ギー @ 下北沢クラブ251 (2nd Apr '08)
失われた可能性を取り戻すために
1990年代の後半は、日本のロックにとって転換期といえた。97年にフジロックが始まったこともあるし、インターネットが普及することによって、音楽情報のチャンネルが広がったうえに、リスナー同士の繋がりも生まれた。そうした動きに伴ってさまざまなバンドが活躍し、我々の耳に届くようになった。この新しい動きで、おそらく象徴的だったことは、98年フジロックのミッシェルガン・エレファントのステージだったと思う。洋楽と邦楽の差なんてないんだ、ということを強烈にアピールしたのだ。さらに、ロックとか、テクノとか、ヒップホップとかジャンルの区別なく踊ることが楽しいというのも、当時のフェスやクラブで学んだことだった。
少なくとも、いちリスナーとしては、楽しく刺激的な音楽生活を送ることができた日々であった。ピールアウト、プレイグス、ゼペット・ストアは、そのころに知ったバンドで、そんな熱気の中でシーンを支えていたバンドであった(細かいこと言えばゼペットは微妙に立ち位置が違うという人もいるけど、"BRIDGE"はそのころの盛り上がりを感じさせる名盤だと思う)。そのバンドのメンバーに東京ピンサロックスのヒサヨを加えてバンドを始めたと知り、全て出身バンドのCDを持ち、ライヴを観たことがある者としては、ギーは気になるバンドであった。
下北沢クラブ251。この日3番目のバンドとしてギーが登場した。ギーが始まる頃にはステージ前も埋まり、前身のバンドから根強く彼らを追いかけている人たちが多くいるのがわかる。ステージ中央にヴォーカル&ギターの近藤、上手にヴォーカル&ギターの深沼、下手にベースのヒサヨ、ドラムにヤナというポジションにつく。
まず"Runaway Pigeon Bus"から始まる。基本的にはグランジの影響下といっていいかもしれない、硬質で激しいバンド・サウンドに近藤と深沼のツインヴォーカルが乗る。攻撃的で勢いがあるのだけど、その芯に深みや落ち着きを感じさせる。やはりキャリアを重ねてきた強みがあるのだろう。
先にグランジと書いたけど、それだけではない。ルーツにはガレージなロックンロール、パンクやニューウェーヴもあるけど、それもちょっと違う。深沼のコンクリートをガリガリ削っているような硬質なギターはプレイグスを連想させるけど、近藤がヴォーカルを取るところでピールアウトをイメージさせるかな、と思ったけど、それともちょっと違う。単純にピールアウト+プレイグスというわけでもない。誠実で、ストイックで、激しく、硬質でありながら、落ち着きがあり、優しさを感じるロック。この微妙な味わいを出せるというのは、メン バーにとって新しい次元に突入していることなのだ。それは、表面的にいえば、二人でヴォーカルを分担することによって、バリエーションが広がったこともあるし、ヒサヨの柔軟性あるベースのおかげもあるかもしれない。よく聴いていけばいろんなところをチェックできるだろう。しかし、何といっても要するに4人の化学反応、バンド・マジックが起きているのではないか、と思えてくるのだ。
ステージが終わって楽屋に挨拶した際に、メンバーに「アルバムのタイトルがなぜ『レコンキスタ』なのか」という疑問をぶつけると、「響き重視でつけた」とのこと。バンド名もそうだけど(GHEEだとヒンディー語でインドの乳脂肪製品のこと)、英語でない無国籍(多国籍?)な感じを出したかったらしい。
レコンキスタとは718年から1492年までにイベリア半島で、キリスト教徒がイスラム教徒を追い出し、再びキリスト教国(のちのスペイン、ポルトガル)が半島を征服したことを指す。このことから単に領土争いだけでなく、「失われたものを取り戻す」という精神的な回復運動を示す言葉である(ただ、それはキリスト教徒からの視点であって、イスラム教徒からだと別の見方があるが)。この「レコンキスタ」は、洋楽と邦楽の壁がなく、ジャンルの区別なく踊ることが楽しいんだということを知ることができた90年代末に日本のロックにあった可能性を取り戻すというバンドの姿勢を指しているのではないかと、この日のライヴで感じたのであった。
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"Reconquista"ツアー
4月2日:下北沢クラブ251
4月4日:京都MOJO
4月5日:大阪・福島ライヴスクエア・2ndライン(ワンマン)
4月6日:名古屋クラブ・ロックンロール(ワンマン)
4月11日:札幌スピリチュアル・ラウンジ(近藤、深沼の各々ソロの弾き語り)
4月12日:札幌スピリチュアル・ラウンジ
4月13日:旭川カジノ☆ドライヴ
4月19日:仙台マカナ
5月8日:鹿児島SRホール
5月10日:福岡ドラム・サン
5月18日:代官山ユニット(ワンマン)
*詳細はオフィシャル・サイトでご確認ください。
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report by nob and photos by wacchy
mag files : Gheee(ギー)
引きずり込まれるロックフィールド : (08/04/06 @ Nagoya Rock'n'Roll) : review by takuya, photos by yoshitaka
photo report : (08/04/06 @ Nagoya Rock'n'Roll) : photos by yoshitaka
ここからツアーが転がりはじめる : (08/04/05 @ Osaka Live Square 2nd Line) : review by wacchy, photos by tommy
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失われた可能性を取り戻すために : (08/04/02 @ Shimokitazawa Club 251) : review by nob, photos by wacchy
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CD Review:Reconquista(08/03/12):review by wacchy
Interview:ギー、再征服 : (08/02/19) : interview by wacchy, photos by hoya
今、ギーが求めるスピードで : (08/01/23 @ Shibuya O-Nest) : review and photos by wacchy
2度目のワンマン、濃度2倍 : (07/09/30 @ Shimokitazawa Shelter) : review and photos by wacchy
photo report : (07/09/30 @ Simokitazawa Shelter) : photos by wacchy
photo report : (07/05/13 @ Simokitazawa Club 251) :review and photos by wacchy
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