POST5 feat. ハンサム兄弟、GRiP、 the blondie plastic wagon @ Shimokitazawa Club QUE (11th May '05)
"想い"を歌にして
The blondie plastic wagonが定期的に行っているイヴェント、"POST_"。「おもしろいことやってるバンドとやりたかった」という企画の5回目に共演するはハンサム兄弟とGRiP。音楽性も見た目もまったく違う顔合わせ。だが、その違いが化学反応をおこして、非常に熱っぽい空間を創りだした。これだからライヴはおもしろい。
「ハンサム兄弟ってどんなバンドなんだ?」。観るのはこれが初めてだったのだが、バンド名だけはずっと気になっていた。まぁ、最初っからホントにハンサムな兄弟が出てくるとは思っていなかったけれど。ステージに出てきたヴォーカルはそんな予測すら軽く裏切ってくれた。修行僧かプロレスラーか!? というみてくれ。調べてみたら、バンド内には兄弟すらいないそうだ... それでハンサム兄弟って... なんてとぼけたバンドなんだ! 最初はキャラクターの濃さに圧倒されたのと、バンド名とのギャップが面白すぎて大口明けて笑ってしまったのだが、聴いていけばいくほど真面目なバンドなのだ、これが。ポップな曲もあればメロディアスな面もあるし、反戦ソングも飛び出してくる。メッセージの熱さはvo.ハンヂのスキンヘッドから吹き出る汗が物語っている。大きな身体を目一杯つかって歌う姿を思ったことがある。「ある意味、これはハンサムなのかも」。

セットチェンジの間にずいぶん女子が増えたな?、と思っていたら、なるほど、GRiPのヴォーカル、ゴンダタケシは正統派ハンサムだ。でも、出す音は意外にもイカつい。突っ走るスピードと厚みのあるサウンド。それぞれの出す音がビシビシ伝わってくるのは、シンプルな3ピースならではだ。とりわけ、大きめのアクションでリズムを叩きだすドラムが目を引く。どうやら、人気の理由は見た目だけではないようだ。
以前、Magのスタッフと「男子より女子の方がいいバンドを見つける目は早い」というような話しをしたことがあった。下北、渋谷あたりのライヴハウスに行くと、女子率が異様に高い、と。ここにいない男達はいったい何を聴いているのだろう? と。GRiPもその典型的な例なのだろう。今は黄色い歓声が大きいけれど、男の目から観ても絶対に感じるものはある。世の男子諸君は今後、ぜひこのバンドに注目して欲しい。
当然トリは今日の主催者the blondie plastic wagon。フロアは前2バンドの勢いで、いい具合に暖まっていた。それに負けじとスタートには持ってこいの曲、"Plastic form"で一気に追い上げを開始した。これまでブロンディのライヴといえば、ファンもわりと大人しく、軽くリズムをとるくらいで静かに聴いている人が多いように思っていた。が、今日は様子が違った。"Just 1 more KISS!!"が始まるとイントロからピョンピョンと身体が揺れはじめる。こんなにお客さんが弾けているのを観るのは初めてだ。最前列で写真を撮りながら、飛び跳ねながら踊っているお客さんに蹴られるんじゃないか、という不安にかられた。だけど、そんなことはいままでにはなかったことだし、それだけ盛り上がっているのだと思えば、うれしい不安ではないか!
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すいこまれるように聴き入ってしまう曲も。ブロンディの歌を聴きながら感じるのは"想いを歌にしている"ということだ。だからこそ、派手なあおりやMCがないのにもかかわらず、こんなにも伝わってくるものがあって、感動したり泣きたくなったりしてしまう。そうやってブロンディの音を感じとっている観客の反応が今度はステージに伝わって、歌に演奏に力を与える。今日はこの相互のバランスが絶妙だった。ライヴはアーティストだけではできないし、観客だけ盛り上がっていてもいいものにはならない。お互いの気持ちが共鳴したとき、そこには非日常的な空間が生まれる。当たり前だけれど、普段忘れてしまいがちな大事なことをこのライヴが思い出させてくれた。
鋭い目つきでギターをかき鳴らし、歌うVo.篠原信夫が本編最後の"LULLABY"では、ふっと少年のような表情を見せる。そんな一瞬を切り撮りたくて、夢中でシャッターを押した。逆に、アンコールの"Lounge"は曲の世界のとりこになってカメラを持っていることを忘れていた。こんなふうに泣きたくなるほどに感情を揺さぶられるから、またthe blondie plastic wagonが観たくなる。
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report and photo by wacchy
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