button 近藤智洋、花田裕之、古明地洋哉
@ 三軒茶屋グレープフルーツムーン(3rd Oct '05)

三色音色
HanadaHiroyuki
grape 「3人ともフラッと遊びに来て唄っていった、そんな感じにしたい」。9月のワンマンの時、近藤智洋がこのイヴェントについてそう言っていた。アコギを抱えて集ったのは古明地洋哉、近藤智洋、花田裕之。飾るものは何もなく、声とギターだけが響いたアコースティックな夜は話していた通りのライヴとなった。

 会場は三軒茶屋にあるグレープフルーツムーン。にぎやかな商店街から少し離れた場所にひっそりとある隠れ家的なライヴスペースだ。その静かな場所がこの日はいつもと様そうが違っていた。入り口から道路の方まで開場待ちの人が溢れているのだ。オープンしてからも、人の列は短くなるどころか次から次へと後ろに伸びていく。このイヴェントを心待ちにしていた人はこんなにいるのだ。開演時間を過ぎてもその流れは途切れなかったけれど、時間も時間、ということで1番手の古明地洋哉がステージに出てきた。

komeijihiroya  前回見たときはバンド編成でちょっと"とんがった古明地洋哉"だったけれど、今回はアコギと自分だけということで、柔らかい雰囲気。優しさと強さを持った声が響き、ダミアン・ライスのカヴァーからライヴが始まると、時間の流れがスローモーションになっていくような気がした。さっきまで入場してくる人や席を探す人で波立っていた空気がぴたっと凪いだような。MCで話しをしているときは、たどたどしいというか、どこか照れくさそうにしているのだけれど、唄い始めると急に発散する空気が変わるのがおもしろい。目に灯がともる、背筋が伸びる、心の扉が開く。そんな感じ。「話す」ことより「唄う」ことで言葉を伝える人なのだと思う。以前、街を歩いているときに古明地さんの曲がどこかから流れてきて、思わず振り返ってしまったことがある。多分、本人とすれ違っても気がつかないのに、歌は無視できなかった。それくらい伝わるものがあるのだ。ゆっくり進んでいったようなライヴだったけれど、終わってみればあっという間。彼が退場した後の時間はまたもとの速度に戻っていた。

kondotomohiro  ざわざわと賑わう人の間を縫うようにして、2番手でステージに出てきた近藤智洋。最近やりはじめた"Colors"という曲からライヴをスタートさせた。これは、ポエトリーリーディング的に様々な色(人)模様が綴られていく歌。じっと聴いていると、歌詞の情景が次々に浮かんでくる。でも多分、今日思いうかべた光景と次に聴いた時ではまた違うんじゃないだろうか? もしかしたら毎回毎回違うかもしれない。人と強く繋がっているときに聴いたら「個」と「個」が交差する瞬間を思いうかべるし、孤独な気持ちで聴いたら、すごく「ひとり」を感じるだろう。そんな深さを感じる詩だった。

 8月からイヴェント、ワンマンと何度か近藤智洋のライヴを観に行っているが、観るたびに良くなるように感じている。声に力がこもって、はっきり前に出てくるし、ずっとやってきた曲のアレンジも少しづつ変えていたりと、次のステージへ向かって進んでいるんだなぁということを見せてくれるのがうれしい。ピールアウトと平行してやっていた頃から振り返れば、もう何度となく弾き語りを聴いている。けれど、一度も同じライヴだったことはないし常に成長を続けているから、それを見逃したくなくて、また会場に足を運んでしまうのだ。後半の"走る風のように、落ちる雨のように"、"Barefoot Diaries"、"恋に落ちたままで"と走った勢いは、近藤智洋の「これから」を示しているようだった。

hanadahiroyuki  シャツにデニムのラフないでたちで、最後にふらりと登場してきたのは花田裕之。誰もが認める大御所なのに威圧的なところはなく、「自然体」という言葉がぴったりな人だ。「こんな大人になれたらいいのに」と見るたびに憧れてしまう。チューニングとの境がないように曲がつづいた始まり方も本当に自然。目を閉じて余裕をもって唄われる歌は、コーヒーや煙草のような優しい茶色の匂いがする。花田さんが醸し出す空気と声が気持ち良くて、このままここで眠れたらいいのに、と思ってしまうほど。実際、こっくりウトウトしている人もいて、(ライヴ中に失礼な! と思うかもしれないけど)その寝顔があまりに幸せそうだったから、ちょっと羨ましくなった。きっと夢の中でも淡々と紡ぎだされるメロディが流れているんだろうな。同じく淡々と話されるMCも一緒に。当然、目をしっかり開けて観ていてもその心地よさは変わらない。お酒片手にどっしり腰を落ち着けて観たい、大人な時間が流れたライヴだった。

 立ち見の人も多かったし、もしかしたら後ろの方は見えづらかったかもしれない。それでも、3つの音は会場中にじわっと染み込んで、各々に届いていったのでは? ギターも声も流れた空気も、三人三様、違った色が見えた素敵なイヴェントだった。

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