Focus On Voice Osaka 2 feat. 篠原信夫 (ブロンディ・プラスチック・ワゴン)、ジョウミチヲ(ダスク)、新井仁(ノーザン・ブライト)、吉村潤、O.A久堀勝也 (ナイルスケープ) @ 心斎橋クラブ・ジャングル (21st Jan '06)
進化するアコースティックイウ゛ェントF.O.V
Focus On Voice大阪2回目。東京で第6回が1週間前あって、同じメンバーでの大阪ツアーだ。あの時の続きが観られる。大好きだった映画のパート2に出会えたときみたいにワクワクする。映画の場合、2作目は勢いが落ちるなんていわれがちだけれど、このイヴェントはそうじゃない。2週連続同じクルーで行動するから、出演者の間にも1つのイヴェントを創る"仲間"のような意識も芽生えてくる。東京では見られなかったセッションをなんらかの形でやるという話しもあるし、とにかく期待しないほうがムリ!という状況で大阪に向かった。
会場は第1回と同じ座敷ライヴハウス、クラブ・ジャングル。入口には開場前から続々と人が集まってきていて、なんだかいいライヴになりそうな予感。
地方にライヴを見に行く楽しみのひとつは、東京ではなかなか見る機会のないアーティストに出会えることだ。今日のオープニングアクトは久堀勝也。Nilescapeという大阪を中心に活動しているバンドのヴォーカリストだ。なんと、今日が弾き語り初挑戦! Focus On Voiceは過去にも何人か弾き語りデビューをさせているから、なんか因縁めいてるなあ、と思う。久堀さんは会場に入ってきた時からぱっと目をひく雰囲気を持った人で、唄い始めるとその空気がより濃くなる。少し緊張気味だったけれど(なんたって「初」ですから!)ストレートな歌声は興味を惹きつけるのに十分。いつかバンドでも観てみたい。もちろんまた弾き語りでも! これをきっかけに活動の場が広がると観る側としてもうれしい。
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このイヴェントの主催者のひとりは空気を震わす歌を唄う。「続きはこの後すぐ!」的な飄々としたトークから突然始まる歌。空気を揺さぶる声。ジョウミチヲのライヴはアコースティックなのにとんがっていて、聴いていると目がどんどん冴えていく感じがする。カヴァーすら自分の曲にしてしまう世界観は、いつ何回みても超オリジナル。この独特の声と雰囲気は、思いっきりハマるか、嫌悪するかどちらかだと思う。「どっちでもいい」という中途半端なものはここにはない。ここまで"強い"アコースティックライヴをやる人はそういるものではないので、ジョウミチヲ未体験の人はぜひ一度お試しを。毒に酔うか、平凡に流れるかはあなた次第。
ジョウミチヲのピリッとしたライヴから一転、吉村潤が唄いだすと周囲を取り巻く色が変わった。夕やみにポッと明かりが灯ったような柔らかさが場内を包み込む。東京ではパーカッションが入っての演奏だったが、今回は自分とギター1本で。吉村さんは何がいいってとにかく声がいい! シンプルなステージほどそれが丸ごと伝わってきて、耳を、心を奪われる。その声で唄われるメロディは1度聴いたら忘れられなくて、何度でも聴きたくなる。この日演奏された曲はまだ音源にはなっていなくて、ライヴでしか聴けないのだけれど、ふとした時に頭に流れてきて口ずさみたくなるくらい耳に残るメロディなのだ。これがCDになったら、きっと毎日聴いて、毎日道を歩きながら鼻歌でうたっちゃうんだろうな…。
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吉村さんの出番の最後に、待望のセッションPart.1。ジョウ&吉村の個性派チームの登場だ。この後、篠原&新井ペアというのも出てくるのだが、この組み合わせ、当日の朝にグーパーで決めたという超インスタントユニット。どうなることやら…と母のような気持ちで見守っていたのだが、そんな心配はまったく余計なお世話だった。オアシスの"Cast No Shadow"と、ふたりのまったく別の声質がいい化学反応を起こして、観たことのない色を創りだしていた。
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Focus On Voiceは、それぞれの個性が存分に出せるイヴェントだと思う。濃〜いセッションPart.1の後に出てきた新井仁は、ホッとできる爽やかな風を一緒に連れてきた。ギターを弾く姿がめちゃくちゃさまになる人だ。新井さんの歌は人柄そのままに、優しくて、かゆいところに手が届くような感じ。派手なパフォーマンスがあるわけでもなく、淡々と進んでいくのに気がつくと気持ちを掴まれている。去年の11月に出たソロアルバムには『On The Bed』というタイトルがついていて、そのタイトル通り夜眠るときに聴いたらすっごいいい夢が見られそうな秀作になっている。その感覚はライヴで聴いても変わらなかった。粒子の細かい暖かな歌声の中を漂って、最初から最後まで幸せ気分でライヴを観ていた。
このイヴェントの主催者のひとりは本当に気持ちのこもった歌を唄う。バンドの時もそうなのだけれど、篠原信夫の歌を聴いていると、泣きだしたくなることがある。1曲1曲にこめられた感情が痛いくらいに伝わってくるからだ。歌の中の切ない風景が目に浮かぶくらいに。"Tourist"や"Lounge"では、歌詞のひとつひとつが胸に刺さってきて、
涙がポロッと零れてしまう。"想い"を歌にするヴォーカリスト篠原信夫。何があっても、いつまでも、どこまでも自分のスタイルで唄い続けていって欲しい。
篠原信夫の出番途中に入ったセッションPart.2は篠原&新井の技巧派チーム。Radioheadの"High&Dry"のカヴァーは「唄い終わって、お客さんの反応がすごく良かったのがステージからもわかった」というくらいのベストマッチ。選曲も二人の声の相性も重なったギターの音も。すべてがきれいに溶け合って、とにかく気持ちが良かった。
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Focus On VOICEをひとことで評するなら「とにかくいい感じ」。ライヴが終わった後、出演者の間で毎回「このメンバーでもう1回やりたいね!」という会話が交わされるくらい、場の雰囲気もいい。だいたい、出演者全員で万歳して終わるアコースティックライヴなんてあるのだろうか!? 回を重ねるごとに中身もどんどん充実してきているし、出演するヴォーカリストも素晴らしい人たちばかり。今まであまり興味のなかったアーティストでも、このイヴェントでみたら好きになっちゃうかも!? そのくらい素敵なイウ゛ェントだ。次回は4月。最強メンバーを揃えて東京、大阪で開催される。
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photos and report by wacchy
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