ア・ハンドレッド・バーズ・オーケストラ @ 渋谷オーイースト (29th Feb. '08)
ひとりはみんなのために
ビッグバンドのライヴが好きだ。渋さ知らズとかデートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデンとか赤犬とか、「個」を発揮しつつ、たくさんの演奏者が協同して大きなグルーヴを作り上げるというチームプレイを見ることができるからだ。それから、ステージのいろんなところを眺められるので、飽きることがないということもある。渋さには不破大輔、DCPRGには菊地成孔、というように中心となる人はそれぞれのバンドにいるけれども、ずっと一人を見ているわけではなく、ソロをプレイしている人、バッキングに徹している人、手を休めて次の演奏の待機をしている人など、さまざまな人たちの表情がある。そして、単純に大人数から繰り出される音の分厚さが気持ちよく、いろんな楽器の音のバラエティが楽しいのだ。
19時ちょっと前にO-Eastに着くと、前の道路まで人が溢れている。20分くらいして会場に入ると、DJが歌モノのハウスを回している。フロアは、まだまばらで、お客さんたちはバーカウンター辺りに篭っている。DJはラテンぽいのをかけたりしながら、基本はずっとハウスで1時間くらい過ぎていく。
そして20:30頃、徐々にメンバーが現れる。フロアにも人が集まってくる。総勢30人を越えるオーケストラ。DJが回している曲に演奏を乗せていき、次第に生演奏に移行していく。やはり、この大人数は壮観だ。メンバーにはスーツもいれば、入れ墨もいる。筋肉質の男もいれば、かわいい女の人もいる。DJ YOKUが指揮者でステージ中央で奮闘している。もちろん彼が中心人物であるけれども、みどころが多くて、ステージのあちこちに視点が移っていく。
このアンサンブルはすごいのだけど、ストリングスの鳴り方がもうちょっと迫力あればなあと思ってしまう(ホーンが鳴ると音が負けてしまう)。これだけの楽器が同時に鳴るとPAも苦労するのかもしれないけど。しかし、2人ずついるドラムとベースのおかげで低音がしっかりしていて、切れ目なく、次から次へとノンストップで演奏を繰り出してくる。代わる代わる女性ヴォーカリストが歌い、ホーン隊からソロをとるというように、それぞれに見せ場を作っていく。
途中、クラシックなヴァイオリンのソロ、そしてもうひとりのヴァイオリニストがソロに絡んでソロバトルへ、そして再びダンスへ突入していくところが素晴らしかった。さまざまに展開していく音の万華鏡と、その基になるコシの据わったビートの力強さは、フロアを踊らせ続けた。日本人で最近のR&Bのディーヴァぽい雰囲気を漂わせるTeNとゴージャスな金髪の白人女性ヴォーカリストであるステラの個性の使い分けも面白いし、バックコーラス嬢たちも、昔のモータウンぽい振り付けつきで歌うところ、いらずらっぽく踊る陽気なホーン隊とか、いろんなものを飲み込んで大きなうねりを作っていく。このオーケストラはハウスやテクノの曲を人力でカヴァーするというコンセプトであるのだけど、往年のディスコの箱バン(クラブやレストランと専属契約してお店のBGMを演奏するバンド)的な感触もある。もちろん、こんなゴージャスな音の箱バンもないし、フロアから飛び立って南国の島々の空を浮遊させるようなイマジネーションを刺激させる箱バンもないのだが。
ふと、「こんな大所帯をどうやって支えているのだろう?」と思った。東京にはバスをチャーターして来たようだ。さらに、フルオーケストラで演奏するのは年に数回しかないとのこと。たしかにメンバーを招集してリハーサルして、アゴアシを用意して... という細々したことが大変だよなぁ、お疲れさまでしたと思うと同時に、去年の朝霧JAM以来、貴重なステージを体験できて非常に嬉しかった。
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report by nob and photos by sam
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