近藤智洋 in 北海道(6th to 10th Jul. '06)
北の大地に刻む足跡
7月6日のタワーレコード・インストアから始まった北海道シリーズ。アルバム『近藤智洋』を持って回る5日間の旅、札幌〜旭川〜札幌〜室蘭〜札幌という強行スケジュールを敢行した。そこには少々きつくても、自分の歌を聴いてもらえる機会があるならそれは大事にしようという想いが見える。何度目かのところも、ピールアウト時代を含めて初めて訪れる場所もあったが、どこのライヴでも共通していたのは「近藤智洋の世界を見せたい」という軸となる気持ちだった。ゲストとして出た短いステージでも、集客が厳しい中でも、その芯はぶれることがなかった。気持ちの入った歌は確実に道を創っていく。
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東京から北海道入りし、いきなり2本のライヴが入っている。1本目はターワーレコードでのインストア。CDを買ってくれた人が生で歌う近藤智洋を見ようと、新しいアルバム、ピールアウト時代の作品が並べられた特設ステージ前に集まってきていた。ライウ゛が始まると、吹き抜けの店内に気持ち良く響くギターと歌声に、ヴィジュアル的に見て近藤ファンではないだろう人たちがふと足をとめて聴き入る姿も見られた。後から聴いたのだけれど、この時PAをやっていたのは札幌のライウ゛ハウス、ベッシーホールのスタッフの方。「近藤さんの歌がすごい好きで、今日ライヴやるって聞いて『やらせて下さい』って自分からお願いしました」。ここにもひとり、近藤さんの歌をがっちりキャッチしている人がいた。
この日2本目はカスタネットという札幌の雑貨屋さん(アルバム『近藤智洋』も売ってます)の開店10周年イヴェント。レディオ・キャロラインがメインアクトの合間に飛び入りの形で3曲を演奏。暴れる気満々で詰めかけていたレディ・キャロファンが弾き語りにじっと魅入っている。これも後日談だが、ここで近藤さんを観た人がカスタネットにCDを買いに来られたとのこと。少しづつだけど北の大地に歌が届いていることを直に感じられるのがうれしい。
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2日目の旭川は正直、集客は厳しかった。それでも、いつも通り凛とした姿勢で丁寧に音を紡いでいく。アルバムを持って回る最初のツアー。甘いことばかりではないけれど、今日うたった歌は必ず次に繋がっていくはずだ。
再び札幌に戻った3日目、地元で活動するアーティストと大阪のベベチオとの対バン。手作り感のある暖かいイヴェントの空気をうまくキャッチして、前2日間より柔らかいアレンジのライヴになっている。アルバムに入っている曲、入っていない曲とランダムに演奏される中で耳に残ったのは、最近お気に入りのジョーン・オズボーンのカヴァー"One Of Us"とギターなしのポエトリー・リーディングから始まった"Barefoot Diaries"だった。お客さんが座っているイスの間や立っている人たちの隙間をうめるように会場中に広がっていく切なさをふくんだ声。ステージから溢れてくる静かな気迫に魅せられて、瞬きするのも忘れるくらいだった。他のバンドを観に来たお客さんにも「伝わった!」という感触がここまでで一番見えたライヴだった。
いろいろな意味で面白みがあったのが初めて訪れた室蘭。札幌から車で3時間。辿り着いた会場の怪物ランドは雑居ビルの一角、看板だけ見るとゲーセン、中は赤いソファが並ぶ場末のバーみたいなところ。見ただけでちょっとびっくりな箱でのイヴェントを企画したのは、地元、室蘭工業大学の軽音楽部だ。青春パンク、メタル風と若さで押す大学生の中にあって、アコギ1本での出演は異色の存在。それでも地に足をつけてどっしり歌う近藤智洋の姿に、若者たちも何か感じるものがあったようだ。ハープを使いながら表現する展開力のある弾き語り。静かな雨が降る室蘭にぴったりだった"落とし穴しかない場所"(パウダーのカヴァー)は「こういう見せ方もあるんだ」と、室蘭の学生たちの目にも新鮮に映ったと思う。
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じっくり聴かせた弾き語りと対照的、見物だったのが札幌からのゲスト、フルークと一緒にやったセッション。ルースターズの曲を3曲やったのだが、ステージに出てきた瞬間からすっげーテンションだった。 これがさっきアコギで歌っていたのと同じ人!? 黒いシャツとあいまって、ピールアウトの近藤智洋を彷彿させるはじけっぷり。曲に合わせて表情をくるくると変え、メンバーとからみ、ステージを飛びだして客を煽る。久しぶりに見た"激ロッカー・近藤"は、ほんっとに本気でカッコ良かった!! 。また、こんな姿が見られるなんて…。これだけでここまで観に来た甲斐があった。ライヴ後、今まであまりいないファン層の10代〜20代前半の男の子達が「良かったです!」「また室蘭に来て下さい」とアンケートに書いていたのが印象的だった。これだから、ライヴはいろいろなところでやる価値がある。)
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タワレコでの"感触"から始まった北海道シリーズ。会場を埋め尽くしたレディオ・キャロラインのファンを黙らせた3曲。完全アウェーな状況でもきっちりと歌いきった旭川。歌が届いていく手ごたえを感じた3日目の札幌。静かな世界と動の自分、両方を表現し、観るものに衝撃を与えた室蘭。一歩一歩だけれど、着実に各地に足跡を残していった。 さあ、最終日はバンドでのレコ発だ。
"近藤智洋ライウ゛スケジュール"
7月19日:名古屋 クラブ・アップセット
7月20日:大阪 梅田ハードレイン
7月22日:三軒茶屋グレープフルーツムーン(弾き語り)
7月25日:下北沢クラブ・キュー
*詳細はオフィシャル・サイトでご確認下さい。
セットリスト
7/6 タワーレコード札幌ピウ゛ォ店インストア
1.感触/2.荒野を抜け、そして戻る。/3.走る風のように、落ちる雨のように。/4.One Of Us(ジョーン・オズボーン)/5.静かな世界へ
7/6 札幌ホールスピリチュアル・ラウンジ CASTANET 10th Anniversary LIVE
1.走る風のように、落ちる雨のように。/2.恋に落ちたままで/3.One Of Us(ジョーン・オズボーン)
7/7 旭川カジノ・ドライウ゛ 上海ベイべ & TRAP TRIP 合同企画 「CROSS OVER」
1.She Made Me Cry(ザ・ルースターズ)/2.静かな世界へ/3.感触/4.荒野を抜け、そして戻る。/5.灯がともる頃/6.走る風のように、落ちる雨のように/7.Barefoot Diaries/8.ここから
7/8 札幌スピリチュアル・ラウンジ 『Let It Come Down vol.5』
1.水音/2.灯がともる頃/3.走る風のように、落ちる雨のように。/4.ここから/5.One Of Us(ジョーン・オズボーン)/6.Barefoot Diaries/7.静かな世界へ
7/9 室蘭怪物ランド
1.静かな世界へ/2.感触/3.荒野を抜け、そして戻る。/4.落とし穴しかない場所(パウダー)/5.走る風のように、落ちる雨のように。
*with Fluke 1.Fade Away/2.Let's Rock/3.Get Everything(3曲ともザ・ルースターズ)
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review and photos by wacchy
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2006
北の大地に刻む足跡:(06/07/06~09 @ 北海道)
残りあと1回…個性派ウ゛ォーカリストの集い:(06/07/02 @ 心斎橋クラブ・ジャングル)
photo report:(06/06/24 @ 三軒茶屋グレープフルーツムーン)
"楽しい"ってこういうことだ!:Pop Save Us Vol.3(06/06/17 @ Shimokitazawa Basement Bar)
photo report:Lonesome Dove Woodrows(06/06/17 @ Shimokitazawa Basement Bar)
photo report:Dusk(06/06/06 @ Shimokitazawa Club Que)
CD Review:『近藤智洋』近藤智洋
Interview : 近藤智洋ファミリー:近藤智洋バンド(06/05/27)
Interview : 『鳴っている音は自分の中にずっとある。』:近藤智洋(06/05/12)
『今伝えたいことを、今の声で。』:近藤智洋(06/05/10 @ 下北沢 440)
『多彩な力を感じてほしい』:近藤智洋(06/04/22 @ 三軒茶屋グレープフルーツムーン)
声の続きが観たくなる:コントロール・フリーク!!(06/04/21 @ 吉祥寺プラネットK)
CD Review:『On The Street』新井 仁
CD Review:『シルトの岸辺で』Beyonds
『近藤智洋・ライヴ週間記』 : 下北沢/札幌/旭川/福岡 : 近藤智洋(06/03/16-23 @ Tokyo,Sapporo,Asahikawa,Fukuoka)
photo report:Hariss(06/03/19 @ 旭川カジノドライウ゛)
下北沢のような…、でも間違いなく札幌の空気 : In The Air(06/03/18 @ 札幌スピリチュアル・ラウンジ)
photo report : Tomohiro Kondo(06/03/16 @ Shimokitazawa Club Que)
photo report : Beyonds(06/02/17 @ Daikanyama Unit)
楽しくてカッコいい。それがアンダーステイトメンツだ! : アンダーステイトメンツ(06/02/02 @ 新宿ロフト)
進化するアコースティックイウ゛ェントF.O.V : Focus On Voice Osaka 2(06/01/21 @ Shinsaibashi Club Jungle)
2005
声の表現者 : Focus On Voice Osaka 1(05/10/28 @ Shinsaibashi Club Jungle)
三色音色 : 近藤智洋、花田裕之、古明地洋哉 (3rd Oct @ 三軒茶屋グレープフルーツムーン)
夢うつつ : Jude (7th Oct @ 渋谷AX)
「帰れっ!」て言われても帰らない!! : Lonesome Dove Woodrows @ Shimokitazawa Shelter(5th Oct '05)
笑顔の種をもらった夜 : the castanets (19th Sep @ 下北沢クラブ・キュー)
真っすぐにロックする男達 : Bandwagon (17th Sep @ Shimokitazawa Shelter)
Nobuo Shinohara & Michio Joh : Focus On Voice V (2nd Sep @ Shimokitazawa 440)
photo report : Tomohiro Kondo (2nd Sep @ Shimokitazawa 440)
photo report : Hiroya Komeiji (19th Aug @ Shimokitazawa Club Que)
photo report : DUSK (19th Aug @ Shimokitazawa Club Que)
はじめまして、あふりらんぽ。また会いましょう、あふりらんぽ! : あふりらんぽ (18th Aug @ 下北沢シェルター)
「PEALOUT LAST STAND 響音 最後の狂鳴」レポートを終えて : ピールアウト (1st Jul @ 渋谷クラブクアトロ)
ツアーファイナル、東京。会場に溢れた"Peace,Energy And Love" : ピールアウト (1st Jul @ 渋谷クラブクアトロ)
大阪は最後まで熱かった! : ピールアウト (26th Jun @ 心斎橋クラブクアトロ)
長くて短かった名古屋の夜 : ピールアウト (24th Jun @ 名古屋クラブクアトロ)
photo report : Pealout (24th Jun @ Nagoya Club Quattro)
「ありがとう札幌!」、「ありがとうピールアウト!」 : Pealout (18th Jun @ Sapporo Bessie Hall)
ツアー初日、福岡ラストライヴ。とにかくライヴへ行け! : ピールアウト (11th Jun @ 福岡ドラムサン)
一生忘れられないツアーになった : 激初期衝動シンポジウム ファイナル feat.スロス・ラヴ・チャンクス、ロスト・イン・タイム、 ファック・ユー・ヒーローズ and ピールアウト (29th May @ 下北沢クラブ251)
場所がなければ自分たちで作ればいい : 激初期衝動シンポジウム Vol.5 feat.ロスト・イン・タイム、 ファック・ユー・ヒーローズ and ピールアウト (27th May @ 大阪サンホール)
PUNK=楽しむための音楽 : 激初期衝動シンポジウム Vol.4 feat.ロスト・イン・タイム、 ファック・ユー・ヒーローズ and ピールアウト (26th May @ 名古屋ハックフィン)
超個性派動物園 : focus ON VOICE feat.ジョウミチヲ(DUSK),篠原信夫(the blondie plastic wagon),浜田亜紀子(GO!GO!7188),TOMOVSKY and オンガシューヘイ(understatements (25th May @ 下北沢440)
旅の仲間 : コンドウ トモヒロ (24th May @ 三軒茶屋グレイプ・フルーツ・ムーン)
"想い"を歌にして : POST5 : feat. ハンサム兄弟、GRiP、ザ・ブロンディ・プラスティック・ワゴン (11th May @ 下北沢クラブキュー)
photo report : ザ・ブロンディ・プラスティック・ワゴン : (11th May @ 下北沢クラブキュー)
column : あの歌が聞こえる : ピールアウト (23rd May)
つながっていく"激ロック"という意志 : 激ロック ファイナル : feat. モーサム・トーンベンダー, ジェリー・リー・ファントム, 花田裕之+ウエノコウジ+楠部真也, ズボンズ and ピールアウト (4th May @ 新宿ロフト)
photo report : ピールアウト : (8th Apr @ 渋谷 O-West)
追う者と受ける者が出会う特別な夜 : ピールアウト : (27th Mar @ 下北沢クラブキュー)
特集『コンドウトモヒロ・歌の色』 : コンドウトモヒロ : (21st Jan @ 札幌サウンド・クルー)
暖かな歌 : リサ・ローブ : (19th Jan @ 渋谷クアトロ)
さらに加速度を増すユダのドライヴ : ユダ : (6th Jan @ リキッドルーム恵比寿)
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