ヒートウェイヴ (Trio ver.) @ 吉祥寺 スターパインズ・カフェ
トリオで見せた音の極み
この人たちはドラムが、ベースが、ギターが、そして歌がなくなったら生きていけないんじゃないだろうか。そして、楽器と歌は彼らに息を吹き込まれなければ、生命を持たない。ヒートウェイヴのステージから感じた、音と人との一体感を言葉にしようとした時、すごく迷った。機械みたい? 違う。神業? 違う。そこにあったのは間違いなく血の通った人間が出す音。いや、この表現も少し違う。音を出していたんじゃない。彼ら自身が音だったのだから。長い間音楽を愛し続けると、人はここまでになれるのだ。こういうバンドのライヴに出会えたことに感謝。
スターパインズ・カフェの10周年記念にトリオ・バージョンで登場したヒートウェイヴ。前日は同じ会場で3時間にも及ぶ弾き語りをやっていた山口洋の疲労は相当なものだったと推測される。しかし、それが見えたのは、少しこけた印象の頬のみ。表情、動きからはそんなことはみじんも感じられなかった。ステージで何度も嬉しそうな笑顔を見せる。"ハピネス"を歌ったときの幸せそうな顔。歌うことで周囲を幸せにして、自分もその空気を吸収して幸せになる。本物の歌い手の顔だった。会場で配られていた『land of music』のフライヤーに「聞いてくれる人を無理矢理ポジティブな気分にもさせたくなかった」というコメントが載っていた。だけど、ヒートウェイヴのライヴは、前を向いて歩いていこうという気持ちにさせてくれる。本当にいいライヴは、理屈抜きに人を前へと進ませてくれるのかもしれない。
本編のラスト、"Still Burning"。空気を切り裂くシャウト、始まりを告げるドラム、曲を支えるベースラインがひとつになったとき、心臓はものすごい熱を持ってドキドキしているのに、足下から全身に鳥肌が立ち昇り、気持ちはハイなのになぜか泣きそうになる、という不思議な体験をした。自分の中に隠れていた炎が表に出てきて、大きくなる感触だった。7月のフジ・ロック、フィールド・オブ・ヘヴンでもらった火種は消えていなかったのだ。途中、マイクを外して歌われたフレーズ、聞こえなかったけど聴こえてきた。それは、またひとつ、心の中で消えない火となった。
当然のようにおこったアンコール、1曲目はなんと"Tequila"! 山口洋、渡辺圭一、池畑潤二、この3人の"Tequila"がここで聞けるとは……。そこから"No Fear"へと続く流れは、瞬きもできないくらい圧倒的な迫力。こんなにふり切れた山口洋を観たのは初めてだ。
レコード会社の資本ではなく、ライヴハウスやファンといった周囲の人たちのサポートだけで作品を出していく「今まで誰も行かなかった道を行くことにした」というヒートウェイヴ。フロアのライトがついてもなりやまない、2度目のアンコールに応えてうたわれた"出発の歌"は、彼らの生き様そのものの気がした。
『何度でも道をすり減らす それが出来ること すべてなら』(出発の歌/land of music)
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