近藤智洋 in 北海道 '07 (24th ~ 29th Mar. '07)
北の旅、再び
3/24 : 函館あうん堂ホール、3/25 : 札幌サウンド・クルー、 3/26 : 札幌スピリチュアル・ラウンジ、 3/28 : 旭川カジノドライヴ ラウンジスペース、3/29 : 帯広ふた葉亭
近藤智洋は他のミュージシャンに比べ、頻繁に北海道に行っていると思う。そこには受け入れてくれる土壌があり、再会を喜べる仲間がいるから。しかし、そういう環境を作っているのはやはり近藤智洋自身だ。一度聞いたら忘れられない声と、毎回違う色を見せるライヴ。初めて訪れる場所でも、しっかり種を蒔き、根を伸ばし、新しいものを芽吹かせるべく歌をうたう。その姿勢は目前に迫った春を待つ北の大地に通じるものがあるのかもしれない。
昨年の11月以来、4カ月ぶりの北海道。函館〜札幌×2〜旭川〜帯広と続く5本のライヴは3月24日の函館からスタートした。ここは道内でも屈指の観光スポットだけれど、夕方の街は息をひそめているような静けさがある。エコー&ザ・バニーメンのカヴァー"The Killing Moon"で始ったライヴは、ストンと落ちてきた夜と港町の湿り気を含む空気を吸い込んだ、穏やかな時間が流れていた。改めて、その場の雰囲気を吸収するのがうまいアーティストだと思う。同じ曲でも函館でうたえば、函館の色と手触りになる。"The Killing Moon"は翌日の札幌(サウンド・クルー)でもやったけれど、そこではたくさんのバンドに囲まれて、また違った感触を見せていた。
函館と札幌1日目は地元のバンドとおもしろいことをやってやろうの日だった。勝手に「セッション・シリーズ」と呼ぶことにする。函館ではアフター・ノベンバーズと一緒になりきりオアシス、札幌はフルークとルースターズ&UKパンクバンドのカバー。言葉にすれば「地元バンドとセッション」と同じような出来事に聞こえるけれど、アフター・ノベンバーズに入ったときとフルークとではまったく別人になる。函館では期待を裏切らないばっちりオアシスで、フルークの時はこれでもかっ! というくらいぶっこわれて、大暴れ。これも周りの空気を吸収し、自分のパフォーマンスに変換しているということだろう。何度ライヴを観ても飽きない理由は、このあたりにもあるかもしれない。北海道でしか観られないセッション・シリーズ、今後はお見逃しなく。
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札幌2日目からは100%弾き語り。アコースティックのライヴではあるが、ひたすら静かに弾き語る、ではないところがポイント。札幌スピリチュアル・ラウンジではリズムマシーンを使ってアクセントをつける。旭川カジノ・ドライヴ(ラウンジスペース)はアコギ1本で。どちらも、静かに聞かせる曲と、バンドサウンドを彷彿させる激しさを持つ曲とのコントラストが小気味好い。思えば、2005年の1月に流れを作って以来、札幌〜旭川は北海道での定番コースとなった。定番だけれど、決まり切ったライヴには決してなっていない。来るたびに大きくなった、どっしりした歌を聴かせてくれる。
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最終日に訪れた帯広は、ピールアウトでは一度ライヴをやったことがあるけれど、ソロでは来るのもライヴも初めて。しかもいきなりのワンマン。そういう土地で、初めて近藤さんを観る人もいる中、今の自分の歌と活動を丁寧に丸ごと伝えようという気持ちが見えるライヴだった。
会場のふた葉亭は音楽が大好きな人が作っている居酒屋という風情で、入った途端に人の暖かさと家にいるような居心地の良さが感じられる場所。高岡でのイヴェントもそうだったけれど、こういう会場で近藤さんは必ずいいライヴをやる。素敵な夜になる予感。拍手に迎えられてギターを抱えた姿からは、最初から柔らかい、ゆったりした空気が感じられた。新旧の曲を織り交ぜ、ギターとピアノとトークで自分の世界を伝えていく。客席との距離も、音も生音、生声に近い(実際、"静かな世界へ"はマイクを通さず歌った)。歌いながら、飲みながら、笑いながら、お客さんと心を通わす糸が見えるようだった。本編最後の"バンビーノ・ステップ"ではシャイな北海道の人たちもしっかり巻き込んでハンドクラップ&コール&レスポンス。またひとつ近藤さんは"帰る"場所を作ったな、と感じた瞬間だった。
「また観たい」「また来たい」双方の強い思いから、次のライヴは生まれていくのだと思う。歌う場所があるならば、近藤智洋は何度でも北海道に歌を届けに来るのだろう。今回訪れた場所だけでなく、まだ見ぬ都市にも目を向けて。各地、違う歌詞でうたわれた"Barefoot Diaries"のように、いろんな想いを拾い集め、また新しい軌跡を残すために。
こんなに丁寧に精力的に道内をまわるミュージシャンもなかなかいないと思うので、近くの街に来るという情報をキャッチしたら、ぜひ会場に足を運んで欲しい。優しくて激しくもある近藤智洋の音楽に触れて、いい時間をすごせること間違いなしだから。
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report and photos by wacchy
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