モグワイ (Mogwai) – 『スペシャル・ムーヴス / バーニング (Special Moves / Burning)』

破壊的であり、芸術性をもまとった初のライヴ作品
CDレヴュー 『スペシャル・ムーヴス / バーニング (Special Moves / Burning)』 2010.09.10

 1997年に発表した珠玉のデビュー作、『ヤング・チーム』でシーンに登場して以降、10年以上に渡ってポストロックの重鎮として君臨し続けているモグワイ。耽溺するような美しい静寂から荒々しい轟音ギターが破格の音圧へと導く壮大なサウンドスケープで、聴くものを圧倒してきたことは今更言うまでもないだろう。その結果、トータスなどとは別スタイルのインストゥルメンタル・ロックのひな型を作り上げて、多くのフォロワーを生んできた。現在でもその静と動のコントラストを幹としながら、サウンドの幅を広げており、シーンになくてはならない存在となっている。約1年ぶりの来日となった、先日のメタモルフォーゼ 2010のステージでも貫禄のライヴを披露し、多くの人々の感動と昂揚を誘っていた。

Mogwai 本作はモグワイ初となる公式のライヴCD+DVDとなる(かつてはこんな作品もリリースしているが)。当初は3月に発売されるとアナウンスされ、次は6月、終いには8月末にようやく最終決定と、延期に次ぐ延期でファンたちをやきもきさせてきた中でのリリース。しかしながら、発売前の7月・8月には吉祥寺にて爆音レイトショーという名目でこのDVDの先行上映会が開催され、大きな盛り上がりをみせたそうだ。そのことからもモグワイの音楽に対しての大きな渇望、そして待ち望んだライヴ作品に対しての期待が伺える。

 このCD/DVDは、共に昨年4月末に行われたブルックリンの3公演を基にして制作されたもので、収録曲や曲順を微妙に変えてCDには全11曲、DVDには全8曲を収録。彼等の音楽はライヴでこそ初めて真の世界を現すといっても過言ではないのだが、本作ではその片鱗が味わえるものになっている。途方もない破壊力のディストーション・ギター、美麗なるアルペジオと鍵盤の調べ、正確無比なリズム・・・etc。優しく胸打つ叙情的なメロディ、その後で全身に恐怖を感じるような凶暴なノイズが襲いかかる静と動のダイナミズムは、オリジナル作品よりも凄まじいレベルへと引き上げられている。如実に増す美しさと破壊力、そして凶暴性。それらは、甘美な陶酔と臨界点を超す昂揚を確実に運んでくる。スタジオ作品とライヴがかけ離れていることをこのライヴ作品で理解できると思うが(他にもアイシスなど個人的にそう感じる)、それこそモグワイが今日まで神々しいまでの存在感を保ち続けている理由だろう。

 目玉となるDVDは、先日レビューしたアーケイド・ファイアやR.E.M.等を手掛け、友川かずきのドキュメンタリー映画も撮影したフランスの映像作家ヴィンセント・ムーンが担当。荒々しい黒と白のモノクロ映像がバンド・サウンドと共振して緊迫感のある、それでいて芸術性をもまとった作品に仕上げている。息を呑むような圧倒的なサウンドスケープもそうだが、肌を刺すような緊張感が伝わってくる迫真の演奏シーンが鮮明に視覚を奪っていくのが本作の醍醐味。それに加えて、単にライヴ映像とするだけではなくNYの街並みや周辺の風景も収められていて、ライヴ・ドキュメンタリー・・・むしろひとつの映画としても完成するんじゃないかと思えるぐらいの作品にもなっている。もちろん、モグワイのライヴが凄いというのも当然あるのだが、映像と音の迫力がここまで魅力的に伝わってくるライヴDVDも珍しいと思う。最後まで眼も心も奪われっぱなしで、ラスト曲「バットキャット」のトリプルギターの狂嵐が終わってエンディングに入ってようやく我に返るぐらいだ。

 また、モグワイの演奏シーンだけでなく、客席のひとりひとりの姿もしっかりと捉えられているのだが、この轟音に対して激しく頭を振っている者もいれば、身を任せて全身で浴びている人、仁王立ちの人、うっとりと恍惚の笑みを浮かべている人、抑えきれなくなって奇声を発する人など様々な反応が見られるのもおもしろいところ。自分も彼等のライヴでは音に身を任せる感じではあるが、あまりの興奮に抑えきれなくなるときは多々ある。静から動への転換によるカタルシス、そして自らが無に還っていくような感覚がやっぱりたまらなく、その何事にも変えられない快感を再び味わいたくて彼等のライヴを追い求めに行ってしまう。それほど魅力に溢れた、また無二たる個性と世界観を示しているので、この作品を感じて少しでも気になった方は、是非とも生でモグワイの轟音を体感してほしいところだ。生だと、この何十倍も凄いから。

MogwaiMogwai ちなみにこの作品の発売に関連して、9月8日には5thアルバムの『ミスター・ビースト』、6thアルバムの『ザ・ホーク・イズ・ハウリング』の2作品がBlu-Spec CD+DVD紙ジャケット仕様で再発されている。よりクリアで奥行きを感じる音が彼等の凄さをさらに引き出しているように個人的には感じるので、気になった方はこちらもチェックしていただけるといいだろう。原点回帰をしつつも、一歩踏み込んだ静と動のコントラストを味わうことができるはず。

 メタモルフォーゼのレポートでも書いたけど、彼等は新作の制作中だそうで来年の頭にリリースする予定だそうだ。そのライヴではポップとも呼べる曲調を巧みに織り交ぜた曲とツインギターとベースのユニゾンで重厚に聴かせる曲を披露していて、新作が余計に待ち遠しくなった次第。それまでは本作で、感動と興奮に何度も包まれようと思う。

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Text:
Takuya Ito
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