ギー @ 代官山ユニット (18th May '08)
"レコンキスタ" ツアー
老獪なベテラン・ロック
漫画『デトロイトメタルシティ』は、渋谷系の音楽が好きな根岸君が、何を迷ったのかデスメタル・バンドのカリスマとして活躍するというギャグ漫画である。ミュージシャンには多かれ少なかれこのような二面性があって、それをデフォルメして笑いに昇華した作品といえる。この日のライヴが終わった後に、近藤に聞いてみると「(漫画は知らないけど)弾き語りなど、片方ばかりやっているとストレスが溜まるから、思い切りギターを弾きたくなる。そのバンドが自分にとってはギーなんだ」と答えてくれた。
そのギーは、パンク/ニューウェーヴやグランジあたりをルーツにした攻撃的なロックを得意とするのだけど、ベテランならではの味わいが滲み出ている。それはバンドにいる近藤&深沼という2人のソングライター/ヴォーカリストが長いキャリアを持ち、さまざまなノウハウが蓄えられているために、一曲単位でも、ライヴ全体を通じても、単調にならずに聴かせる術があるからだ。一曲のなかで交互に歌ったり、歌い出しを深沼でサビを近藤が歌ったり、というように柔軟な使い分けができていて、曲中に起こる変化が飽きさせない。それは野球のベテラン投手が、豪速球を持たなくても、老獪な投球術で完投してしまうような感じだ。それともうひとつ、近藤が弾き語りのときにみせる優しい側面が激しい演奏の中の芯にあり、そこはかとなく漂ってくるのも味わいとなっている。
まず"ランナウェイ・ピジョン・バス"から始まる。深沼のレスポール・ギターから放たれる武骨なリフとヒサヨの柔軟なベース、ヤナの堅実なドラムが組み合わさって、前回観たときよりバンドのまとまりがでてきた。よりシャープに、より一体感を高める。ツアーに出てライヴを重ねることによって、演奏する方はどんどん気持ちよくなっているし、そんな音を浴びる客席も気持ちよく体を揺らすことができる。
ヒサヨのベースもハードな男たちの音の中で、柔らかいうねりを生み出し、バンドに必要なものになっている。例えば、会社でおじさん達が趣味で結成したバンドのヘルプとして大学の軽音でベースを弾いていたOLが加わりましたというような、借りてきた猫的な違和感はない。この世代が違うベーシストがバンドに奥行きを与えている。
ギーの音からピールアウトやプレイグスを思い出すことは、そんなに難しいことではないかもしれない。メロディやギターの音色には、それぞれの癖みたいなものが染み付いているからだ。だけども、二人が持っているものが組み合わさって、しなやかで、かつ強さも兼ね備えるリズムセクションを得ると、よりロックとして研ぎ澄まされ、単純にピールアウトとプレイグスを足したような音楽でなく、さらにひとつ上の段階で勝負しているような音になっている。
曲の間には、近藤と深沼の最初の出会い(当時、近藤がレコード会社のディレクターだった)を話し、「それからお互いPがつくバンドをやって...」と笑わせる。この辺の余裕っぷりもベテランならではだ。即効性がある熱狂を生み出すとか、宗教的なノリを創り出すということはないのだけれど、ライヴ全体がギーの世界に包まれ、じんわりと良さを感じられるものになっている。アンコールは2回。それでも、物足りないお客さんのために、なんとライヴの冒頭で演奏した"ランナウェイ・ピジョン・バス"と"ルシファー"をもう一度やる。この堂々とした開き直りは、やっぱりベテランらしいし、思い切りギターを弾いてロックをする近藤の嬉しさが伝わってくる。
--Set list--
1.Runaway pigeon bus/2.Lucifer/3.New world/4.If the moon don't rise/5.Fancy vendetta/6.The winter road/7.Devil's Menuett/8.Without your heart/9.Once and never again/10.No knock/11.Never snuff the lights/12.Loop road #8(新曲)/13.Alright/14.Swallow/15.My imagination/16.Cheers for the sun/17.Can't hug a hater/18.The last chord
--encore1--
1.Perfect place/2.Beautiful stungun
--encore2--
Timeless
--encore3--
1.Runaway pigeon bus/2.Lucifer
"Reconquista" TOUR盛況御礼
スペシャル・アンコール公演決定!!
【GHEEE / Special Unplugged LIVE】
6月8日(日)@渋谷Eggman
豪華3本立て仕様
・近藤智洋(弾き語りLIVE) ・深沼元昭(弾き語りLIVE) ・GHEEE(Unplugged LIVE)
*詳細はオフィシャル・サイトでご確認ください。

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