button一ノ宮頼子 @ 竹ノ塚音楽倉庫 (15th Mar. '08)

肩書きの枠を越えた歌を届ける

 東京都足立区に竹の塚という小さな町があり、ここに音楽倉庫という名の空間がある。2月中旬にこの場所で無料ライブが開催され足を運んだのだが、そのときに一ノ宮頼子というアーティストに出会った。ピアノとギターで弾き語りをするシンガー・ソング・ライターだ。それから1ヶ月の間ずっと気になっていたのが、再びこの音楽倉庫でライブをするという情報を入手し、取材をさせてもらうことになった。

一ノ宮頼子 ライブの模様について早速書きはじめたいところだが、その前にひとつふれておきたいことがある。それは彼女の経歴について。これがまた面白いのだ。幼少期から音楽理論を学びながらも、12歳からはサッカー、大学在学時にはダンスに没頭。ようやく音楽活動をはじめCDをリリースしたかと思うと、今度はアメリカを旅した際に出会ったホッケーに熱中したという。そのはまりっぷりも半端ではない。北海道に移住して練習を重ね、ついには日本代表として世界選手権にも4度出場しているというのだ。この他にもテレビ、ラジオ、モデルなどもこなしたというのだから、一体何足のわらじをはいていたというのだろう。肩書きなんてものは結局言葉でしかないが、こういった背景がどう音楽に影響しているのかという点は非常に気になるところだ。

 ライブはというと、まずクラシック調のピアノ曲から始まった。シャッター音すら気になるほど静まりかえった場内にピアノの音色が響き渡る。ボーカルをとらないこの曲では表情の変化はほとんどない。一心不乱にピアノに没頭している様子が伝わってきた。1曲を弾き終え、ここからピアノによる弾き語りが始まる。弾き語りといっても一ノ宮頼子の歌い方には少々癖がある。目を閉じうつむいた姿勢から絞るように声を出すのだ。ネガティブな表現に捉えられてしまうかもしれないが、その声は湿っぽく陰鬱とした雰囲気すら感じさせる。

一ノ宮頼子 だが前半に受けたそんな印象も後半になるとまた変わってくる。それは"なんも"という曲。北海道在住時、現地の人が「ありがとう」という言葉に対して「なんでもないよ」という意味を込めて使っていた言葉をタイトルにしたという。「なんも」というフレーズが何度も繰り返される優しいバラード曲だ。それからハネたリズムが特徴的な"オサンポ日和"へと続く。歌うように鳴らされるピアノが感じさせるのは現在勉強中だというジャズのテイスト。陽気なピアノにのせられて歌も自然と活き活きとしてくる。そして最後は再びギターを手にとり、母親に向けて作ったという"ありがとうね"でセットを締めた。

 終わってみると"なんも"〜"ありがとうね"の後半3曲が強く印象に残っている。それは歌われる詩がどれも自身の生活や体験に基づいていることが感じられたからだ。かつては打ち込み主体の音楽をやっていたため、ライブの経験が浅いと彼女は話す。今はライブ強化期間ということで、様々なミュージシャンとセッションを重ねながらライブをしているそうだ。また彼女はいろいろな土地を歌ってまわりたいとも話している。今はまだ自身のスタイルを模索しているように思えるが、セッションを重ね、そして音楽の旅をはじめたとき、彼女の音楽はどのように変化を遂げていくのだろうか。そんな未来への期待も込め、今の一ノ宮頼子の音楽をレポートとして残したいと思った。今後しばらくは都内でのライブが続くので、興味を持った方はぜひ一度彼女の歌にふれてみてもらいたい。


-- set list - -

Solitude / after the rain / I'm coming home / ヒトイキレ / all alone / なんも / オサンポ日和 / ありがとうね

ライブスケジュール

3/25(金)北千住 DANDELION
4/3(木)代官山 晴れたら空に豆まいて
4/12(土)赤坂 天竺
4/18(金)新宿 たかのや
5/7(水)南青山 MANDARA
5/26(月)恵比寿 天窓.SWITCH
6/16(月)中目黒 楽屋
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