近藤智洋 & ザ・バンドファミリア @ 下北沢クラブキュー (8th Dec. '08)
真ん中にあるもの
「すごいね、圧倒されたね」。
終演後、会場のいろんなところで、こんな声が聞こえていた。曲調やキャラクターのせいか、これまで、近藤智洋&ザ・バンドファミリアへの感想としては、あまり聞かれなかった表現だ。でも、今日はまさに「圧倒された」というのがふさわしい。会場のはじっこにいた人間を、真ん中に引きずり出してしまうくらい惹きつけられるものがあった。そういわせたものはなんだったのだろう。メンバーはもちろんこれまでと変わっていないし、7月のレコ発と演奏する曲が大きく違うわけでもない。変わったのはバンドの『芯』だ。一番大事な、センターにあるものが太く、強くなったのだと思う。
音源のリリースはなく、近藤曰く「人類史上初(笑)」のTシャツ発売ツアー(略して「T発」)となった3デイズ、ファイナルの東京。大阪〜名古屋と回って、手ごたえをつかんだのだろう、メンバーの表情、プレイにも最初から落ち着きと自信が見える。そして、何より近藤智洋の歌だ。迷うことなく自分の言葉を自分の声で伝えている。7月に出たアルバム『二つの鼓動』のリード曲でもある"二人の航海"ひとつとっても、いままではひたすら優しくて切ない、淋しげな曲だと思っていたのが、ここでは、優しい言葉の裏に強固な意志が見える、強い人間の歌に聞こえた。「君の涙を止める魔法は持っていない」と歌うこの曲と「自分が歌うことで人を元気にできる。そういうのが魔法なんじゃないかな」と解説する"魔法"という曲。「正反対のことをいっているようだけど、芯は一緒」と話していた。これが今の近藤智洋&ザ・バンドファミリアの核なのかもしれない。
後半戦、"小さな欲望"から"草原 "、"恋に落ちたままで "、"走る風のように、落ちる雨のように "と続いた流れは圧巻だった。特に"小さな欲望"の後半、それぞれの音がひとつふたつと中心に集まり、なにかが弾けるように一気にかき鳴らされるパートは、体がのけ反るくらいの迫力を感じた。感情を剥き出しにしたギターに、テクニックや力で押すのではない、魂そのもののドラム。この一部分だけでも、見る価値がある。感動すら覚える勢いを次へとつなげ、ここからラストへ向かって一気に走っていった。
MCで、ちょうど5年前の同じ日にベースの工藤佳子と対バンしたね、という話しをしていた。2003年からドラムの城戸紘志とライヴをやり始め、そこに佳子が、ピロ(Per.)が入り、エレキで山田貴己が加わって、この5人でアルバムを作り、ツアーをやって、イベントに出て……。このバンドも少しずつだけれど歴史を積み重ねてきた。本編最後の"エヴリデイ&エヴリナイト"の前に「いい日もそうでもない日もあるけど、それが全部今日みたいな素敵な日につながっていると思うと、一日一日が大事に思える」というようなことを言っていた。ザ・バンドファミリアも、これから1本1本ライヴを重ね、自分達の真ん中にあるものを確認しながら、また今日のような、いや、今日以上の素敵なライヴに辿り着くのだろう。その過程をこれからも見ていきたいと思う。
-Set List-
1.A New Morning / 2.Rainbow Step / 3.Your Bike Ride / 4.Baby Boo / 5.Barefoot Diaries / 6.感触 / 7.荒野を抜け、そして戻る。/ 8.二人の航海 / 9.水温 / 10.ローラーコースター / 11.甘い果実 / 12.魔法 / 13.小さな欲望 / 14.草原 / 15.恋に落ちたままで / 16.走る風のように、落ちる雨のように。/ 17.Everyday&Every night
-Encore.1-
1. Gimme Some Truth (John Lennon) / 2.Bambino Step / 3.A New Morning ~reprise~
-Encore.2-
Mona
近藤智洋ライヴ・スケジュール
12月20日 富山・高岡カフェ・ポローニア
12月22日 福岡プレアデス
12月23日 福岡M's Bar
12月26日 鹿児島Bar MOJO
12月27日 三軒茶屋グレープフルーツムーン
※詳細は オフィシャル・サイトでご確認ください。
|
|
|