The way from nowhere, walkin' into the wind 2007 (近藤智洋、塚本晃、古明地洋哉) @ 高崎 クラブ・フリーズ
3人の歌旅人
"強い"弾き語りだった。近藤智洋、塚本晃、古明地洋哉の3人で関西、関東を中心に全11カ所を回るツアー、"The way from nowhere, walkin' into the wind 2007"の終盤戦、高崎クラブ・フリーズ。ここまでの会場を調べてみると、雰囲気のいいバーのような場所が多かったようだが、今回は思いっきりロックの匂いがするハコ。そのせいなのか、3人ともにアコースティックの柔らかさより、歌の強さを感じるライヴをみせてくれた。その加減と空気感、歌の色はそれぞれ、まったく違うものだったけれど。
地元のミュージシャンの後、3人のトップとして登場したのは塚本晃。第一声から会場は彼の声で満たされた。声量がある、とかそういうことではない。言い表すなら、包容力のある歌声なのだ。ステージを正面に聴いていても、背中の方まで音の振動が伝わってくる。体全体で音楽を感じられるから、歌が変わるごとにステージの色とか温度が変わるのが視覚でもわかるくらいだ。その色の後ろにはこれまで歩いてきた道とか、さまざまな経験、このツアーの旅路も透けて見えるような。こんな風に五感が震える歌をうたう人にはなかなか出会えない。この感触は一度体験したらくせになる。だから、また次のライヴに足を運んでしまうのだろう。
近藤智洋が歌いだすと、風景がガラっと変わった。そこにあったのは冬の空気だ。暖房の効いた建物から外に出て、すぅと冷たい空気を吸い込んだ時の、はっと目が覚める感覚。身が引き締まるような緊張感。"灯がともる頃"で、ギターは強くかきならされているのに、ハープのイントロがいつまでも切なく耳に残っていたのは、そんな空気感の所為だ。続く"恋に落ちたままで"、"草原"でも、ギリギリまで張りつめた糸が音を出しているかのように、まっすぐに歌が響いてくる。しかし、それでも届き方が足りないと感じたのか、最後の曲"二人の航海"では「(お客さんとの)距離が遠いなぁ」とフロアに降りてきた。10年前に路上で歌ったことがあるという高崎。マイクを通さずに歌う姿は、まるでストリート・ライヴ。ステージ前の柵はガードレールに変わり、会場のイスは公園のベンチになった。そして、最後に静かに伸びたハープの音は、暗い夜空に染み込んでいった。
『何かを伝えたいときほど、僕は無口になってしまう』。1曲目の"欲望"のこのフレーズにいきなりノック・アウトされた。古明地洋哉の歌のキモはなんといっても言葉だ。「その気持ち、すっごいわかる」と、握手を求めたくなるくらい共感できる言葉が、次々に胸を撃ち抜いてくる。それにしても、こんなに強い歌をうたう人だっただろうか? これまでに観た古明地洋哉の印象は「静かに切なく歌い上げる人」だった。しかし、今日は、会場の雰囲気からなのか、旅をして自身が変わったのか、その両方なのかはわからないけれど、がむしゃらなまでの強さで突っ走る。最後は、その勢いのまま「アコギ抜きます!」とギターのシールドを抜き、近藤智洋同様、フロアに降りてきた。一緒にツアーを回って、いい刺激を受けて、初の生歌挑戦。そうやって歌われた"About a boy"、サビのフレーズがいつもより印象的に、説得力を持って聞こえてきた。人が何かを越えて、新しい一歩を踏み出す、貴重な瞬間に立ちあえたことに感動。
最後は3人でセッション。いつも聴いている曲も3人それぞれのギターが入ると、まったく違った風合いになる。これはもう即席セッションの域を越えている! 塚本晃が何度も「今日、この場所を選んでくれてありがとう」といっていたけれど、こちらこそ「ここに来てくれて、こんなに素敵な音楽を聴かせてくれてありがとう!」といいたかった。
高崎のライヴの2日後、入間市のSO-SOというライヴハウスで、3人で回る弾き語りのツアーは一旦終了した。このときの、まだ終わりにしたくない……、終わって欲しくない……と、笑顔で涙をこらえながら続いたセッションは忘れ難い。いいライヴを何度も重ねて、3人の結束がかたくなっていることを感じた。そして、うれしいことに、この続きはまだ観られる! 近藤智洋、塚本晃、古明地洋哉の3人にベースとドラムが入り、「スペシャル・エディション」と銘打ったツアー・ファイナルがあるのだ。近藤智洋が「一緒にツアーを回っていくうちに、3人がだんだんバンドみたいになってきて…」と話していたが、最後は本当にバンド・スタイルでのライヴになる。一夜限りのスペシャル・バンドのワンマンは、10月20日下北沢クラブ・キューで行われる。
"The way from nowhere, walkin' into the wind 2007"
ツアー・ファイナル「スペシャル・エディション」
近藤智洋×塚本晃×古明地洋哉、三輪雅也(b.)、伊藤孝喜(ds.)
10月20日 下北沢 クラブ・キュー
*詳細はこちらでご確認ください。
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