ザゼン・ボーイズ @ 渋谷AX (12th Aug. '08)
濡れたかんざし、赤く狂って
仕事のために少し遅れてフロアのドアを押すと、ビッシリとお客さんが詰まっていた。変わらぬ人気振りである。ザゼン・ボーイズの奇怪といってもいい音楽にこれだけのお客さんが集まるのだから素晴らしいことだ。そこで繰り広げられるステージは、めくるめく音楽の万華鏡。ロックあり、ファンクあり、ヒップホップあり、ポップスありとバラエティが豊か。だけど、最終的にはド迫力のロックの印象が強く残る。それは完璧なプレイヤーたちが一体となって押し寄せてくるからだろう。
向井秀徳のひねり出すように歌に呼応するように、超絶なギターを弾くカシオマン、しっかりとしたベースでうねりを作り出す吉田一郎、細かくリズムを刻むことと迫力を兼ね備えた柔道二段・松下敦が息の合った演奏を繰り広げる。さんざん言われている通り、レッド・ツェッペリンを思い出させるダイナミズムがあるのだけど、この日トーキング・ヘッズを連想させる感覚があった。
パンク/ニューウェーブから出発して、黒人のファンクが持つノリ、グルーヴを取り入れようと試行錯誤したトーキング・ヘッズと日本独自のヘヴィなファンクサウンドを確立しようとしているザゼン・ボーイズのぎこちなさを残しつつ、ファンクを自分たちの肉体に取り込んでいる姿に共通するものがある。つまり、冴えたアタマがカラダを動かす陶酔を求めているのだ。
比率が大きくなった向井のキーボードは、以前はニューウェーブっぽくシンセサイザーの音色をつけるところから始まったけど、今はプログレみたいにギターと渡り合うようなプレイもある。"I Don't Wanna Be With You(アイ・ドント・ウォナ・ビー・ウィズ・ユー)"では、カシオマンはギターを弾かずにサンプラーを操作するというような姿をみせてくれる。でも、やっぱり向井のテレキャスターとカシオマンのストラトの強烈なカッティグが、強力なリズム隊の上で鳴らされる"RIFF MAN(リフ・マン)"など、今までお馴染みのザゼン・ボーイズの曲でステージ前のお客さんたちは飛び跳ねて盛り上がり応えたのだった。
それと、向井の言葉使いが思わず笑ってしまうもので、MCでも笑わせてくれたし、キーボードでチャルメラのメロディを弾いたりと、エンターテナーの素質も十分に発揮した。それだけでなく、例えば"Friday Night(フライデー・ナイト)"の歌い出しなんか「濡れたかんざし〜」なのだ。ロックの歌詞で「濡れたかんざし」っていうのもすごい。笑わせるだけでなく驚かせる。新曲の"Honnouji(ホンノウジ)"では「本能寺で待ってる」と繰り返すし、他の曲でも念仏や浪曲を思わせる節回しも多いし、MCで繰り返される「マツリ・スタジオからマツリ・セッションをひねくれあがって、シブヤ・シティにやってまいりました!」「繰り返される諸行は無常それでもよみがえる性的衝動〜」という言葉に「和風」どころか「和魂」を感じさせたのだ。そして本編のクライマックスでは「耳から、鼻から、ヘソから、ケツから、ナニから飛び出す昇り龍〜」と向井は唸るのである。
音楽はどんどん変態になっていくし、それがお客さんがついていけるものなのかどうかわからない。だけど、今のところ、こうした音楽が渋谷AXというそれなりにでかい会場で大勢の人たちと観ることができることがすごい。来月に発売されるという新しいアルバムも期待して待っている。
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