シザー・シスターズ @ ゼップ東京 (25th Jan '07)
神様のエンターテイメント
横浜のみなとみらい地区は、東京でいえばお台場みたいなところなんだけど、横浜ブリッツはそんな人工的な場所にある。会場の外は入場を待つ長蛇の列で、中に入ってもドリンク・カウンターに長い列があって超満員とはいえないけど、かなりの盛況だった。ブリッツといえば赤坂の旧ブリッツより一回り小さいかなという感じである。
ステージ端にキンキラに飾られたDJ卓があってハウスとか、ソフト・セルの"Tainted Love (邦題 : 汚れなき愛)"を回している。ステージには幕が張ってあって、それには仮面を被った男がシザー・シスターズのマークがあるエレベーターの前に立っているという巨大なイラストが描かれている。これからシザー・シスターズの世界に誘おうということなのだろう。
19時20分くらいに"Intermission(インターミッション)"が流れてメンバーが現れる。スラッと長身でイケメンのジェイクと、貫禄ある姉さんという感じのアナの二人がヴォーカルで、この二人の華やかさが目を引く。
シザー・シスターズは、70年代ディスコをやっていたころのビージーズに影響を受けてきらびやかなステージを繰り広げる。CDと比べ、思ったより、ギターがロックぽく鳴るし、ダンスだけでなく、モータウン風あり、バラードもあり、カントリーぽい味付けもあったりと、バラエティー豊かだったので飽きることなく、あっという間に時間が過ぎていったのだった。"Comfortably Numb(カンフォータブリー・ナム)"のピンクフロイドの曲をビージーズ風にアレンジしたものは音楽を変えるだけでなく、それによって歌詞の意味を上手く読み替えたような感じだし、アッパーなディスコ・ナンバーでこのタイトルになったのか不思議な"Paul McCartney (ポール・マッカートニー) "など、どの曲も楽しかった。
アナがMCで「ヨコホモ」とダジャレを飛ばしたり、リスナーからの手紙を読んだり(ラジオみたいだった)、とサービス満載なのだけども、一番沸いたのは、ジェイクがストリッパーのように、というかストリッパーそのものなんだけど、ちょっとずつチラチラと乳首を見せたりしながら、最終的には短パン一丁になるところだった。おれが「アクセル・ホッパーに似ている」といったら、同行者に「それだけはやめてくれ」といわれたが。
以前の来日は観ていないし、前回のフジロックもちょっとだけしか観ていないので比較ができないけど、思ったよりもアンダーグラウンドなものでなく、ハッピーで健康的な空気が会場にはあった。ジェイクの体の動きが激しく、キレがあってなんだかスポーツ選手のような感じがしたのだ。そう考えると、シザー・シスターズの曲や音色、二人のヴォーカルは退廃とか耽美の匂いが強調されたものではない。もっとポップで、音楽をプレイし、歌い、踊る楽しさをポジティヴに伝えようとしているようなのだ。
シザー・シスターズの音楽は、じめっとした感傷でなく、あくまでも、ウキウキした、アッパーでヘルシーでスポーティーにエンターテイメントに徹している。だから、もちろんアンコールの"I Don't Feel Like Dancing"〜""Filthy / Gorgeous"での盛り上がり、会場の一体感は、すんごいものでした。湿ったところがないからより享楽的な感じが一層引き立つ。享楽的なのに退廃じゃないという絶妙なバランスがある。刹那的な快楽なのに後悔や感傷を伴わず、大切な思い出として残るのだ。
-- setlist --
She's My Man / I Can't Decide / Tits On The Radio / Laura / Skins / Kiss You Off / Paul McCartney / Take Your Mama / Mary / Transistor / Comfortably Numb / Music Is The Victim
-- encore --
I Don't Feel Like Dancing / Filthy / Gorgeous
なお、写真は25日のゼップ東京公演のものを使用しています。
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report by nob and photos by keco
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