってるの、あるじゃない。ああいうのやって』『カーティス・メイフィールドっぽい感じ』とかって伝えて。『こうですか?』そうそうそう、いいねって」

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――間奏のマッドな感じも、どうしちゃったの? って思いながらも、とても面白いです。

「やりたかったんですよ。今できること全部やっておこうと」

――ハードロックっぽい「おとぎの国」も驚きました。3月ごろ、グランド・ファンク・レイルロード(GFR)のライヴ盤(『1971』)が、カッコいいとおっしゃっていたのを思い出しました。

「『1971』、あれ、メチャクチャいい。MC5とは違う良さ。MC5はギラッとしてるけど、GFRはカラッとしてる。一時期俺の中で、ハードロック・ブームがきたんです。ディープ・パープルとかACDCは昔から好きだし。そんなに詳しくないですけど。ディープ・パープルの有名な曲、『スピード・キング』とか『バーン』とか、最高にいいね。ギターのハモりとか、キーボードとの掛け合いとか、最高にバカバカしくて、すごくかっこいい。ハイトーン・ボイスとか。『こんなに必要なの? このハイトーンは?』って。MC5は好きですね。『キック・アウト・ザ・ジャムズ』は、何回聴いても、死ぬほどいい。歌詞は何を言ってるかわからないんですけど、かなりポリティックな内容だということを聞いたことがある。『Are You Ready To Testify?』とか言ってるから。情熱的でぶっ壊れてて、あんなエナジーのあるバンド、他にはないですよね、あんな風になりたいですね」

「フガジの『アーギュメント』ってアルバム、いろんな曲が入ってるんだけど、俺の好きな、ちょっと速い曲の中に、『ハードロックっぽいな?』というニュアンスを感じたんですよ。それこそMC5っぽい。そういうのあるんだ、この人たちの中に、って思って。音の感じとかもハードロックっぽくて、いいなと思ったんですよね。そういうのがどっかにあったんだと思う」

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――吉野さんの引き出し、まだまだあると思いました。火事場の馬鹿力を出してきたなと。

「浮世の共感は置いといて、こんなことやったらウケるんだろうなとか、そういうことはおいといて、やっぱ一番やりたいことやっといたらいいんじゃないかなーっていうことに絞ったんです。自分のものにしたかったんですよ、自分の趣味を。今までなかなかできなかったんです。今までもずーっとそういう音楽聴いてきたんですけど、なかなか自分のものにならなくて、あっためてきた。異形なものをどんどんくっつけて、おかしなことになっていくっていうのは、音楽のいいところなんじゃないかな。パンクと演歌と黒っぽさ、とか、どっかに共通項が必ずあるし、何より自分のフィルターを通してるわけだから、もっとぐっちゃぐちゃになってもいいんじゃないかって、俺は思ってる。なんでもくっつけちゃう。それでいびつなものになっても、その人っていうひとつの統一感は必ず出てくるし、そこに味が出てくると、俺は信じてる。臆せずやりたいですよね」

――メンバー・チェンジで心機一転したと同時に、「イースタンユースはこういうものだろう」というイメージから、自由になったんだなと思いました。イメージを気にしていないのはわかるんですけど。

「意外と気にしますよ。こんなことやったらみんな喜ばないかなとか、いままでどおりの『らしい』ものをやったほうが喜ばれるのかなーって思ってはいるんだけど、そう言われてもなあ、って感じ。これが今の俺たちなんだよなあって、そんな気持ちです」

――イースタンユースのアルバムのラストには、毎作アルバム全体を象徴するような曲が入っていました。前作『ボトムオブザワールド』の壮絶な「万雷の拍手」に対して、ミドルテンポで明るいトーンの「おれたち」を聴いて、泣きそうになりました。このエンディングで終わってくれてよかったし、いままでのアルバムのラストを飾る曲の中で、いちばん開けていると思いました。転調後のコーラス、すごいですね。

「なんかゴスペル感出したかったんだよね。本当はもっと、すごい感じにしたかった。コーラス30人くらいで『ワーッ』ってやりたかったですよ。『おれたち』って多様性ってことで、俺たち3人ってことじゃないよ」

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「全部肯定する。それが街だよ。俺は街が好きなんだよ。田舎の人情なんか好きじゃないんだよ。『これだけやってやったんだから、これだけ返してくれ』みたいな貸し借りの上に立ってる人情なんて好きじゃないんだ。都市の人情は、お互い様なんだ。田舎だってお互い様だっていうかもしれないけどさ、人が少ない分、ルールを逸脱すると、村八分になっちゃう。でも、都市は収集つかないから、グッチャグチャなわけ。一見冷たいんだよ。でも放っておくあったかさもある。しかも、意外とスッと手が差し伸べられることもある。東京なんかさ、電車のホームに人がはさまったらみんなで押したり、あったかいよ。でも闇も深い。俺はさ、闇の深さも好きだよ。いいことじゃないんだろうけどさ。それも全部内包して浮き上がってくるものを肯定したい」

「ひとりひとりさ、個人の尊厳と自由のために戦っていますよ。いろんな立場の奴らがいるし、いろんなしがらみや制約や抑圧に自分なりに抗ったり求めたりして生きてる人たちがいるよ。ちょっと駅前に突っ立って、10分くらい見渡してみたって、いろんな奴がいる。そういう『おれたち』ですよ。各々が自分の灯を大事に大事にともしてさ、歩いていくんですよ。それで一緒にやっていこうよ。それが街だし、社会だし。社会の歌を歌っているわけではないけど、それが個人でもあるから。あんな人、こんな人、どうにかこうにかやっていこうぜって言う意味での『おれたち』」

――ことさら「俺たち仲間だぜ」と言わなくても、吉野さんが歌う、尊厳と自由のために戦うというテーマは、個人の属性を超えて、私たちが生きていく上での大前提として共通するものです。

「今回は歌の中にみんなが自分にも共有できるドラマ感、例えば電車が出てきたり、コンビニが出てきたり、そういった描写は一切ないから、その辺の共有感はないのかもしれない。とにかく個人っていうことをことさら言いたかった。今の世の中、個がなんだ、国が滅んだら、個も無いんだ、みたいなニュアンスを感じることも多いけど、逆でしょうが。個があるから国も社会もあるんでしょうが。入れものだけあって、中身がなかったらどうするんだ。文脈が反転してるっていうか。子供の頃から、自分を主張するとワガママ言うなって抑えつけられたり、しくじったら自己責任、とかさ」

「別に社会のせいにしてないけど、そしたら俺の好きなようにやるわ。そうやって生きてきたし。だからこんな大人になっちゃったけど、そこはハッキリさせていかないと。あくまでも個ですよ。個でいいんだってことは言い続けないと。叱られたり、いろいろ考え直したり反省したりってことは必要だけど、個そのものが悪いことではない。個が否定されるべきではない」

「みんなが言ってるから、正しいわけじゃないのさ。自分で正しいってことを考えて、何が正しいのかなってことを少しずつ構築していって、それで話し合って、今何が公正であるのか、今何が必要なのか、それはあくまでもそれぞれの個を保つためにあるのであって、公の体裁を保つためであるべきではない、と思う。個を抑圧するもの。それに対して、あくまでも個で抵抗する。それがパンクなんじゃないの? パンクの根幹ってそういうことなんじゃないの?」

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――個の尊重と自由が、街という場で包括的に肯定される。吉野さんが一貫して歌いつづけていることは、電車やコンビニといったわかりやすい共通のキーワードがなくても、アルバムのリスナーと根源的な部分で繋がっていくと思います。

「わかってくれる人たちを信じようと思う。いなきゃいないでしょーがないけど。後悔してないし、手応えを感じているし、良し悪しもわかってるつもりだよ。自分なりにいいプレイができてると思うから、大丈夫。技巧がどうかっていうのはわからないけど、プレイの呼吸はすごくうまくいっている。そこが一番大事なんじゃないかな。何はともあれ、リスタートできてよかったです。瀕死の状態に、岡山から女神がやってきた。村岡さんがいなかったら、いま存続していない。今は楽しいですよ。田森も楽しそうにしてる。今、すごくベストな状態ですよ」

――ベストな状態で10月からスタートする全国ツアー、楽しみにしています。来年はバンド結成30周年ですね。ファンとしては、盛大にお祝いしたいタイミングですが……。

「来年はのんびりできるなー、と思ってる。村岡さんにも、『来年のんびりですから、年末まで頑張って』って言いました。身の丈でいきましょうよ、身の丈でね。座右の銘は、『身の丈でいこうよ人生は』ですから」(終)

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極東最前線/巡業2017~おれたちのSONGentoJIYU~

 
10月21日(土) 千葉 LOOK
10月28日(土) 札幌 cube garden
10月29日(日) 弘前 Mag-Net『 弘前Mag-Net20周年記念』
11月 4日(土) 京都・磔磔
11月11日(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
11月12日(日) 新潟 CLUB RIVERST
11月25日(土) 岡山 ペパーランド
11月26日(日) 福岡 DRUM Be-1
12月 2日(土) 名古屋 APOLLO BASE
12月 3日(日) 大阪 umeda TRAD
12月 9日(土) 渋谷 TSUTAYA O-EAST

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