ビヨンズ
@ 代官山ユニット (17th Feb '06)
新生ビヨンズの新たなる一歩
ビヨンズの活動時代オレはまだ十代で、中高生で、北海道に住んでいた。だからもちろん観たことはない。なのになぜこのバンドに畏怖に近い感情を抱いているかというと、オレがいわゆるハイスタ世代で、そのハイスタの難波氏が度々「ビヨンズは本当にすごかった」と口にしているからだ。有名な話だがハイスタンダードの初ライヴは91年の高円寺20000V、そしてその時の対バンはビヨンズ、ブラッドサースティ・ブッチャーズ、ゴッズカッズ、スキャンプ(R.I.P)。この豪華共演陣のおかげで初ライヴにも関わらず多くの客の前で演れたという。そういえばハイスタ横山はビヨンズに参入してギターを弾いていた時期がある。結局正式加入することはなかったが、今考えてみると歴史が変わってしまっていたかもしれない分岐点スレスレの出来事だったのではないだろうか。
おっと、話をビヨンズに戻す。80年代後半のいわゆるバンド・ブームにはさまざまな功罪があったが、90年初頭のライヴハウス状況はその負の遺産といえるかもしれない。まさに「潮が引いた後」と言った感じで、どこも悲惨なくらいガラガラになってしまったのだ。いいバンドが育たなくなり、そうなると客もつかないという悪循環をひたすら繰り返す。弾けたバブルの余波はこんなところまで象徴的に及んでいたのだ。そして、そんなどうしようもない時代の逆風の中、孤軍奮闘していたのがニューキー・パイクスでありビヨンズだった。今なお伝説的な話をあちこちで聞くくらいだから当時の衝撃は相当以上のものだったのであろう。
この日は11年を経て奇蹟の復活を果たした新生ビヨンズの、まだまだ「復帰直後」といえるであろうライヴ。リズム隊には新メンバーとしてなんと元HUSKING BEEのテッキンこと工藤哲也と、NUMBER GIRL〜ZAZEN BOYSを経て自らのバンドを立ち上げ中の鬼才アヒト・イナザワを迎えている。ちょっと信じられないほどの豪華メンツが揃ったメンバーだが、一方でそれぞれのキャリアが名高すぎるのが災いして、いざステージ立った4人にはフロント陣とリズムセクションの間にちょっとした線が引かれているようにも感じる。先入観にすぎないのはわかっているのだが、このラインが薄まり馴染んでいくのにはまだ少し慣れが必要みたいだ。
演奏が始まる。面白い構図が見られた。この日は共演が十代に大人気の銀杏BOYZで、おそらくは銀杏ファンなのであろうキッズが興味深げにライヴの行く末を見守っているのだが、その横には少し遠慮気味にちょっとオトナな人々が固まっていた。はっきりいってオジサンやオバ(略)といった感じのお客なのだが、昔の曲を演奏されると頬が緩み、一緒に歌詞を口ずさんでいる。もちろん、彼らは10年前からの年季が入ったビヨンズファンだ。過去の栄光はまるで色褪せず、だけどこれから歩むべく新しい歴史と共に、若い層のファンも取り込もうとしている。今日の客層はビヨンズのこれからを写すひとつの象徴的な風景だった気がする。
これからこの客層はさらに入れ替わっていくだろう。それでいいと思う。昔からずっとビヨンズが好きなんだという人が最後まで残るのもいいだろうし、過去のことなんか全然知らなかったけどこのバンドかっこいい、というティーンネイジャーのファンが増えていくのもそれはそれで素晴らしいと思う。単なる同窓会再結成に終わらせる気は谷口にも岡崎にもさらさらないはずだし、ファンだってそんなことは望んじゃいない。このまま進み続けていくことで、客層は固まり流れまた固まり、その過程でフロント/リズムの先入観の壁も徐々に消え去っていくだろう。新曲には圧倒的に日本語詞が多かった。谷口氏がギターを弾き出す場面もあった。新生ビヨンズが何を恐れることもなく、とにかく新たに一歩を踏み出そうとしている決意を、ところどころに感じるライヴであった。
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report by joe and photos by wacchy
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