モグワイ (Mogwai) @ 伊豆・修善寺サイクルスポーツセンター 2010.09.04

無数の星が瞬く夜空の下で味わう、静寂と轟音
テキスト・レポート – 「無数の星が瞬く夜空の下で味わう、静寂と轟音」 in メタモルフォーゼ 2010 @ 伊豆・修善寺サイクルスポーツセンター 2010.09.04

 今年で10周年を迎えた日本最大のオールナイト野外ミュージック・フェスティバル、メタモルフォーゼに初めて足を運んできた。メタモといえば、テクノ/クラブ系の野外フェスというイメージがあるんだけど、今回はモグワイやジ・アルバム・リーフといったポストロック勢に、当サイトでも大プッシュの65デイズオブスタティック、フジロック’10にもヴァト・ネグロのサポートという形で出演したマーズ・ヴォルタのオマー・ロドリゲス・ロペス、それにジャーマン・ロックの重鎮であるマニュエル・ゲッチングなど、ロック好きにも大きくアピールする豪華な出演者が揃っていたのがその理由。とはいえ、やっぱりモグワイの轟音を野外で浴びるのが一番の目的である。しかしながら、意外と偏狭な場所で開催されていて行くこともそれなりに過酷で苦労した。そしてオールナイトという時間のキツさもあったが、最終的には行ってみて満足するフェスであったことを先に記しておきたい。

 19時過ぎに到着して、まずは会場を色々と探索。その後にオマー・ロドリゲスのステージを観賞し、彼の脳内宇宙を具現化したようなサウンドスケープに度肝を抜かれる。そして続いて出てきたマニュエル・ゲッチングはアシュ・ラ・テンペル時代の名作『インヴェンションズ・フォー・エレクトリック・ギター』を再現した神々しいステージを披露。4本のギターを用いて神話を奏でているようなそのステージは圧巻で、何度も鳥肌が立ったのをよく覚えている。今、思い出しても、あそこで精巧に紡がれた音の波はとても美しい。

 その余韻に浸りつつも、メンバー自らが熱心にセッティングしててちょっと驚かされたモグワイのライヴは23時35分という時間から演奏開始。始まる前からステージ袖で笑顔やリラックスした表情をしていたメンバーを見て、いい予感が頭の中をよぎって仕方なかったが、初見参のメタモも壮大なギターを轟かせた貫禄のステージだった。ライヴはいきなり新曲からスタート。美しいギターの音色に加え、彼等にしてはポップな曲調が織り込まれている感じの曲で、新鮮な印象を与えてくれた。続けざまに「ホーンテッド・バイ・ア・フリーク」、「アイム・ジム・モリソン、アイム・デッド」の2曲で深遠なる叙情の波紋を広げていく。これがまた野外の夜というシチュエーションとあっていて、キーボードの麗しき旋律が夜空に輝く星と重なっていく感じにはとても感動させられた。神秘的ともいえるだろうか。野外でモグワイを聴くのは今回が初めてだったが、うっとりとする美しさが増してて余計に感動が大きかった。「イチカ」においては3分間というコンパクトな時間で圧倒的な静と動のダイナミズムを振りかざし、震天動地の衝撃をもたらす。矜持である轟音がようやくこの曲で炸裂した瞬間には大きなどよめきと歓声が木霊していた。

 今回のライヴは先頃発売された『スペシャル・ムーヴス/バーニング』の収録曲が多かった印象はあれど、中盤にもかなりヘヴィな新曲を挟むことで新たな色彩を塗り重ねる。スチュワートが「新作を来年頭にリリースするよ」とMCで語っていたが、2つの新曲を聴く限りではいつもと少し表情が違うのではないかと感じたのだが果たしてどうなるか。次もまた一歩踏み込んだことをやってきそうな印象ではあるが。その後はメランコリックな旋律が美しい轟音を形成していく「ヘリコン」、鍵盤の麗しい旋律が切なく穏やかに響く「フレンド・オブ・ザ・ナイト」等で一気にドラマ性を帯びていく。そして、ライヴも大詰めとなった頃合いには、いよいよお待ちかねのあの曲がお目見え。そう、モグワイとしての存在意義を改めて打ち立てるかのような必殺の「モグワイ・フィア・サタン」である。圧巻すぎて意識が別世界へ行った、あの時間は”神がもたらした奇跡” そんな気さえしてくるこの曲。究極の次元でぶつかり合って結晶化する5人の音、慎ましい静寂を切り裂く圧倒的な轟の波動と明滅する光に心の底から震えた。サタンの魔力は今回で初体験だけど、あの瞬間のカタルシスは筆舌しがたい素晴らしさが存在するのだと改めて感じた次第である。

 ラストには「グラスゴー・メガ・スネイク」を演奏し、再びトリプルギターがうねりをあげて会場を襲いかかり、全てをまきこむような嵐が昂揚を投げかけて終演。ただ、終わった時点ではまだ規定よりも10分の時間が残っているので、間違いなくアンコールやるだろうなあと思っていたら、本当にそのまま終わってしまったので正直に白状すれば消化不良。さらにいえば、音が予想よりも小さかったことも残念に感じたところである。故に去年のサマーソニック大阪ほど、鼓膜を破る凄まじく強大な轟音と体の内側から細胞を木っ端みじんにしていくような恐ろしい衝撃とまでは至らず。けれども全体的には、メタモルフォーゼというフェスに合った美しくドラマティックなステージで、完成度の高いライヴを披露してくれたと思う。夜空に壮大に響く轟音を前に、何度も鳥肌が立ったし、感動が全身を駆け抜けていた。モグワイが伊豆の闇に放った奇跡的な轟音は数多の人の心に凄まじい衝撃を、そしてうっとりとする恍惚を刻んだはずだ。

— set list —
 
How To Be A Werewolf / Hunted By A Freak / I’m Jim Morrison, I’m Dead / Ithica 27-9 / I Know You Are But What Am I? / You Don’t Know Jesus / New Paths To Helicon, Pt 1 / Rano Pano / Travel Is Dangerous / Friend Of The Night / Mogwai Fear Satan / Glasgow Mega-Snake

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Text:
Takuya Ito
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